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テレワーク導入、キヤノンITSが決断したワケ

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 本記事はキヤノンITソリューションズが提供する「マルウェア情報局」に掲載されたテレワーク導入は「小さく始め大きなうねりへ」 推進担当に話を聞く【連載第1回(全3回)】を再編集したものです。

 慢性的な人材不足感が日本全体を覆う中、「働き方改革」が多くの企業で進められている。その働き方改革において、柔軟な働き方の手段として注目を集めているのがテレワークである。総務省でも特設ページを設けるなど、積極的な取り組みを後押ししている。

 マルウェア情報局では情報セキュリティに関する情報を提供する立場から、テレワークをどうすれば安全に推進していけるのかを考えていく。第1回となる本稿では、まずキヤノンマーケティングジャパングループのキヤノンITソリューションズ株式会社(以下、キヤノンITS)内の事例を取り上げ、導入の背景や進める際のポイントを聞いた。全3回構成となっているので、テレワーク導入を検討している企業の方は参考にしてほしい。

30%超が育児・介護などを理由に退職、という数字が突きつけた現実

 女性活躍推進を以前から進めていたキヤノンITSでは、「子育てサポート企業」として「くるみん」の認定を受けるなど、さまざまな取り組みを進めてきた。その一環で、2014年に退職者の退職理由について分析をおこなったところ、退職者の30%超が育児・介護などを理由に会社を去っていることが判明。そこで状況を改善するべく、社長直下にチームを立ち上げた。担当スタッフは人事部の濱口 光伸と高橋 陽子。人事部内の業務と兼務にて、このプロジェクトを推進していくことになった。

 「以前から業務との両立支援を進めていたにもかかわらず、30%超が退職理由に育児・介護を上げていたことは社内でも大きな波紋を呼びました。同業他社と比較し、制度的にも充実していたにもかかわらず、実態が伴っていなかったことを強く反省し、何を取り入れるべきかを再検討しました。その結果、働き方を柔軟なものにできるテレワークに着目し、導入に向けて動き出しました。」と濱口は当時の様子を語る。

 同じタイミングで、実はテレワークを支援するソリューションが自社内で開発が進められていたのも、導入を後押しすることとなった。製品の実証実験を兼ねてのテスト導入という枠組みがすぐに社内で決定した。

 「当社でのテレワーク導入はまず職場の理解を得るということに重きを置きました。特に、管理職がネガティブな反応を示すと、導入自体が頓挫しかねません。そのため、まずは小さく始めることにしました。当社の場合、製品の実証実験という追い風もありましたが、他の会社の場合は始める最初の時点で壁にぶつかることも考えられます。だからこそ、『小さく始める』ところから進めるというのはひとつの選択肢として有効だと思います。」と高橋は述懐する。

利用者目線だけでなく管理者目線もテレワーク導入には必要

 キヤノンITSでのテレワーク導入は2015年1月から始まった。テスト導入ということで1年間限定、当初の導入対象者は8名に絞り込んだ。対象となったのは育児短時間勤務をその時点で選択していた社員だ。さらに、最初ということで利用条件も限定的にした。月6回かつ週2回までという制限をかけ、少しずつ馴らしていくようにした。

 「テレワークの導入は利用側の視点だけでは成り立ちません。むしろ、管理職はこれまでの就業形態と異なるため、管理の仕方も変えなければならなくなります。働き方改革などでのテレワーク導入だと、どうしても利用者側に目が向きがちです。しかし、管理する側も馴れない方法と向き合うことになる点があることは、強く意識しておくべきでしょう。管理者の支持も得られなければ、本導入に辿り着けません。」(濱口)

 管理職としては、目の前で業務をしていた部下と画面越しで向き合うことになる。月に6回の上限はあるものの、適切な評価をしづらくなるのではという懸念もあった。成果、アウトプットのみで判断をするという選択も確かにある。しかし、そうなると結果だけで判断することになり、プロセスを評価材料の一つにできなくなってしまう。それはキヤノンITSの業務スタイルとは馴染まず、反発が出るのは必至だった。

