本当であれば、5Gなどの好材料とともに活気づくはずだった2020年のスマートフォン市場だが、マイナス成長が予想されている。年始から世界を襲った新型コロナの影響を考えると驚きではないが、当初の予測ほどは悪くなさそうだともされる。
悲願の首位、だがとても喜ぶ状況ではないファーウェイ
9月に入り、IFAのニュースを聞くと夏が終わったと感じるのがこの業界での常だったが、今年は期間が短くなり、イベント形式も三密を防ぐようにオンライン中心に変更した。それでも今年もこの時期には、サムスンの折りたたみ式スマホ「Galaxy Z Fold2」など新製品の発表もあり、業界の底力を感じた。それもそのはず、2019年に2%程度の縮小を経験したスマートフォン市場は、2020年は本来なら成長の年になると予想されていたのだ。
直前に調査会社から出ているスマートフォン市場のデータを見てみよう。
スマートフォンシェア争いといえば、IDC、Counterpoint、Canalysなどの調査において、2020年第2四半期にファーウェイがシェアトップに立ったことが記憶に新しい。ファーウェイの端末部門トップのRichard Yu氏が数年前から掲げてきた目標であり、悲願だったとはいえ同社にとって好ましい形ではなかったのではないか。
ファーウェイの同期の成長の多く(約7割)が自国市場であり、同社が望んできたように欧州やアジアでの成長が牽引したトップではない。欧州、そして元々ファーウェイの存在感がない米国など、サムスンが強い市場においてコロナの影響を強く受けたことが、一足先にコロナショックを抜け出しつつある中国市場に支えられるファーウェイのトップにつながったといえる。なお、Gartnerではトップはサムスンで18.6%、ファーウェイは18.4%で2位となっている(https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2020-08-25-gartner-says-global-smartphone-sales-declined-20--in-)。上位5ベンダーはすべて前年同期比マイナス成長だが、下げ幅が最も少ないのは実はアップル(0.4%減)だ。
そのファーウェイについては、米国政府がさらに厳しい姿勢を示している。要はスマートフォンの頭脳となる半導体の供給を根絶させようというものだ。ファーウェイは傘下のHiSiliconが設計するKirinチップセットを差別化としてきたが、ファーウェイのYu氏は「HUAWEI Mate 40」がKirinシリーズを搭載する最後のスマートフォンになるとしている。このように、米国の制裁によりファーウェイの端末事業は危機に瀕している。
スマホ市場の鍵を握るのは5Gだが、ユーザーのニーズは低い
5Gスマホの平均価格は下落を続ける
スマートフォン市場全体の予想に話を戻すと、2020年のスマートフォン市場は11%縮小、出荷台数は12億6000万台になるとStrategy Anlyticsは予想している。11%という減少率は、それ以前に出ていた15.6%のマイナスからは上方修正とのこと。予想していたほど新型コロナの打撃は受けない、ということのようだ。
さらにIDCの2020年予測では、マイナスは9.5%にとどまる。前年同期比17%減となった第2四半期は予想よりも良かったとのことで、市場は2022年に完全に復活するだろうとしている。つまり、コロナ前のレベルに戻るということだ。それでも、5年間の年平均成長率(CAGR)は1.7%。以前のような成長市場でないことは明らかだ。なお、2020年の落ち込みがあった分、2021年は9%増で成長するとの予想も出している。
IDCは成長の鍵となるポイントとして「5G」を挙げながらも、「消費者の5Gへのニーズはかなり低く、苦しい経済状況が組み合わさると、5Gが関連したハードウェアとサービスの価格低下が重要になる」としている。当然、5G端末の平均販売価格も下がる。IDCによると、中国では5G端末の43%が400ドルを切っているとのこと。グローバルでは2023年には495ドルまで下がると見ている。そして、この段階で5Gスマートフォンが市場に占める比率は50%に達すると予想している。
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