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アップルの「アクセシビリティ」を学ぶ − 青森県のユニークな講座とは?

青森の障がい者・シニアがiPhoneを積極的に使える理由

2019年12月01日 10時00分更新

文● 山本敦 編集●飯島恵里子/ASCII

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iOSには障がいを持つ人々をはじめ、誰もが最初からモバイルの最先端テクノロジーが簡単に使えるように充実したアクセシビリティ機能の数々が搭載されている。青森県では視覚・聴覚に障がいを持つ方、あるいはシニアの方が、これらの機能を日常生活で活用できるようにと「iPad・iPhoneの使い方を教える人材」を育成している

 青森県では視覚・聴覚に障がいを持つ方、あるいはシニアの方にiPad・iPhoneの使い方を教えられる人材を育成することを目的としたユニークな特別講座を実施している。

 今回筆者は、NPO法人 あおもりIT活用サポートセンターが実施する「障がい者・シニアの方にiPadを教える人材育成講座」の現場を取材できる機会を得た。近年はスマホが防災対策のアイテムとして脚光を浴びる機会も増えているが、青森県の取り組みからは、誰もが気軽に扱える開かれたスマホのユーザーインターフェースのあるべき姿が見えてくる。はじめに同センターの西北五支部長を務める高森三樹氏(高の漢字は「はしごたか」)に講座が開設された経緯を聞いた。

「障がい者・シニアの方にiPadを教える人材育成講座」を実施するNPO法人 あおもりIT活用サポートセンターの高森三樹氏にお話をうかがった

災害時に情報を取得できるように技術を身につけたい

 同センターが実施する人材育成講座は、2011年に東日本大震災が発生した後に青森県が「災害時における視覚・聴覚障がい者のためのICT利用」をテーマとするアンケートを実施したことが起点になっている。震災の発生直後、迅速に情報を得るための手段がなく不安にさいなまれたという回答が多数あった中で、音声読み上げや画面表示の拡大機能など、障がい者のための使い勝手を配慮したユーザーインターフェースを持つモバイル端末が緊迫した事態の中で生活する人々を支えたという事実も浮かび上がった。

 当時、多くの障がい者の方々がiPadを利用していたことから、一般社団法人 青森県ろうあ協会からも「iPadを通じて人と人とのネットワークを構築したい」という声が多く青森県庁の情報システム課、ならびに障がい福祉課などの窓口に寄せられた。このことが契機となって、アンケートが実施された翌年2013年から高森氏が所属するあおもりIT活用サポートセンターが県の委託を受けて講座をスタートした格好だ。

「使い方が覚えやすいiPad」に関心が集まった

 講座の目的は、青森県に暮らす障がい者やシニア層に緊急時のみならず、普段の生活にも役立つiPadやiPhoneの使い方を教えられる人材を育てることにある。初開催から今年までの7年間に、約3ヶ月間におよぶ1回約2時間・全10回構成の講座を計26期、青森県内の各所で開催してきた。

 内容はiPadに関する基本的な知識と操作方法の説明と体験、およびシニアや障がい者の方々が活用できるアクセシビリティ機能とアプリの実践にまで多岐に渡る。講座を修了後、サポーターとして認定を受けた受講者は本講を執筆している現在まで171名に上るそうだ。

 高森氏は「iPadやiPhoneは、初めて手に取る人も直感的に操作ができることから、受講者にも好評です。ユーザーが多いことから、利用中に“困りごと”が発生しても身近にいる詳しい人にアドバイスを仰いだり、仲間どうしで知識を共有できることの安心感もあるようです」と、iOSデバイスが多くの受講者から支持を集める理由を説いた。

 講座を始めたばかりの頃は、高森氏の方で用意した数台のWi-Fi専用iPadを、受講者どうしが共有しながら学んでいたという。その後、青森県とセンターの活動に共鳴した通信キャリアから、Wi-Fi+CellularモデルのiPadを複数台、無償で貸し出し提供を受けられたことから、講座の質が大幅に高まったと高森氏が振り返る。

 特に受講者が講座の時間外にも、iPadを手元に置いて予習・復習ができるように、各人に貸し出しを行ったことが習得スピードの向上につながっている。

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