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山谷剛史の「アジアIT小話」 第171回

IMEがAIを武器に特異な進化を遂げている中国

2020年10月04日 09時00分更新

文● 山谷剛史 編集● ASCII

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IMEの機能が独自の発展を続ける中国
もはやただの中国語入力アプリにあらず

 中国のスマートフォン向けIME(中国語では「輸入法」)アプリが独自の成長をしている。スマホでのIMEというと、日本ではGboardやWnnにATOK、それにBaidu(百度)のSimejiあたりがメジャーだろうか。日本のIMEだと、予測精度だったり、顔文字入力だったり、テンキースタイルがカスタマイズできたり、写真で着せ替え可能なスキン機能あたりが差別化の要素だろう。

中国のIMEは日本語入力にも対応しているものがあるが、日本語入力だけでいえばお勧めしにくいものの機能自体は面白い

 一方の中国では、iFLYTEK(科大訊飛)、百度(Baidu)、SOGOU(捜狗)をはじめとして多数のIME(輸入法)がリリースされている。Baiduは中国でもSimejiをリリースしているが、それと百度輸入法は別のものだ。iFLYTEKはポータブル翻訳機で日本にも進出していることからもわかるように、音声系AIで中国トップクラスの実力がある企業である。またBaiduは検索のほかにも、自動運転車やスマートスピーカーを開発するなどAIに注力している。SOGOUもBaidu同様にAIと検索事業を展開している。もちろん日本同様に、素早く入力できるための予想入力やスキン変更が可能だ。

日本語の入力機能もある

 音声入力もお手の物で、中国語を聞き取って入力できるのはもちろん、中国語の方言や、日本語を含む外国語もちゃんと聞き取って入力してくれる。また中国語を入力するとそのまま英語に翻訳して出力することも可能だ。3社とも翻訳機をAIから開発して商品化しているだけあり、こうした機能がしっかりある。ただ、日本語入力は変換予測がものすごく貧弱で、まともに使おうとすると誤字脱字を乱発してしまう。

 それでも中国のIMEアプリは面白い。競争が激しく、各社がIMEアプリに独自の変わり種機能をどんどん追加しているのだ。今回はそんな日本にはないようなIMEの機能を紹介したい。

テーマにあわせた無数の動画GIFや画像が用意されている

単語を入力しただけで、それっぽい文章が自動で生成
アスキーアートやアニメーションGIFも作ってくれる

 3社とも共通するのが、中国語の素早い入力へのこだわりだ。中国人は慣用句や美辞麗句を学び、よく使う。一言書いただけで、その単語に合わせた美辞麗句をぱっと出してくれる。日本語でたとえるなら、「夏コロナ」と入力したら「暑い日が続きますが いかがお過ごしでしょうか 暑さは続きます 熱中症はもちろんコロナの感染対策を行ない くれぐれもご自愛くださいませ」と出力するといった具合だ(美辞麗句ではないが)。また、オンラインゲームが流行っている中で、人気オンラインゲームで使うための予想入力機能も用意されている。

 BaiduのIME「百度輸入法」では、あらかじめ用意されたアスキーアート(AA)や画像や動画GIFが多数用意されている。日本では2ちゃんねるでよく見たようなAAが中国でも活用されるばかりか、どこか日本のAAの残り香がありつつも独自のAAを作成していて、AAが好きな人にはたまらないだろう。被写体の顔がCG加工されるARフレームも用意されていて、数秒撮影したものを動画GIFとして自動作成してくれる。出力が動画GIFなので、微信(WeChat)はもちろんのこと、Twitterに貼り付けることも可能だ。

日本のネット文化を知る者には少し懐かしさを感じさせるような物も含めて、さまざまなAAが用意されている

百度輸入法では入力した文字に対し画像を自動生成する機能も

百度輸入法のAR機能でメッセージスタンプ的な動画を作成してみた

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