2019年6月5日、サイボウズ 松山オフィスにて、kintone hive matsuyama vol.1が開催された。kintone公式のユーザーズイベント、kintone hive 2019は全国6カ所で行なわれるが、松山は5番目となる。中四国で初開催となるkintone hiveとなり、現場は大盛り上がりだった。今回はイベント全体とライトニングトーク「kintone hack」の様子を紹介する。
中四国初開催となるkintone hiveが松山オフィスで開催された
kintone hiveは、ユーザー企業が業務改善の成功の事例をプレゼンしあうユーザーズイベント。もちろん、参加者のほとんどがkintoneユーザーで、多くの業務改善のアイデアを交換するのが目的だ。2015年から開催されており、ユーザー企業同士の交流も活発に行なわれている。
今回の司会を務めるのはサイボウズ松山オフィスの伊藤佑介氏。愛媛県出身の30歳で、2児の父。昨年から副業でテレビレポーターもはじめているという。
伊藤氏は4年前のkintone hiveを見て感動し、いつか松山でも開催したいと願っていたそう。この日は松山はもちろん、中四国でも初のkintone hive開催。この全国6カ所で行われるkintone hiveで代表となったファイナリストは、秋に開催される「kintone AWARD」に進む。
「ITで全国大会というと、やはり東京・大阪が最先端です。しかし、過去3年間、kintone AWARDのグランプリに輝いた会社を見てみると、宮城県、岩手県、福島県と地方から全国に発信できる活用方法が誕生しています。私の夢は、中四国ブロックからグランプリになるような活用方法が生まれることです」と伊藤氏は語る。
業種業態ばらばらの4社が自社の事例を紹介してくれた
kintone hiveでは、登壇する4社のプレゼンがメインだが、こちらは個別に別記事でまとめるので、今回は登壇者とテーマを紹介する。
トップバッターを務めるのは、ケーオー商事の代表取締役 片山昭氏で「諦めかけていたSFA(営業支援)導入をkintoneで実現!!」。2番手は、ときわ システム部の山口芳晴氏でテーマは「kintoneでチームを結ぶ ~働く社員、部署をITでつなぐ環境づくり~」だ。
3番目に登壇したのは医療法人ゆうの森 事務局業務サポート室課長の前島啓二氏で「kintoneを5年活用して学んだこと」と題するプレゼン。ラストの有限会社ゆうぼく 代表取締役 岡崎晋也氏は「kintoneがある6次産業のカタチ」だ。
gusuku Customine、全画面カスタマイズ、AI連携と上級テクが披露された
プレゼンの後に投票が行なわれ、集計している間にkintone hackが開催された。kintone hackは、kintone開発者によるkintoneのアイデアや活用法を5分間で紹介してもらうライトニングトークセッション。プロフェッショナルのkintone活用事例を学べるので、人気のコーナーとなっている。今回は3社が登壇した。
1社目が、アールスリーインスティテュートの沖安隆氏で、「いつから“標準機能”なんてものがあると錯覚していた?」というあおったお題。同社は大阪に本社があるが、沖氏はリモートワークで愛媛に住んでいるとのこと。kintoneエバンジェリストでkintone Caféの運営も行なっている。
kintoneの標準機能で「四捨五入とか年齢計算とか元号表示ができたら」とよく言われるそう。「kintoneは桁丸めが発生します。%で割ったりすると、たまにゼロになったりします」と沖氏。そのためYEN関数を使ったり、補正値で調整することで、四捨五入を実現することができる。
○歳○ヶ月という年齢計算も、DATE FORMAT関数を利用し、結果の文字列を計算で数値に変換すれば行なえる。しかし、画面いっぱいに表示された処理が必要。また、元号の表示は標準だと無理なのだが、沖氏は値の比較ができるプロセス管理を利用。ステータス名に元号を表示する裏技を披露して、笑いを取った。
しかし、同社が提供している「gusuku Customine」なら、100倍速く実現できると紹介。「やること」が用意されており、マウスで選ぶだけで、本来JavaScriptが必要だったカスタマイズを実現できるのだ。もちろん、四捨五入も年齢計算も元号表示も簡単に設定できる。「自転車で移動して遅い時に、筋トレやれよと言う人はいません。バイクや車といった違ったツールを使って、仕組みから解決しましょう。目的に合わせて適切なリソースとお金を配分するのがhackです」(沖氏)
