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山谷剛史の「アジアIT小話」 第170回

ファーウェイもスマートディスプレーを中心にした囲い込みを自国で進める

2020年07月25日 17時00分更新

文● 山谷剛史 編集● ASCII

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どんどん安価になっていく中国のスマートテレビ
ファーウェイまで本格的に参入

ファーウェイが送り出すハイエンドのスマートディスプレー「華為智慧屏X65」。65型の有機ELパネルを搭載

 中国ではスマートテレビが普及して久しい。

 新型コロナウイルスの感染が拡大した春節の期間は、スマートテレビの52%、1億1400万台が毎日稼働していたのだという。これは前年の同時期と比べて、15.6%も高い数値となっている。とはいえテレビメーカーの景気がいいのかと言えばそうでもないらしい。AVC(奧維互娯)の調査では、新型コロナで家こもりにならざるを得ないときでさえ、大都市になればなるほど春節での利用は少なくなるという。どうも生活が豊かになればなるほど、スマートテレビは使われなくなるというデータが出てきている。

 2019年の中国でのテレビ販売台数は前年比2%減の4772万台、販売額は11.2%減の1340億元(約2兆300億円)となった。また平均単価は2809元(約4万2500円)でこの10年で最低となっている。中国のテレビは大画面化やスマート化は進んでも、価格は落ちる一方だ。

 スマートフォンの買い替えは激しい。その理由として、バッテリーの持ちが悪くなったり、高速充電をサポートしたり、基本スペックが上がったり、カメラが明らかに綺麗に撮れたりすることが挙げられる。それに対してスマートテレビは、見たい動画を流せるアプリが入れられて、十分な大きさがあれば満足してしまうという結果になる。

 Gfkの調査によれば、次に買うスマートテレビに欲しい機能は、「スマートフォンの画面をテレビに表示したい(47%)」「スマートフォンをリモコンにしたい(40%)」「音声でコントロールしたい(35%)」といった順になっている。スマートテレビの買い替えは緩慢だが、利用率まで所得に比例して減少とするなればこれは問題だ。

 こうした中でファーウェイからそのニーズに応えるかのような「スマートディスプレー(智慧屏)」が登場した。

 「華為智慧屏」と「栄燿智慧屏」というシリーズで、前者は同社の「HUAWEI P」シリーズのようなハイエンド路線で、後者は「栄燿(Honor)」シリーズと同様に、コストパフォーマンスを追求した路線となっている。

スマホのhonorブランドに対応する比較的安価な栄燿智慧屏

 「華為智慧屏」は3999元(約6万円)の55インチモデルから、2万4999元(約38万円)の65インチ有機ELモデルまで用意される一方、栄燿智慧屏は2299元(約3万5000円)の55インチモデルから、65インチモデルでも3499元(約5万3000円)だ。日本メーカーの同サイズの商品であれば、10万円は軽く超えるであろうが、非常に安い。また他の中国メーカーの同サイズのスマートテレビと比較しても、この値段は引けをとらない。つまり(中国人にとっては)信頼あるファーウェイのブランドなので、最安価格ではなくても指名買いできる価格帯というわけだ。

安価な製品から高価な製品まで用意されているがどれも大画面だ

 さまざまなモデルが用意されていてはいるが、いずれも解像度は4K対応で、スピーカーはツイーター、ミッドレンジスピーカー、ウーファーを搭載していて、最安価格帯の製品だろうと画質、音質ともに他社のスマートテレビに負けない。中国のこれまでのスマートテレビ同様、動画サービス用アプリがプリインストールされていて、オンデマンドでコンテンツを見ることができる。同社のスマートホーム用プロトコル「HiLink」対応スマートホーム機器をコントロールすることも可能だ。

 スマートディスプレーというくらいだから、スマートスピーカーのように音声でコントロールができる。スマホをリモコンやキーボードにしてコンテンツを検索することができるほか、スマホの画像をそのまま出す機能「大小屏魔法互動(Magic-Link)」により、1台または2台のスマートフォンの画面を大画面で分割して表示することができる。遅延はスマホの1080pの画面で100ms以下だ。スマートフォンで表示されている動画を表示させたり、2つのスマートフォンでのゲームの対戦画面を1つに映し出すことができる。

2台のスマホ画面を同時に出すことができる

 また上位機種ではスライド式カメラが内蔵されていて、これにより1080pの画質によるビデオ通話ができるほか、Kinectのように腕の動作でスマートディスプレーを操作することができる。

 テレビでもあり、スマートフォンを大画面化できるディスプレイでもあり、音声で家電をコントロールすることもできる。そのコンセプトはまさに次世代テレビといえる。

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