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スタジアムから生まれるJAWS FESTA 2018伝説 第6回

もっとローカルに!もっとグローバルに!

立花さんが語る田舎とクラウドの話はバージョンアップしてた

2018年12月19日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 パナソニックスタジアム吹田で朝から盛り上がってきたJAWS FESTA 2018もそろそろ夕暮れ。寒さとスライドを揺らす風が気になってきた頃、ベガルタ仙台のユニフォームを着たヘプタゴンの立花拓也さんが壇上に現れた。彼が長らく訴えてきた田舎でのクラウドとコミュニティの話は、すでにバージョンアップしていた。

ヘプタゴン代表 立花拓也さん

顔の知らない100万人より身近な100人を大切にしたい

 青森県三沢市のクラウドインテグレーターであるヘプタゴンで代表を務める立花拓也さん。通称、バナティ。2012年に創業されたヘプタゴンはAWSのAPNコンサルティングパートナーとして、地元東北のクラウドの導入支援や運用を手がけており、利益はすべてベガルタ仙台に突っ込まれているらしい(本人談)。地元密着はヘプタゴンを語る上で重要な1つのキーワードで、実際に「50社100プロジェクトを超える東北のサービスをクラウド上で稼働している」(立花さん)とのこと。

 立花さんは、「田舎専業CIer&MSP」「アウトバウンド営業ゼロ」「フルリモートワーク」「コミュニティフルコミット」「小さなチーム」「エンジニアオンリー」などヘプタゴンをまつわるキーワードを挙げる。「最近始めたのはセルフハックタイムというやつで、自分の好きなことを業務としてやらせる。1週間で4時間とっているので、着物の着付けとか、英会話とか。私は宇宙の本をひたすら読むとかしています」(立花さん)。

 

ヘプタゴンを表すキーワード。最近はセルフハックタイム

 ヘプタゴンの紹介を終えた立花さんは、こうした会社を立ち上げた背景を語るべく、参加者に向けて「いい会社、いい仕事とはなにか」を問いかける。売上の高い会社、みんなに使われているサービスを提供している会社、働きやすい会社、給料の高い会社など、いい会社の基準はいろいろあるが、起業する前の立花さんは「世界中のたくさんの人を幸せにする仕事」をできるというのがいい会社だと思っていたという。

 でも、そんな立花さんの価値観を変えたのが、2011年の東日本大震災。「家族や友人の大切さを改めて思い知ったことで、顔の知らない100万人を幸せにすることより、目に見える身近な100人を幸せにする方が自分にとっては幸せだと感じるようになった。これが会社を興すきっかけになった」と立花さんは語る。

 こうした経緯で生まれたヘプタゴンは、最新のテクノロジーで身の回りの人たちに役立つことをミッションとする。「スターバックスが掲げる『Think Locally,Act Regionally,Leverage Globally』をまさに目指したい。地元(Local)の仲間を集め、グローバル(Global)の技術やノウハウを使い、東北エリア(Region)で仕事をしていきたいと起業当初は思っていました」(立花さん)。

ITの民主化が進めば地方の会社に勝機が生まれる

 こうしたヘプタゴンのミッションを実現するには、いくつかの前提が必要になる。この1つがクラウドの存在だ。初期費用不要・従量課金で、場所や時間を問わず、さまざまなエコシステムを利用できるクラウド。まさにJAWS FESTAの基調講演でフジテックCIOの友岡賢二さんが語った通り、ITの民主化が進むことで、人・モノ・金が事業の差別化要因にならなくなるため、地方の会社や中小企業にも大企業に勝つ余地が生まれているわけだ。

 もちろん、技術力だけあれば、大企業に簡単に勝てるわけではない。しかし、クラウドを活用することで、マーケティング、デザイン、サポートなどさまざまな領域で省力化が実現され、ブレークポイントが底上げされるので、ビジネスが続けやすくなる。ゼロから仕組みとインフラを作り始めるような「車輪の再生産」を止め、差別化につながるビジネスの創出にフォーカスすることこそクラウドの大きな価値と言うわけだ。

クラウドの活用でブレークポイントが底上げされる

 「作るところから、使うところに変わっていくことで、地方でもうまくビジネスを回すことができる。人、モノ、金を持つことが価値ではなく、どれだけ早くアウトプットし、失敗と成功を繰り返せるかが重要になる」と語る立花さん。特にクラウドのインフラレイヤーはITの中でもレバレッジの効く分野なので、自動化・効率化を進めることで、少数精鋭でも高い価値を出せる見込んでいる。

 また、「東北地方は人口減少も激しく、産業も労働集約的。農業や観光業など、入ってくるお金がすぐに出てしまうフロー型のビジネスがメインだったけど、今後はクラウドを使うことで、それに立ち向かえる新しいビジネスを生み出せると思う」と述べ、非ITの業界とノウハウを共有し、クラウドならではの文化を他の業種に移転していくことが重要だと指摘した。

1人の参加者からグローバル登壇にまで続く立花さんコミュニティ遍歴

 次に立花さんは自らのコミュニティ遍歴について語る。「コミュニティは業界団体とは違う。上下関係がなく、フラットな関係で、お互いにラーニングしあう場」と定義する立花さんは、初回のJAWS DAYSがコミュニティデビューで、クラウド業界のスターが話す内容に感動したという。次に、前回の関西開催だったJAWS FESTAで初登壇し、田舎でのクラウド活用についてセッションを持ったという。

 その後、JAWS-UGの運営に携わるようになり、地元の青森のコミュニティに参加したり、自らコミュニティを立ち上げることになる。結果として、アスキーでインタビューが載ったのはもう3年も前のこと。あれよあれよといううちに、JAWS-UGの全国代表になり、JAWS DAYSの実行委員長になった。その後、アスキーに記事を書いたり、書籍の執筆に携わったり、「コミュニティに参加しなければ、経験できないことをいっぱいやらせてもらった」という。

メディアへの露出ラッシュが続く立花さん

 そして、立花さんのコミュニティ体験は、国内に閉じず、海外にも拡がった。この数年は、韓国のAWSユーザーグループのイベントをきっかけに、中国、インドネシア、シンガポール、タイのイベントにも参加・登壇。「コミュニティにコミットして本当によかった。アウトプットすることでいろんな人とつながり、いろんな情報を得られ、本音で話せる友達が世界中にできた」と立花さんは振り返る。

 コミュニティの参加経験は、立花さん個人としても、ヘプタゴンという法人としてもさまざまなメリットがあった。まず個人としては、JAWS DAYSの運営経験を通し、上下関係のないコミュニティ内で、いかに議論を集約させ、相手に納得してもらうかを経験できた。また、コミュニティに参加しなければ会えないような先輩の経営者や地方の会社の人に会えたほか、コミュニティでの出会いがビジネスにつながったこともあった。さらに、いっしょに働ける優秀な人材に会えたり、自社が採用しているリモートワークでのマネジメントノウハウ等も、得ることができたという。

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