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業務を変えるkintoneユーザー事例 第55回

飲食・パティシエ専門の人材紹介会社ドリームラボのアプリ活用

あこがれの職業パティシエにkintoneできめ細やかな“ガッチング”を

2019年07月25日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders

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 5月23日に開催されたkintone hive osakaの3番手として登壇したのは、飲食・パティシエ専門の人材紹介サービスを展開するドリームラボ塩崎隆裕氏。パティシエとオーナーが相互の夢をかなえるための“ガッチング”を実現すべく、2枚のExcelシートからSFA、さらにはkintoneに乗り換えた同社のアプリ連携術とは?

深いマッチングには双方から得られた情報が重要

 ドリームラボは飲食・パティシエ専門の人材紹介サービスで、企業・店舗と求職者を結びつける“ガッチング”を展開している。従業員数は現在15名で、登壇した塩崎隆裕氏はWebプロデューサー、プログラマーとして、社内のITを切り盛りしている。

ドリームラボ 塩崎隆裕氏

 現在、小学生がなりたい職業を調べると、男子の1位は相変わらず野球選手だが、女子はパティシエ。しかし、パティシエの離職率は高い。確かに映画やドラマでは「クリエイティブ」「アーティスティック」「人を笑顔にする」というイメージが強く、実際本家のフランスでは大統領から表彰を受けるようなステータスの高い職業だ。だが、実際は力仕事や長時間労働が多く、朝から晩までのルーティン作業になりがち。「女子があこがれて入ってくる職場だが、実際は男がやるような力仕事をやっている」と塩崎氏は語る。

 こうしたパティシエと、雇い先であるケーキ屋、ホテル、レストランなどを結びつけるのがドリームラボになる。洋菓子業界では特に個人店か、ホテルか、企業かなどの希望業態のほか、独立したいという夢がかなえられるか、コンテストの出展に積極的か、お店の味や雰囲気など、定量化しにくい希望で就職することが多い。そのため、ドリームラボでは、機械的な条件マッチングではなく、人手を介した「ヒトとシゴトをココロでつなぐ」というタイプマッチングを重視しているという。

 具体的には一人の営業がパティシエとオーナーとで、相互に面接することで深いマッチングを実現する。「このとき重要なのは夢。相互にやりたい将来を想像してもらい、お互いのギャップを埋めることがよりよい“ガッチング”」(塩崎氏)とのことで、双方から得られた情報が特に重要になるという。

なりたい将来を想像してもらい、ギャップを埋める

ベテランの頭の中を新人がのぞけるよう、既存のSFAをリプレース

 塩崎氏が5人の社員だったという数年前のドリームラボは、第二創業期を迎えて人員不足だった。募集要項や募集背景などの情報は過多で、営業一人が扱う案件数は200件以上。求職者も月に100名のペースで転職するわけだが、1人1人にきめ細かいマッチングを提供する同社の方向性からして、扱う情報は非常に多岐に渡る。職種や給料、経験年数、転職時期、エリア、性格、趣味趣向、ワークライフバランス、家庭の事情、独立したいといった将来の夢などなど。これら幅広い情報をこれまでは求職者と取引先の2つのExcelで管理していたという。

膨大な情報を2枚のExcelで管理

 「これだとガッチングの過程が全然蓄積できないし、最新データの管理や共有も大変」(塩崎氏)とのことで、いよいよSFAの導入を行なったが、結果としてうまくいかなかった。なによりSFA製品が本格的過ぎたことと、ビジネスにあわせたカスタマイズに工数とコストがかかりすぎたというのが失敗の理由だ。しかも、求職者とのやりとりにメールとLINEが混在し、履歴書は紙でもらったり、共有するツールがバラバラで手間もかかっていたという。

