このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

好きな音楽を中心に据えたら、働き方もこうなった

バンド仲間が同じ会社で働くロックバンド「ザ・クレーター」という生き方

2018年11月22日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders 写真●平原克彦

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

昔は誰かがいいところに連れて行ってくれると思っていた

大谷:バンド活動も本格的ですよね。たまにライブというだけじゃなく、会社員やりながらツアーまでやってるって。きっかけはあったんですか?

シモセニアン:もともとツアーするつもりはかったのですが、2012年に初めてアルバムを出して、全国に流通させて売り込もうという話になったとき、音源を全国のいろんなところにばらまいたんです。その1つがFM石川さんで、1ヶ月間パワープッシュでうちらの曲をかけまくってくれたんですよ。

4人とも金沢に縁もゆかりもなかったんですが、ライブに行ったらお客さんがいるんです。東京で地道に活動やっていて、知り合いに「ライブ来てよー」ってやっていたバンドなのに、金沢に行ったらいきなりファンがいる。これはすごいと。

先週やったライブ風景

大谷:アメリカだとCMJ(College Music Journal)みたいなメディアやローカルラジオの影響力が大きいと言いますが、まさにそんな感じですね。

シモセニアン:これに味を占めちゃって、いろんなところで同じことできないのかなあと思ったなれの果てが全国ツアーですね。すごく多いわけじゃないですけど、各地にファンというか、知り合いがいます。

大谷:ファンの近くまで行ってライブやるって、ある意味アクティブですよね。

シモセニアン:前職で女性のアイドルやタレントといっしょに仕事したことがあったのですが、彼女たちってWebを駆使して能動的にお客さんをとりに行ってるじゃないですか。すごいなと思って、衝撃を受けました。

あれを見て、「オレたちなにやってるんだ、バンドでもっとやれることあるんじゃないか」とつくづく思いました。独立したきっかけの1つは間違いなくこれですね。

大谷:確かに今のアイドルはSNSや動画を使いこなすし、セルフプロデュース能力がすごいです。

シモセニアン:昔、僕らがやっていたのはいい人探し。ライブやっていれば、そのうち誰かいい人が見に来てくれて、自分をいいところに連れて行ってくれるのではないかと思っていたし、だったら東京だけでライブやった方がいいと考えていました。

でも、今はそんなこと1ミリも考えてない。僕たちが能動的に客をとって、僕たちが客を沸かせるんだという意識でやっています。それが今のモチベーションになってます。

40過ぎてバンド続けてたら、親が「そういう生き方、いいと思う」と言い始めた

大谷:私も大学時代は音楽サークルにいましたけど、あれだけ楽器弾ける人がいても、社会人になってバンドやっている人なんて一握りじゃないですか。

シモセニアン:確かにある時期でみんなやめますよ。生活考えたら、続けられないですからね。周りでも、仲いいバンドとか、辞めちゃうんです。そいつらすごいいい曲作るんですけど、やめるんですよ。経済的な問題含め、結婚や出産、世間体みたいなリアルな部分で行き詰まっちゃう。もったいないんですよね。

「周りでも、仲いいバンドとか、辞めちゃうんです」(シモセニアン)

そういうのがなくなるといいなって。僕らみたいなやり方だったら続けられるんじゃないかなと思ったりはします。

大谷:僕がこの記事で読者に伝えたいこともそれかな。生活か、バンドかどちらかをあきらめるんじゃなくて、もう少しやり方あるんじゃないかということですね。その意味ではザ・クレーターってバンドを続けているだけで、丸儲けみたいなところあるのかなと。

シモセニアン:30代の頃はバンドやってたら親からは「お前、いつまでやってるんだ」とか言われましたが、40代になると「そういう生き方もあるよね」という理解になり、最近ではむしろ「そういう生き方、いいと思う」とか言いだしたんです。

若いときはバンドやるの止めようとしていたうちの親父も、今では「オレもそんな生き方してみたかった」って、東京オリンピックを前に筋トレし始めたんです(笑)。高齢になってきたし大丈夫かと思いましたが、そんな親父と最近とても仲いいです。

大谷:面白いですね。今って、転職だって慌ただしいし、変化し続けること、成長することが美徳とされているじゃないですか。でも、ザ・クレーターは変化や成長ではなく、続けていくことで違う世界が見えたのかもしれませんね。

シモセニアン:音楽やってると、必ず「売れたの?」とか、「お客さん増えた?」とか聞かれますが、なんかそういうことだけじゃないのかなと。身の丈にあったやり方で年輪を重ねていければいいと思うんです。

「身の丈にあったやり方で年輪を重ねていけばいいと思うんです」(シモセニアン)

大谷:確かに、行ったことないライブハウスで盛り上がって、地元のファンと話して、美味しいものとお酒を楽しんで、これ以上、何を求めるんだって感じですよね!

シモセニアン:おっしゃる通りです。僕ってサザンロックも好きなんですが、レイナードスキナードやオールマンブラザーズバンドとか、まだ続けてるんですよ。

日本だって、先輩筋にあたるフラワーカンパニーズとか、バン1つでどこでもライブやってますよね。彼らもやめなかったからこそ「深夜高速」という名曲が生まれたので、僕らもそんな境地に至りたいのかなあ。僕らは歌詞も時代性より、普遍性を重視してますし、今やっている曲をずっと歌えると思うので。

大谷:ザ・クレーターを続けるモチベーションってなんなんでしょうね。

シモセニアン:正直、飽きるまでやるってどういう境地か知りたいんですよ。たまたまサマーソニックに出られたこともあるんですけど、最近は突破口になるような大きなこともないので、なにが成功ってよくわからないんです。でも、続けていることで得ていることもあるのかな。全員、旅は好きですし、どこに行くんでしょうかね(笑)。

大谷:とりあえず今度はライブにお邪魔しますね。今日はありがとうございました。


ザ・クレーター

ボーカル「菊永真介」(ex コマザワ☆スタイル)、ドラム「シモセニアン」(ex 髭)、ベース「OKD」(ex ACHOO)、ギター「ひらのともゆき」(ex PeopleJam)の4人組。 東京を拠点とし、全国で活動中。

歯ごたえのある演奏と、クセのある声で歌うポップなメロディが特徴の、「泣いて、笑って、歌って、踊れる」歌モノロックバンド。アロハ、グラサン、ロン毛、リーゼントの見た目フシギなメンバーが放つサウンドは賑やかなのに切なくて、懐かしいのに新しい。

【最新CD】

THIS IS BAND MAGIC! (https://tower.jp/item/4752220/THIS-IS-BAND-MAGIC!)

【今後のライブスケジュール】

2019年1月26日(土) 金沢AZ
2019年1月27日(日) 長野JUNKBOX
2019年2月3日(日) YOYOGI Seesaw Festival
2019年2月7日(木) 池袋adm
2019年2月10日(日) 寝屋川VINTAGE


前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

ピックアップ