Amazonのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏のスマートフォンがクラッキングされたという話題が米国で沸騰している。ベゾス氏の依頼を受けて調査したレポートも公開されているが、セキュリティー専門家から不明な点が指摘されるなど、いまだ謎が多い。ハッキリしているのは、ベゾス氏はiPhone Xを(も)使っていて、WhatsAppのユーザーでもあったということだけだ。
WhatsApp経由で送られた動画ファイルに
マルウェアが入ってた!?
Amazonを1994年に創業し、いまだCEOとして君臨するジェフ・ベソス氏に、ある意味セレブ的な話題が増えている。2019年夏に離婚(と超巨額の財産分与)が大きく報じられて以来、交際相手など本業以外の話題でメディアの見出しを飾ることが多いのだ。
1月21日に最初にThe Guardianによって報道されたのは、ベゾス氏のスマートフォンがクラックされて、情報が流出したというものだ(https://www.theguardian.com/world/2020/jan/21/revealed-the-saudi-heir-and-the-alleged-plot-to-undermine-jeff-bezos)。
サウジアラビア王国の皇太子、ムハンマド・ビン・サルマン(Mohammed bin Salman)氏(通称“MBS”)が米国訪問中にベゾス氏と会った際に連絡先を交換しており、ベゾス氏が皇太子から受け取ったWhatsAppメッセージがきっかけという。一方、米国にあるサウジアラビア大使館は「Jeff Bezos氏の電話をハッキングしたという報道は馬鹿げている」とツイートして、これを否定している。
Recent media reports that suggest the Kingdom is behind a hacking of Mr. Jeff Bezos' phone are absurd. We call for an investigation on these claims so that we can have all the facts out.
— Saudi Embassy (@SaudiEmbassyUSA) January 22, 2020
時は2018年5月1日にさかのぼる。両氏は以前からメッセージをやり取りする関係にあったが、ベゾス氏がその日受け取ったメッセージには、MP4形式の動画ファイルが含まれていたという。ここにマルウェアが含まれていた可能性があり、ベゾス氏のiPhone Xはその数時間後から大量のファイル送信を開始したというのだ。
問題視されるのはベゾス氏所有の
The Washington Postによる報道!?
言うまでもなく、ベゾス氏は億万長者だ。推定の総資産は1155億ドル(約12兆6000億円)で、フォーブスの長者番付では2年連続トップ。誰かに狙われていても不思議ではないが、今回のハッキングはどうやら資産を直接狙ったものではないという見方がなされている。
ベゾス氏は2018年9月にThe Washington Postのオーナーになっているが、ハッキング疑惑を最初に報じた前述のThe Guardianの記事では、The Washington Postがサウジ政府の反体制派として知られるジャーナリストのジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏(2018年10月2日にトルコ・イスタンブールにあるサウジアラビア総領事館で殺害された)を起用していたためという見方を報じている。
もう1つ背景がある。皇太子は、アメリカのタブロイド誌「National Enquirer」などのメディアを持つAmerican Media, Inc.(AMI)のCEOであるデビッド・ペッカー(David Pecker)氏と2017年にサウジアラビアで会って以来、親交を深めているという。
ペッカー氏はトランプ大統領と近い関係にあり、トランプ大統領はサウジアラビアとの距離を縮めている。そして、そのトランプ大統領はThe Washington Postを所有するベゾス氏に厳しい姿勢を見せている。National Enquirerは2019年1月に、ベゾス氏(当時まだ結婚していた)の不倫を報道した。
その際のベゾス氏はMediumに「No thank you, Mr. Pecker」というタイトルの記事を投稿(https://medium.com/@jeffreypbezos/no-thank-you-mr-pecker-146e3922310f)。交際していた女性とのやり取り(”ベルトから下”のセルフィーなど、プライベートなメッセージや写真)を公開するとAMIから脅されたことなどを明かしている。
そこでは、自分のセキュリティアドバイザー(Gavin de Becker氏)の調査から、The Washington Postが「物事を複雑にしている」ことがわかったと報告している(なお、この件を調べていた地方検事の調査から、写真は付き合っていたローレン・サンチェス氏の兄弟がペッカー氏に売ったという報道が出ている)。
なお、国連の担当者はThe Timesに対し、「我々が受け取った情報から、The Washington Postのサウジアラビアについての報道に影響を与えるため、皇太子がベゾス氏の監視に関与していた可能性が考えられる」と語っている(https://www.thetimes.co.uk/article/mbs-taunted-bezos-about-secret-affair-after-phone-hack-pf52669lw)。
この連載の記事
-
第342回
スマホ
AR/VRの長すぎる黎明期 「Apple Vision Pro」登場から6ヵ月、2024年Q1は市場はマイナス成長 -
第341回
スマホ
世界で広がる学校でスマホを禁止する動き スマホを使わない時間を子供が持つことに意味がある? -
第340回
スマホ
対米関係悪化後も米国のトップ大学や研究機関に支援を続けるファーウェイの巧みな戦略 -
第339回
スマホ
ビールのハイネケンが“退屈”な折りたたみケータイを提供 Z世代のレトロブームでケータイが人気になる!? -
第338回
スマホ
ファーウェイはクラウドとスマホが好調で大幅利益増と中国国内で復活の状況 -
第337回
スマホ
米司法省、アップルを独禁法違反の疑いで提訴 その中身を整理する -
第336回
スマホ
Nokiaブランドのスマホは今後も出される! バービーとのコラボケータイ、モジュール型などに拡大するHMD -
第335回
スマホ
ファーウェイスマホが中国で好調、次期HarmonyOSではAndroid互換がなくなる!? -
第334回
スマホ
Nokiaのスマホはどうなる!? HMD Globalが自社ブランドのスマホを展開か -
第333回
スマホ
アップルがApp Storeで外部決済サービスを利用可能に ただし手数料は27% -
第332回
スマホ
米国で特許侵害クロ判定で一時は米国で販売停止のApple Watch、修正は認められるか? - この連載の一覧へ