業務を変えるkintoneユーザー事例 第40回
今年もkintone hive 2019が名古屋からスタート
社員がkintoneに入力してくれない!地元密着型IT企業がやったこと
2019年03月07日 11時00分更新
kintoneのユーザーイベントである「kintone hive 2019」が今年もスタートした。2019年2月25日は皮切りとなる名古屋のkintone hive nagoyaが開催され、地元4社のユーザー事例とkintone hackと呼ばれる活用LTが披露された。
サイボウズ地方担当が司会で活躍する今年のkintone hive
サイボウズが主催する「kintone hive」は、kintoneユーザーが事例やアイデアを共有するイベントで、今年は名古屋、仙台、福岡、大阪、松山、東京の6都市で開催される。6会場ではそれぞれAWARDファイナリストが選出され、秋のCybozu Daysで行なわれるkintone AWARD 2019」に登壇する権利を得ることになる。
例年は全会場でkintoneプロダクトマネージャーの伊佐政隆氏が司会を務めてきたが、今年は各地区の所長が司会を務めることになった。kintone hive nagoyaでは、26年間名古屋在住で、昨年50歳を機にサイボウズに転職してきた吉原克志氏が司会を務めた。「サイボウズの坊主」という見た目の吉原氏が、「多少視線が痛い感じがしますが(笑)、大丈夫でしょうか?」と問うと、会場からもきちんと「大丈夫ですー!」という声が戻ってくる。
吉原氏は、チームワークにこだわるサイボウズの経営理念について説明した。2005年に同社の離職率は28%となり、「チームワークをよくするためにグループウェアを提供しているのに、われわれ社内でこんなことでいいのか?」(吉原氏)という疑問が生まれた。しかし、青野慶久氏が社長になって以来、100人100通りの働き方を目指す改革が始まり、現在は離職率も4%台になった。
そんなサイボウズのノウハウが詰まったグループウェアがkintoneだ。契約社数は1万1000社に達し、稼働中の総アプリはすでに75万件を超えるという。「先ほど100人100通りの働き方という話をしたのですが、みなさんの業務課題もそれぞれ違う。この課題を解決できるのが、kintoneがここまで受け入れられている理由」と吉原氏は語る。
kintoneで業務を見える化し、働き方を変えたちらし屋ドットコム
トップバッターはちらし屋ドットコム 常務の河田菊夫氏。IT系商社での営業経験を持ちながら、実家がやっていた刃物の職人でもあり、FC岐阜のファンでもあるという河田氏は、自己紹介と会社概要からスタートした。
岐阜県の各務原市に本社を置くちらし屋ドットコムは、今年で20期目を迎える会社。社名では「ちらし屋」だが、事業はWebサイトの制作や活用サポートがメインで、3年前から700社いる顧客の商品を海外に向けて販売する物販事業もスタートさせた。「グローバルだけど超ローカルなWeb会社」(河田氏)というのが同社のビジョンだという。
同社がkintoneを導入したきっかけは、Web事業部での長時間労働をなくしたいというものだ。Web制作の現場では、ユーザーのヒアリングを経て、企画や取材、撮影、デザインなどを手がけるわけだが、締め切り間際に修正作業が繰り返されていたという。「お客様が満足いくまで、残業、徹夜、休日出勤などを当たり前のように繰り返していた」と河田氏は語る。また、コスト意識も欠如していた。「がんばって納期に間に合わせても、いくら儲かったのか? 会社としていい仕事だったのか? こんなことがわからない状態でした」と河田氏は語る。
そんな課題を抱えた2013年に「簡単でシンプル、安価ですぐ始められる」という条件で導入されたのがkintoneだ。現在、ちらし屋ドットコムでは、案件の内容、制作状況、納期、受注金額、請求予定日などがすべてkintoneのアプリに登録されており、誰がどの業務を何時間くらいかけたのかもわかるようになっている。当然、合計作業時間がわかると、コストとして数値化できるので、目標原価との比較も容易になった。
「受注金額より赤字になってしまった案件でも、今まではお客様が満足してくれたし、納期にも間に合ったと、次もがんばろうというコメントが飛び交っていた」という河田氏。しかし、見える化ができたことで、各人がコスト意識をもって業務改善に取り組むようになったという。たとえば、ユーザーに対して、SkypeやZoomなどの打ち合わせを提案したり、赤字だった定期更新作業の値上げを交渉できるようになったほか、社内でも「●●さんしかわからない」といった属人性が大幅に排除されたという。
kintone入力は社員にとって負担でしかなかった
とはいえ、「kintoneに入力する」という作業を継続させることには苦労もあった。「私にとっては業務改善のために必要でしたが、スタッフにとってみれば、激務にさらに仕事が増えたという負担でしたかなかった」と河田氏は振り返る。入力を促す張り紙を貼ったり、朝礼で訴えたりしたが、なかなか定着しなかったため、最終的には会議中にkintoneを入力する時間を作ったという。「苦肉の策」と語る河田氏だが、会議の時間をkintone入力にあえて割り当てたことで、常務として入力を重要視したことが社員に伝わったようだ。こうした地道な活動の結果、kintoneへの入力が「面倒な雑務」から「業務改善に必要な業務」という意識に変革されたことで利用が根付き、今では顧客管理や在庫管理までkintoneが使われているという。
「システムの導入がうまく行かないのは、システムの問題だけではなく、最終的には人の気持ちがある。安価で簡単で柔軟性の高いkintoneは、この2つの課題から解決してくれた」と語る河田氏。そして、kintoneを業務改善を実感した同社は、昨年11月にサイボウズのパートナーとなり、kintoneの構築や業務改善まで提供しているという。kintoneによる業務改善を自ら進めたからこそ提供できるノウハウは、同社の大きな強みになったようだ。
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