 そんな中、20代前半の新人が入社したが、彼女は飲食業界の経験がなく、20代後半~30代がメインの求職者にとっては経験が足りなかった。一方で、50代の創業メンバーは元々寿司職人で、1ヶ月に50名以上の面談をこなすたたき上げのベテラン。しかし、両者の経験量を埋めるための情報や事例が、今までは個々の営業の頭にしかなかった。「せっかく今までいいガッチングをやってきたのに、頭の中をのぞきに行かなければならない状態だった。これを解消したいと思った」(塩崎氏)。こうして自分たちのマッチングスタイルに合わせた情報管理と蓄積を実現するため、使いやすい・カスタマイズしやすいツールということで白羽の矢が立ったのがkintoneだった。

いかにもな元寿司職人のベテランの頭の中をのぞかなければならない新人

アプリ連携、検索性の向上、コメントや通知の活用

 kintoneで作ってみると、結果としてアプリ数は多くなった。取引先は「リード(見込み客)」「取引先」「活動履歴(取引先)」「紹介案件」などのアプリに情報を登録。一方、求職者は自社求人サイトの情報を「求職者」に登録し、最終的には「選考状況」アプリにマッチング履歴を溜めることにした。

ドリームラボのアプリ間の連携

 アプリ数が多かったため、別のアプリのはわざわざ立ち上げると面倒なので、アクションボタンにこだわった。「『求職者』のアプリからボタン1つで『選考状況』のアプリに移動して、そのまま情報に登録できるようにしました」(塩崎氏)。また、関連レコードを使って、対応履歴や選考履歴を表示できるようにしたり、顔写真や履歴書、希望条件、人柄などをデータベースとして蓄積できるようにした。さらに、外勤と内勤で情報格差を埋めるべく、コメント機能と履歴を活用した。

 取引先と求職者の情報が入り乱れる選考状況アプリに関しては、検索性を強化した。たとえば、同姓同名の可能性を考え、各データ固有のレコードタイトルを自動設定し、ルックアップの関連キーとして使用している。また、探したい情報に合わせたソートを作成するとともに、kintoneのカスタマイズツールであるアールスリーインスティテュートの「Customine」を用いて検索ウインドウをアプリ内に表示するようにした。「パティスリーの場合だと、フランス語の難しい店名があったりするので、うまく絞り込めるようにした」(塩崎氏)とのことで、検索性を高めた。

 さらにLINEを使わず、なるべくkintoneで完結できるよう、通知にもこだわった。求職者アプリでは応募が来たら、未対応の求職者がいる旨が、面談日が決まったら求職者情報が更新された旨がそれぞれ通知される。もちろん、選考状況アプリでは面接の模様や結果も通知され、マッチングの内容が社員に共有されるようになっているという。仕組みやルールはマニュアルを作って社内で共有。コメント機能を用いてルールの変更を議論したり、マニュアル更新をお知らせするようにした。使い方もkintoneによってよりよいものに変えていったわけだ。

通知機能を用いて情報共有

基幹となるアプリはCustomineの活用で実現

 これだけの機能を実現するには、基本仕様だけでは難しかった。基幹となるアプリは前述したCustomineを使って構築した。「僕はプログラマーだけど、Customineを使うことでプログラミングなしで調整できるのはすごく強いし、開発工数がかなり減らせた」とのことで、開発期間は驚異の約1.5ヶ月で済んだ。3人しか使ってなかった既存のSFAから脱却し、kintoneを15人の社員全員が使っており、面談やマッチング件数も増えたという。

kintoneの導入効果

 導入効果について塩崎氏は、「社内での情報共有が非常に容易になった。東京に進出できるようになったのも、kintoneに情報が蓄積されたからこそ」と語る。また、営業から内勤への依頼の手間が削減されたり、データの集計やまとめが容易になるなど、工数も大幅に削減されたという。

 最後、塩崎氏は「われわれのような人材紹介業は、人を企業にご紹介することで、成功報酬を得るわけですが、売上だけではなく、やはり大事になるのは働き手と企業の双方の夢が叶うこと。これをわれわれはガッチングと呼んでますが、よりよいガッチングのためには情報共有は重要」と語る。今回は基本機能がメインだったが、今後はより高度なカスタマイズにもチャレンジしていきたいという。

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