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オーダーを受けてから製麺! 素材の味をシンプルに楽しめる らーめん かねかつ(埼玉県・川口市)【ピラティスインストラクターの健康的ラーメンライフ♪】 第3回

2020年03月30日 10時00分更新

文● 大熊美智代 編集●ラーメンWalker

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 ここは埼玉、京浜東北線川口駅。映画「翔んで埼玉」でいうと、東京と埼玉の間の“関所”にあたる、都心からアクセスのよい街。それはさておき川口駅から12分、かなり歩いても食べたいラーメンがそこにある。「らーめん かねかつ」店主・大友勝さんは、19歳から製麺所で働き、様々な飲食店、ラーメン店でアルバイトをしながら開業を目指していた。

「川口って何回か来たことがあるくらいで、初めて暮らす街だったんですよ。店舗を探していて、たまたまこの古い木造アパートの1階を見つけて。もとは串揚げ屋だったそうで、ほぼ居抜きでこのまま使える、一から始めるのにちょうどいい場所だと思いましたね。2013年7月3日に開店して、初めは右も左も分からない、知り合いのいないところだから不安はあったけど、何とかなるだろうという思いと、期待のほうが大きかった」
 

満席時は店前に並んで待つ。事前に店主が厨房の小窓から顔を出して注文を聞く

カウンター5席。ラーメンが出来上がるまでの工程すべてが間近に迫る

―注文を受けてから製麺するスタイルになったのは、オープンから1年過ぎた頃でしたね。

「最初は製麺所から仕入れてたんですけど、どうしても自分が思う通りの麺にならない。じゃあ自分で作ろうってなった時、店が狭くて製麺機を置けなくて。それで手打ちしかないからっていうことで、手打ちを始めたわけですよ」
 

めん塊から生地を切り出し、小さな小野式製麺機で延ばし、麺切り、最後に手揉み

―製麺から「らーめん」が出来上がるまで、見ているだけでお腹が鳴ります(笑)。手打ちにしてから5年以上経ってますが、手打ち麺になってからも変わってますよね。

「初めは細麺でやってたんですよ。製麺したてじゃなく冷蔵してましたね。そのうち、やや太めにして、加水率も少し上げて、今の多加水麺に変えて。小麦粉もいろいろ配合を変えたり、すごい悩みましたね。ここ数年は、前田食品のハナマンテンブレンドと茜特の配合で落ち着いてます」

―麺だけでなく、スープにも変化が?

「全部変わってますね。スープは、最初の頃、秋田比内地鶏の丸鶏をメインに国産豚のすね肉を使ってたし、少し前までは福島地鶏の川俣シャモを使ってましたね。今は、ほろほろ鳥を丸鶏で仕入れてるんで、むね・もも肉はチャーシューで、ガラや手羽とかはスープに、鰹節、本枯れ節、鯖節、鶏節、あとはイベリコ豚も入ってます。オープンから変わってないのは醤油ダレだけ。使ってる醤油は、今も出身の福島県喜多方市にある『若喜商店』から取り寄せてます」
 

木桶で2年間熟成させた醤油が香る醤油ダレに、ほろほろ鳥メインのスープを注ぐ

茹で上がったもちもちの縮れ麺を丁寧にスープに馴染ませる

―オープンしてからのラーメン写真を見ていくと、具もさっぱりしたというか、見た目も変わったなあと感じます。

「もともとトッピングであった味玉とか、今はやってないじゃないですか。味玉があることで、食ってる時のリズムが変わるというか。本当は、一気に食べてもらいたいところを、味玉があることで、そこで止まっちゃう。それって、俺が求めているものと違うなと。できるだけシンプルにしたいんですよ。シンプルに刺さるようなラーメンを作りたいんです」

―純粋に味を追求して、見直していった結果がこの「らーめん」なんですね。そこにつけめんやあぶらそばが通常メニューに加わって。

「最初、オペレーション上、無理かなと思って、つけめんは月曜限定だったんですけど、やってるうちにスムーズにできるようになってきて、通常メニューに入れました。
つけめんも段々シンプルになっていきましたね。最初は添えていた胡椒をスープの中に入れるようになって、具も青菜やレモンをやめて、3種のチャーシューだけ。添えた柚子胡椒を、肉につけて食うとうまいんですよ。最近のラーメンって結構ごちゃごちゃしてるのが多いじゃないですか。だから、俺は逆にシンプルにいきたいなって」