 「導入前の時点で、管理者による評価をどうすべきかという点は大きく議論されました。今回、テレワークのテスト導入で採用した当社製品の『テレワークサポーター』には在席状況や業務内容を可視化させるための機能が付帯しています。それらを利用することで、オフィスにいなくても『どのような仕事をどのくらいおこなっているか』が見えるようになりました。一方で、社員はテレワークの場合、オフィスにいないからこそ、しっかりと業務に取り組まなければならない、一日の成果を出さないといけないと思ったようです。」と濱口は言う。

 高橋が言うには、「私たちが想定していなかったようなことがテストで次々と明らかになっていきました。」とのことだ。例えば、自宅で利用するためにパソコンを持ち帰る時、女性の場合だとその重さは負担となってしまう。このことはテレワーク制度の利用自体を躊躇してしまいかねない。他にも、紙で印刷したデータを持ち出せないことや、自宅とオフィスの環境の違いを不便に感じるような声も上がった。これらの意見は本導入に向けた課題として社内で共有されている。

「テレワークサポーター」の情報漏えい対策機能だけにとどまらないセキュリティ対策

 キヤノンマーケティングジャパングループでは、さまざまなセキュリティ製品を取り扱っている。その提供元として、模範となるセキュリティ対策がテスト導入時にも強く求められた。

 「セキュリティ製品を提供する立場であるがゆえ、テレワークの制度設計時にセキュリティ対策への時間を多く割きました。『テレワークサポーター』には業務用パソコンに対する『のぞき込み検知』や『なりすまし検知』、『インシデント記録』などの機能があり、それを使って一定の情報漏えい対策ができました。加えて、実際に利用した社員の声を聞いて使い勝手に問題がある場合は、改善要望を出しました。もちろん、ツールだけに頼らず制度自体の改善も図りました。しかし、何よりも社員自身にセキュリティへの意識を強く持たせることが重要です。」(濱口)

 テスト導入で対象となった社員は現場の管理職からの推薦だったこともあり、導入に向けた事前の研修などをおこなわずとも意識を高く持つことができたという。しかし、これが全体への導入となった際は意識を強く持ってもらうための教育なども事前に必要になってくるかもしれない。テレワークの導入を着実に進めていくためには、ハード面だけでなくソフト面でも投資が必要になるということだ。

ステップを着実にクリアし、テレワーク利用の拡大につなげていきたい

 1年のテスト導入が終了した結果、対象者からは生産性が向上したという報告がアンケートで寄せられた。育児、介護などをおこなっていると、どうしても自宅にいなければならない時がある。そのような時でも自宅で業務を進められるようになったことで、業務プロセスが円滑に進んだようだ。また、自宅で周囲に社員がいないため、話しかけられることがなく集中して作業に取り組むことができたという声もあった。あるいは、オフィスにいないからこそ、より計画性が求められるという逆説的な一面も明らかになった。

 「テスト導入の結果は上々と捉えています。現在は対象者を広げ、65名で実施しています。今後も利用者を拡大したいと考えていますが、管理職者がまずテレワークを理解しない限り、全体への導入は見込めません。ここが利用者拡大の試金石だと考えています。」と濱口は今後の進め方について強調した。

 本導入に入り、育児・介護を理由とした退職者の減少も感じているという。テスト導入の対象者の体験が社内で共有されることで、テレワーク制度の利用希望者も社内で増えつつあるようだ。今後の導入範囲の拡大では、こうした希望者を対象に取り込むことも予定されている。そして、次の導入に合わせ、利用環境をより良くする検討も進んでいるとのことである。現状のロードマップでは全体への導入は未定となっているが、その道筋は着実に描かれつつある。

 もともと、女性活躍推進法をきっかけに、テレワーク導入から始めたチームはいまや「ダイバーシティ推進課」として人事部直下に置かれ、テレワークだけでなくさまざまな取り組みが並行して進められている。しかし、ただテレワークを導入するだけでは「働き方改革」には至らない。利用者側、管理者側双方の視点で、どうすれば既存の業務を尊重しながら働き方や周辺制度を整備していけるか。この点が導入を花開かせるためには求められているといえそうだ。

話を聞いた社員:総務人事本部 人事部 ダイバーシティ推進課 濱口光伸,総務人事本部 人事部 ダイバーシティ推進課 高橋陽子

 連載2回目では、テレワーク導入にあたって必要になる環境構築における3つのポイントを解説している。

 連載3回目ではテレワーク導入を成功させている企業に共通する2つのポイントについて解説している。


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