新型コロナウイルスの影響を受け、訪問や対面が難しくなった営業の現場は変化を余儀なくされつつある。コロナ禍の中、一気に注目を集めるようになったオンライン商談サービス「bellFace」を手がけるベルフェイス 西山直樹氏に、ポストコロナの営業スタイルについて聞いた。
当たり前だった訪問営業ができなくなった
照英さんのヒラメ筋がまぶしい「It's OLD営業」のCMでおなじみオンライン商談サービス「bellFace」のベルフェイス。電話での会話の延長で、相手先に資料・画面を共有できるという手軽さが受け、創業から6期目を経て、有料契約社数は1300社(2月時点)を達成した。
しかし、2015年の創業当初はいわゆる「インサイドセールス」「オンライン商談」「Web会議」という言葉はまったく認知されていなかったという。インサイドセールスが認知されるようになってきた1年前の時点でも、社内会議をオンラインでやったことがある会社は約半分。オンラインでの商談にいたっては1/4に過ぎなかった(ベルフェイス調べ)。「導入見送りの理由も『システムとしては面白いけど、訪問しているからいらない』が一番でした。結局、僕らの競合は日本の商習慣で、コロナが来る前はこの商習慣を変えられていなかった」とベルフェイスの西山直樹氏は語る。
しかし、新型コロナウイルスの到来で営業現場は一変した。3月25日の都知事による自粛要請、4月7日の緊急事態宣言などを経て、企業では在宅勤務が常態化。訪問禁止や外出の自粛で多くの営業マンは当たり前だった訪問営業ができなくなった。当然ながら、「オンライン営業」や「オンライン商談」などのキーワードの検索ボリュームに急激に拡大。bellFaceの検索ボリュームも2月から4月にかけて一気に3倍にはね上がったという。
風向きの変化を察知したベルフェイスは3月5日の時点でサービスの期限付き無償提供を決定。3~5月の約3ヶ月でなんと1万2000社の登録があったという。5年間で積み上げてきた有償契約が約1300社だったので、無償提供とはいえ、一気に約10倍のユーザーがサービス登録したことになる。また、顧客も今まではIT系がメインだったが、無償提供の対象となった業界は小売、製造業、不動産、建設などの大手企業・レガシー産業に拡大した。「当たり前だった訪問営業ができず、みんな困っていたんです」と西山氏は語る。三菱地所レジデンスや日本青銅などの事例も発表され、IT系以外でもオンライン商談導入の兆しが見え始めたという状態だ。
オンライン商談はもはや訪問営業の劣化版じゃない
さて、緊急事態宣言が解除された現在だが、今後も感染症のリスクに備え、われわれは「新しい生活様式」と呼ばれる働き方にチャレンジする必要がある。テレワークやローテーション勤務が当たり前になり、会議や名刺交換もオンラインになる。営業活動がオンライン化するのも当然の流れと言えるだろう。
オンライン商談にはさまざまなメリットがある。天候や感染症に左右されずに営業活動ができ、場所や時間にとらわれない働き方も実現できる。また、地方にいたり、子育てをしながらでも、ハンディなく営業マンとして数字を稼ぐことだって可能になる。これに加えてベルフェイスが提案するのは商談動画を元にした「データドリブンな営業マネジメント」だ。
bellFaceではオンラインの商談をすべて録画・録音しておくことができる。マネージャーはこれら商談動画をすべてチェックできるので、離れた場所においても担当者がどんな営業活動しているのを把握できる。また、同僚や新人はこれらの商談動画を生きた教材として用いることも可能。スーパー営業マンのノウハウを組織のナレッジとして蓄積できるわけだ。実際、ベルフェイスでも実践しており、コロナ禍での在宅期間はノウハウを学ぶ時間に充てられた。「新卒は在宅期間中に自社の営業マンの動画を見まくっていて、学んだことを社内チャットにフィードバックしています。だから、明日からでも営業できます」(西山氏)とのことだ。
これら商談動画は2倍速で確認することもできるので、オンライン商談であれば、いわゆる営業同行の生産性も大きく上がる。さらに専用の音声テキスト化エンジンを搭載しており、動画・録音の文字起こしを行なえる。「営業に特化した日本語のやりとり」という条件であれば、外資系クラウドのサービスより高い精度を実現するという。もちろん、いったんテキスト化してしまえば、検索が可能になるので、特定の商材の商談を集めてきたり、ポイントすべき動画の特定箇所にしおりを付けることも可能だ。
ポストコロナの時代において、どの業界でも営業現場は大きな変化を強いられており、古いやり方に誇示する「OLD営業」はいよいよ出番を失っていくはず。オンライン商談のような新しい潮流への変化対応力を持つのが、新しい時代の営業と言える。「もちろん訪問営業や対面接客は戻ってきます。でも、オンライン商談という選択肢はもはや外せなくなったと思います。マネジメントや人材育成という観点を考えれば、オンライン商談はもはや訪問営業の劣化版ではありません」と西山氏はアピールする。