―徹底的にシンプルに、それが大友さんの目指す「らーめん」なんですね! 撮影するのに、具を追加トッピングしたほうがいいかと思ったけど、載せなくてよかった(笑)。

「あははは(笑)」
 

いらないものをそぎ落とした、潔い「らーめん」

「シンプルにっていうのは、つけめんも、あぶらそばにも言えるんですよ。実は、らーめん、つけめん、あぶらそば、すべてスープと醤油ダレが一緒なんです。らーめん以外、スープは別の器に入れて出しますが。濃度の差だけで違いを出してるんです」

―よく女性があぶらそばを食べてるのを見かけたので、さっぱりしてるのかなあとは思ってましたが……食わず嫌いで未食でした(笑)。

「そうですか(笑)。ベースは同じで、鶏油の量もちょっと変えるぐらいですね。あぶらそばは、そんなに人気はないけど、リピート率が一番高い。あぶらそばしか食べない人もいますよ」
 

「あぶらそば」。醤油ダレと鶏油の旨味、湯引きした鶏ささみとネギでさらっと完食。未食だったのを後悔するほどうまい

「つけめん」。唯一添えた柚子胡椒を肉、麺につけると一層うまい。〆は節系の割りスープ

―限定メニューを食べることが多いんですが、しじみのらーめんとか、あさりのらーめんとか、どれを食べてもその素材100%なの!? ってくらいの限定ばかりで、見逃せないんです。

「限定は、“季節のらーめん”って銘打ってる通り、その季節の食材をできるだけ美味しくできる方法で考えて作ってるんですよ。例えば、しじみの限定だったら、しじみが一番うまい旬の時期があるでしょ。そこから外れるとしじみが一番うまい時期じゃないから、通年はやりたくないっすよ。あと、しじみのラーメンなのに、煮干とか他の素材を加えてしじみがあんまり感じないんだよなあっていうのじゃなくて、めっちゃわかりやすくしたいんですよね。それは、らーめんでも、なんでも同じ考えで作ってます」

―私が最初に食べた限定が、2013年のあさりのらーめんで、麦みそらーめん、お茶のらーめん、鴨のらーめん、かぶのポタージュ系とか、今も続けている限定もありますよね。
 

しじみ、あさり、かぶ、鴨……。旬に食べるからこそ美味しい「季節のらーめん」

「いろいろやってたな(笑)。今年はもうちょっと頑張って、新しい季節のらーめんを増やしていくつもりです。これまでは、1ヵ月に1回ぐらいだったんですけど、1週間か2週間で変えていこうかと。食材っていっぱいあるんで、もっともっと試したいんです。限定でやった食材が、基本のらーめんに使われるようになったりね。鴨の限定がなくなったのも、今年1月の初めくらいまでらーめんに鴨を入れてたからなんです。あと、トッピングののりまみれも、もともと『新海苔のらーめん』で出してたのを、『これ通年で出したいなあ』と思ってトッピングにしたんですよ」

―これまでの限定の一つひとつが、今の「らーめん」に繋がってるんですね。

「俺のラーメンの原点、自分のオリジナルのラーメンがどんなのだろうと考えていくと、生まれたところでよく食っていた福島のラーメンになるんですよね。今は、そこからちょっとずらして、自分のオリジナルを作っていこうかなって。根本のラーメンを踏まえつつ、進化させていけるようにやっていきたいな。だから、やりたいものをもっと上手くやれるように、俺もっと頑張んなきゃなって。もっと自分のレベルを上げていこうと思ってます」
 

店主・大友勝さん。最後の胡椒ひと挽きまで余念がない

らーめん かねかつ
埼玉県川口市飯塚2-14-23
11:00~14:30 18:00~21:00(材料切れ終了)
金曜休み
※臨時休業・材料切れ終了・限定情報はTwitter(@yourmonky

 

大熊美智代 Michiyo Okuma

ラーメン大好きなフリーランス編集者・ライター。ピラティスやヨガのインストラクター、ヤムナ認定プラクティショナー、パーソナルトレーナーとして指導も行なっており、美容と健康を心がけながらラーメンを食べ歩く日々。ラーメンの他には、かき氷、太巻き祭りずし、猫が好き。

本人Twitter @kuma_48_kuma
Instagram @kuma_48anna

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