続いては、東京コンピュータサービス 高松支店の店長を務める岡崎拓也氏が登壇。同社は全国に43拠点を展開し、それぞれが転勤なしで地元密着型で地元のITを支えているそう。岡崎氏が紹介する導入事例のテーマは「全画面表示カスタマイズの紹介」というhackだ。
香川県を中心としてブックオフのフランチャイズ事業を展開する企業では、交通費精算や休暇申請、お酒の査定などをkintoneで効率化している。「kintoneで査定の作業を窓口で行なうに当たり、問題点がありました。kintoneの画面はよく見るとボタンがたくさんあります。飛行機のコクピットといったところでしょうか。これをアルバイトが操作して、無事にお酒査定のアプリにたどり着けるのでしょうか。たどり着いたとしても、適切な作業を進められますでしょうか」と岡崎氏は指摘する。
そこで、全画面表示カスタマイズが活躍。kintoneアプリの画面をJavaScriptでまっさらにして、顧客の要望に合わせて作り上げた。「お酒査定」のボタンしかなく、ブラウザの戻るボタンさえないので、間違えずに済む。
お酒の種類は膨大で、それぞれに買い取り価格が決められている。もちろん、この価格もkintoneで管理している。査定は、減点方式になっているので、ラベル剥がれや液漏れ、目減り、沈殿物、箱の有無などをタップしていくだけで、自動的に買い取り価格が算出され、kintoneにもそのデータが記録される。
IT操作が不慣れな人だけでなく、受付や店舗内案内システムなど一時的なゲストが利用するのにも適しているという。さらに、定例データや単純データ操作などでRPA(自動操作)などを利用する場合にも有効だそう。サイボウズが画面デザインを変更しても、全画面カスタマイズをしている場合は影響を受けにくく、RPAの動作に支障がないためだ。「邪道ですが、せっかく24時間動き続けているクラウドを使われているのですから、適切なカスタマイズをしてもっと有効活用できればなと思います」(岡崎氏)
そしてkintone Hackの最後はダンクソフト 高知スマートオフィス チーフディレクターの片岡幸人氏。「kintoneでAIによる画像解析の活用を試してみた 「kintone」+「外部サービス」で活用範囲を広げよう!」というテーマでプレゼンしてくれた。
片岡氏はkintoneだけではできないことを仕事として手がけているそう。たとえば、提示に実行するバッチ処理や巨大CSVファイルデータの取り込み、センサーから収集したデータを表示、遠隔地の機器データ取得と制御などを実際に経験したという。さらに、AIによる画像解析の活用にもチャレンジしようと考えているそう。
「AI関係はAWSをお借りして、通信はソラコム、あとはラズベリーパイというボードコンピューターを連携したいと思います。私はリモートワーカーでもあるので、たとえば遠隔地にいる人が在籍しているか、機嫌どうですかというのをデモしたいと思います」(片岡氏)
ラズベリーパイのカメラからAIサービスを経由して、kintoneに記録するというデモにチャレンジ。実際に、裏側にいる伊藤氏がカメラの前にいる写真とデータが記録されていた。kintoneのダッシュボードアプリには、氏名や社員番号、撮影時刻などが記録されている。続けて、AIで写真を解析し、顔の感情を推測した。伊藤氏の表情から、「楽しい感 27.33%、驚いた感 13.52%」などと機嫌を伺うことができた。
勤怠管理の自動化だけでなく、来店者属性や時間の管理などもできそう。kintoneと外部サービスを組み合わせることで、標準機能の限界を突破できると片岡氏は締めた。
kintone hive matsuyama vol.1で選ばれた代表は?
最後に、今回のkintone hive matsuyamaで中四国代表として選ばれた企業の発表が行われた。ファイナリストとして、秋に開催される「kintone AWARD 2019」に進出するのは、有限会社ゆううぼくの岡崎晋也氏となった。詳細は追って紹介するが、1次産業×2次産業×3次産業を掛け合わせた6次産業を手がける同社が、kintoneを導入することで生まれた化学反応という興味深い内容だった。
初開催となるkintone hive matsuyamaだったが、登壇企業も参加ユーザーも熱量が大きかった。今回のkintone hiveを皮切りに、今後もどんどん盛り上がっていきそうだ。