各地の運営パートナーが持ち味を生かして日本のDXを推進、ローンチイベントレポート
日本MSが立ち上げた「Azure Base」、その狙いと個性ある全国12拠点を紹介
2020年10月30日 08時00分更新
神戸:とにかくみんな集まってワイガヤできたらええねん!
Azure Kobe Baseを運営する神戸デジタル・ラボの村岡正和氏は、神戸は観光名所の印象が強いが、実は山と緑と広い空に囲まれた「自然が気持ちいい街」だと説明。「そんな神戸の良さを知ってもらう意味でも、関西圏だけでなく全国からKobe Baseに来てもらい、交流が深まることを期待している」と語る。
大阪のAzure Osaka Baseとは電車で30分程度の距離にあるため、お互いの特色を生かした「連携」を考えていきたいという。西日本におけるパートナー連携や、技術者コミュニティ、クラウド好きコミュニティを形成するハブにしていきたいと語った。同社では1年前から、Azureの勉強会「Azure Tech Lab」を定期開催してきた。
「また神戸市は、市が毎年スタートアップコンペを開催するなど、スタートアップ推進都市としても全国的に知られている。そうした特色を生かして、スタートアップ企業がクラウド活用したいというときに積極サポートする、情報発信する拠点にできたらいいなと考えている」(村岡氏)
金沢:伝統工芸の街から北陸地方IT都市化の実現を目指す
Azure Kanazawa Baseは、石川・金沢にあるシステムサポートの本社内に開設された。運営を手がけるシステムサポートの小清水良次氏は、Kanazawa Baseのコンセプトとして「金沢発、北陸地方IT都市化の実現」という言葉を掲げた。
「Kanazawa Baseは、ビジネスや技術情報の受発信、クラウドを軸としたコミュニケーションのプラットフォームになると考えている。企業関係者に加えて北陸の自治体や大学など教育機関、そういう皆さんと連携できる場にしたい」(小清水氏)
“加賀百万石の城下町”という歴史を持つ金沢では、加賀友禅、金箔、九谷焼といった伝統工芸が現在でも盛んであり、それらの高度な製造技術を背景にさまざまな産業も発展してきた。「金沢独自の産業と、AIなど最先端ITの融合が模索できる実験拠点としてKanazawa Baseを活用したい」(小清水氏)。
札幌:地域のDX啓蒙・啓発/人材育成/ビジネス創出というスパイラル
Azure Sapporo Baseは、80数社のITベンダーが加盟するさっぽろイノベーションラボの活動支援を目的に、コンサルティングファームのHAJエンパワーメントがプロデュースする産学官の交流拠点「space360」に併設された。
Sapporo Baseの運営にあたるHAJエンパワーメントの久髙秀盛氏は、2018年開設のspace360にはさっぽろイノベーションラボ事務局をはじめさまざまな団体事務局が集結しており、IT業界内だけでなく業界/世代/国籍を超えた交流と連携の場として機能してきたと説明。先端テクノロジーのセミナーやスタートアップ交流会、テレビ収録スタジオなどとして活用されているという。
「官民のDX実現にはクラウド技術が欠かせない。Azure Sapporo Baseの併設によって、より一層、地域のDXが啓蒙・啓発され、人材の育成、ビジネスの創出というスパイラルが形成、加速されるものと大いに期待している」(久髙氏)
伊勢:観光地の中心で「人々の営み/伝統×テクノロジー」に取り組む
三重・伊勢に開設されるAzure Ise Baseは、伊勢神宮そばにある老舗飲食店「ゑびや大食堂」から生まれた店舗経営ツールを提供するスタートアップ「EBILAB(エビラボ)」が運営する。そのコンセプトは「人々の営み/伝統×テクノロジー」だ。EBILABの小田島春樹氏は、このコンセプトに沿って「街や商い、地域の中小企業や自治体のDXを推進していきたい」と語る。
小田島氏は、それを実現していくために現在考えている2つのアイディアを紹介した。1つは、Ise Baseは伊勢神宮周辺の観光地の中心に位置しているため、EBILABが通行量センサーで日々集計する来観者数や将来予測数といったデータをオープンデータ化し、地域の人々に活用してもらうもの。もう1つが、さまざまな店舗を新しいサービスの実証実験を行う“ラボ”のように活用して、地域企業の生産性向上を支援していくというものだ。
「Ise Baseの運営メンバーは全員、店舗での実務経験もあるエンジニア。また、伊勢神宮には多くの経営者の方が訪れる。将来的にはコワーキングスペース、ワーケーションの場としても開放し、皆さんにも気軽にお越しいただいて、いろんな相談ができる体制をとりたいと考えている」(小田島氏)
なお、Ise Baseは店舗の2階に設置される。1階はフード販売やエンターテインメントの提供を行う店舗で、この場を活用して効率的な店舗運営の実験を行えるようにする計画だという。「実際の店舗とIse Baseを融合して運営していきたい」(小田島氏)
広島:地方銀行が「銀行をやめよう」/生き残りをかけて地域DXに挑む
純然たる“ユーザー企業”の立場でAzure Baseの運営に参画するのが、山口フィナンシャルグループ(YMFG)だ。広島県を中心に展開する地方銀行、もみじ銀行の店舗(平和通出張所)をリニューアルし、その2階と3階をAzure Hiroshima BaseとしてYMFGのデータ・キュービックが運営する(1階はカフェを併設した銀行相談店舗)。
山口フィナンシャルグループの山根孝氏は、「皆さんキラキラしたビジョンやコンセプトですごいなと思った。われわれのコンセプトは『銀行をやめよう』というもの」だと切り出した。銀行業界、その中でも地銀をとりまく経営環境はとくに厳しい。「どう生き残りを図るか、というところでAzure Baseに手を挙げ、参画させていただいた」(山根氏)。
地域の中小企業6万件を取引先に持つYMFGにとって、そうした取引先のDX推進を通じて地域経済の再生と活性化を図ることは重要課題と言える。「地域のDXをどう推進するのか。われわれがAzureをお届けするのが、いちばん地域課題の解決になるだろうという発想。単純な発想だが、ほかの銀行はどこもやっていないので、それならばうちでやろうとスタートした」(山根氏)。
Azure Hiroshima Baseは、テクノロジー支援を常時受けられるコワーキングスペース、地域の誰もが利用できるセミナースペースなどを提供する。そのほかにも、スタートアップ支援のためのアクセラレーションプログラムやエクイティ投資の提供といった、金融機関らしい取り組みもスタートする。また地域へのテクノロジー定着を目的に、「Microsoft Teams」を活用した法人/個人顧客への完全非対面営業の開始や、50名規模の「TECH女子」チーム組成により中小企業におけるIT活用全般を推進/支援するとしている。
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紹介してきた各運営者のコメントを読むとわかるように、Azure Base各拠点はそれぞれに異なる課題観を持ち、それぞれに異なる目的を掲げている。そして、Virtual Azure BaseやTeamsを使った“オンライン訪問”も可能にすることで、物理的な場所/地域に閉じない可能性を担保している。これがAzure Baseプロジェクトの大きな特徴と言えるだろう。今後の活動を通じて、それぞれの拠点が持つ特色がさらに明確になっていくことを期待したい。
なお柴田氏は、Azure Baseは今後も意欲的に全国への拠点展開を続ける方針だと語った。引き続き、参画を希望する企業や組織からの問い合わせを受け付けているという。