駅貼りポスターでも紹介されている
「日本最小の石庭」がある龍源院
最初に訪れたのは大徳寺 龍源院。大徳寺の境内にある、室町時代に創建されたお寺だ。方丈南庭「一枝坦」(いっしだん)は白砂が雄大な海を表現し、その中に楕円形の苔庭が配された、実に京都らしい景色だ。まずはEOS Rの24mm付近で撮影した画から紹介しよう。なお色味に関してはまったくの無補正である。境内では静粛性が求められることが多く、無音といえるEOS Rのサイレントシャッターはとてもありがたい。
ではGoogleのPixel 4 XLを試してみよう。広角で撮ってみると、この美しい庭をここまで簡単に撮れるのか、と感心する。シャッター音はEOS Rと比べると大きいものの、他の拝観客の迷惑にはならない程度。レンズの切り替えはシームレスで、とても使いやすい。
続いてiPhone 11 Pro Maxで。まずは広角で撮影。こちらはシャッター音が盛大で「私、いま撮りましたよ!」と周囲にアピールする。画面には0.5、1、2というアイコンが出ており、選択後にピンチ動作で選ぶことが可能だ。こちらも操作性がよい。
撮影時の天候は曇りだったのだが、3枚の写真を見比べると色味に関してはEOS Rが暖色系、Pixel 4 XLは寒色系、その中間がiPhone 11 Pro Maxという傾向がある。意外なのがファイルサイズで、iPhoneの方がファイルサイズが大きい。よって内蔵ストレージが少ないモデルだと厳しいことが予想される。画質はどちらも似たようなもので、拡大すると解像度に不満が出てくる。そこはEOS Rの方が段違いなのだが、そこまで必要か? というと……。
さて、石庭を中央ではなく斜め方向から撮影したのには理由がある。フルサイズ24mm程度の画角では入らないのだ。住職も「石庭は全体を見ることが大切」と語る。そこでiPhone 11 Pro Maxが搭載する画角120度による超広角モードを試すことにした。
14mmという画角は、一眼レフでもなかなか実現できない。EOS Rの場合広角ズームでもRF15-35mm F2.8Lまで。一眼レフ用ならCanon EF14mm F2.8L ll USMで実現するが、定価33万7700円と驚くほど高価だ。たった1mmや2mmじゃないか、と言われるかもしれないが、それがかなりの違いなのだ。
正直、ここまででほぼ結論は出てしまったような気がするが、話を進めたい。石庭というと大きな庭に砂紋が描かれているというイメージが強い。しかし、龍源院にはわずか4坪という“日本最小の石庭”である「東滴壺」(とうてきこ)がある。現在、JR東京駅に駅貼りポスターで紹介されているので、見たことがある人は多いだろう。1960(昭和35)年に鍋島岳生により作庭された現代壺庭の傑作で、白砂敷きのなかに5つの石が3・2の石組みに分けて配されている。一滴のしずくが大海につながる様子を表し、「ちいさな行ないも大切にせよ」という教えを説いているそうだ。ここでもEOS Rと2台のスマホ画像の違いが出てきた。
かなり暗い場所で、見た目に近いのはEOS Rの画像だ(撮影はMモードでしている)。スマートフォンはフルオートということもあり、明るめの画像として仕上がってくる。超広角で大変なのは人の映り込みが多いこと。こればかりはどうしようもない。