4K120p対応で印象的なスローモーション撮影も
ソニー、5年ぶりに刷新の「α7S III」正式発表、ISO 40万超のフルサイズミラーレス
2020年07月29日 13時00分更新
ソニーは7月29日、フルサイズミラーレスの新機種「α7S III」(ILCE-7SM3、ボディのみ)を発表した。2015年以来、ほぼ5年ぶりの更新となる。ISO感度40万超の高感度撮影に対応、35mmフルサイズの新開発裏面照射型センサーは有効1210万画素で、高画質な4K動画撮影が可能となっている。発売は10月9日、市場価格は40万円台前半になる見込み。
“シネマルック”と呼ばれる映画のように劇的な映像表現を得るために、ソニーが重視しているのは、意図に沿った「カラーグレーディング」、緩急があって印象的な「スローモーション」、被写体が浮き上がった「大きな背景ボケ」だという。同社の調査では、高画質な動画撮影に関心を持つユーザー層が広がっており、個人でも数百万円と高価なシネマカメラを利用する例もあるそうだ。
CineAltaカメラ「VENICE」、XDCAMメモリーカムレコーダーの「FX9」など、この5年間で培ったラージフォーマットセンサー採用ビデオカメラのノウハウ、αの豊富なレンズ資産を組み合させつつ、高い水準の動画撮影を手の届きやすいデジタル一眼で実践できる機種としてα7S IIIを投入する。
静止画だけでなく、動画撮影を快適にこなせるよう、メニュー構造も静止画と動画で変えている。動画ボタンを上面に置くことでウエストレベルでカメラを構えることもできる。画面タッチやバリアングルディスプレーも装備しており、動画撮影時の利便性に注力したつくりだ。
スペック面では、常用感度としてISO 80~102,400(拡張でISO 40~409,600)をサポート。暗いシーンでのノイズの少ない撮影も、明るい昼間でボケを生かした開放撮影など幅広い応用が可能となっている。
なお、上限のISO感度は「α7S II」と同じだが、新開発Exmor Rセンサーと映像処理エンジンのBIONZ XRによって低ノイズ性能などが向上している。また、フレームレートが固定(シャッタースピードが固定)の動画撮影時には、ISO感度で明るさの調整をすることになるので、選択できる範囲が広い点は大きな利点だ。
α7S IIと比較した場合、CMOSセンサーが裏面照射型となっ点は進化ポイント。画素数も敢えて抑えているので読み出しが高速だ。ローリングシャッター歪みが3倍改善したという。
AF機能の測距点も、像面位相差方式で759点、コントラスト検出方式で425点に増やし、強化した(カバー範囲も93%と微増)。リアルタイム瞳AF、リアルタイムトラッキングなどにも対応する。高速性に加え、AI処理も併用し、従来比で30%認識精度が向上したとする。一方で、FX9譲りのフォーカスワークにも対応する。
ここはシネマカメラと比べても優位点だという。絞りを開き、浅い被写界深度にするとピントがずれやすい。また、ワンマンやフリースタイルなど、自由なスタイルの撮影では、カメラを三脚に固定し、MFで正確にピントを合わせることが難しくAFに頼らざるを得ないが、こういった撮影スタイルで、シネマカメラのAFは実用レベルとは言えない。
手振れ補正は、光学式と電子式のハイブリッド型。動画専用のアクティブモード手振れ補正機能を持つ。このモードではジャイロセンサーを用い、最適化したアルゴリズムで制御する。このあたりはVLOGCAM ZV-1と同様だが、αシリーズでは初となり、ジンバルなしでも、揺れの少ない撮影ができるとしている。
動画撮影は最大で4K、毎秒120コマ、各色10bit、クロマフォーマット4:2:2に対応(Intra-rec)。放熱構造にも配慮し、4K60pであれば1時間以上の連続撮影が可能だという(従来の連続撮影時間29分という制約がなくなった)。
条件付きとなるが16bitのRAW出力も可能となっている(ATMOSのNINJA Vモニター/レコーダーが対応)。画素ピッチとダイナミックレンジの広いセンサーは、特に動画撮影に有効だという。また、階調性に優れる点は、クロマキー撮影時などに有利だという。
映画などは毎秒24コマ(24p)で編集されるため、毎秒120コマ(120p)の高速撮影ができれば、5倍のスローモーション編集が可能となる計算になる。この際、フルHDなどに落とすことなく、4Kの解像度のままできるという点も利点となる。
メモリースロットはデュアルで、SDカードに加え、今後発売されるCF Express Type-Aカードも利用可能となっている。また、連続撮影した画像を1000枚以上保存できる大容量のバッファを持つ。
CF Express Type-Aカードも同時発表(発売日も同時)しており、容量160GBの「CEA-G160T」が実売5万円前後、容量80GBの「CEA-G80T」が実売2万円台後半となっている。CF Express Type-Aは新しい規格であり、直接読み書きできるPCなどはないが、「MRW-G2」という外付けリーダー/ライター(USB 3.2 Gen2接続)も実売1万円台後半で用意している。
Type-Aカードは、SDカードよりも小さいサイズで、リード800MB/s、ライト700MB/sと最速クラスのSDカードと比べても、2倍以上の速度で読み書きが可能(XQDカードより速い)。さらに、新製品はタフ仕様となっており、IP57相当の防水防塵性能、15㎏曲げ強度(規格比で10倍)、7.5m落下(規格比5倍)と耐久性が高い。
なお、α7S IIIの4K120P、FHD240p動画撮影、RAWで1000枚以上の高速連写はTypeAカードのみが対応する。