いい音には、静寂が要る──。
ソニーは7月5日、業界最高クラス(JEITAからの承認を取得)のノイズキャンセリング性能を持つ完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM3」を発表した。価格はオープンプライスで、店頭での販売価格は2万円台後半になる見込み。発売は7月13日。
発売済みの「WH-1000XM3」が採用した、高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN1」と共通の技術を用いつつ、小型化と低消費電力化した新チップ「QN1e」を搭載する。加えて、ハウジングの外側(フィードフォワード)と内側(フィードフォワード)の両方にマイクを備えた「デュアルノイズセンサーテクノロジー」も完全ワイヤレス型で初めて採用した。
新開発のQN1eとデュアルマイクで、より高いノイキャン性能を
WH-10000XM3の購入者を対象としたアンケートでは、電車に加え、飛行機での利用率が高く、ノイズキャンセルの効果に感激したり、疲れやストレスを軽減できた改善などが得られたという声が多く集まっているという。また、飛行機を使った長距離の移動の快適性を評価し、2019年春から、複数の航空会社のファーストクラス・ビジネスクラスでの採用も始まっている。
ノイズキャンセルヘッドホンでは、周囲の騒音をマイクで集め、これと逆位相の波を再生音に合成してノイズを打ち消す。その効果を上げるためには、チップ性能の高さに加え、マイク性能(ノイズ成分を集音する能力)、そして装着性や遮音性(ノイズを防ぐ構造)の3つが大切だという。WF-1000XM3では、これらすべてを改善した。ソニーでは、イヤホン・ヘッドホンのノイズキャンセル性能を「シングルノイキャン」のみ→「デュアルノイキャン」の搭載→「QN1/QN1eの搭載」によってランク付けしており、星の数で示している。
QN1eは、ノイズキャンセルのための「DNCソフトウェアエンジン」のほか、マイクで収音した音をデジタル化する「ADC機能」、デジタル信号をアナログ信号に戻す「DAC機能」、ドライバーを駆動する「ヘッドフォンアンプ」などを1チップに収めている。音楽信号は24bit処理となっており、アンプ部は高S/Nと、低ひずみにこだわったクリアな再生にしているという。
マイクについては、従来機種の「WF-1000X」「WF-SP700N」などでは外側にしか装備していなかった(フィードフォワード)が、新機種ではハウジング内にもマイクを置き、外来ノイズだけでなく、ハウジング内に残ったノイズに対するフィードバックも得る。
小型筐体でこれを実現するためにこだわったのが、ドライバーユニットとマイクの配置だ。ドライバーから出た音を集音する際の位相をそろえるため、ドライバー正面に障害物を置かない構造にした。さらに、マイクとドライバーを横に並べた形状として小型化している。遮音特性を維持しつつ、フィードフォワードでキャンセルしやすい特性を得られるよう、背面の空気抜きの穴の形状も調整している。
直径6mmの振動板を使った高感度ドライバーは、磁気回路を外磁型にすることで駆動力を向上させた。また、音導管に対して最適な位置にドライバーを配置することで、40kHzまでの高域再生が可能となった。Bluetoothイヤホンだが、WF-1000Xは、完全ワイヤレス型としては初めて高域補完技術の「DSEE HX」を採用することで、MP3やCDなどの再生音をハイレゾ相当の音質(96kHz/24bit)に引き上げて再生できる。