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麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第29回

8月リリースの注目音源を中心に紹介

麻倉推薦:ポール・サイモン旧作の新アレンジ、PENTATONEのDSD音源など

2018年09月09日 12時00分更新

文● 麻倉怜士 編集●HK(ASCII)

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『Piano Ballads ~しっとりエレガントな大人のジャズベスト』
Rie Asaka 、Shusuke Inari、Kazuhiro Chujo

推薦

 わが国が誇る高音質レーベル、S2Sのオリジナル作品。S2Sはヨーロッパレーベルの紹介が多いが、自社スタジオで、ソフトシャズをハイレゾ収録したのが本アルバム。アトランティック・スター、チャカ・カーン、スティーヴィー・ワンダーなどのソウルの定番的名曲が、女性ヴォーカルとピアノのデュエットにて、癒し的な心地の良いサウンドで聴ける。響きが非常に多く、ヴォーカルとピアノの音像が大きい。ヴォーカルとピアノの細部までしっかりと高解像度で聴くというより、癒し的に耳をくすぐってくれるアンビエント豊かなサウンドだ。

FLAC:96kHz/24bit、WAV:96kHz/24bit
S2S、e-onkyo music

『Play For Peace』
守屋純子オーケストラ

推薦

 徳川400年祭に向けて、家康生誕の地の岡崎市から新曲を委嘱されたジャズピアニスト守屋純子が、家康ゆかりの静岡、浜松、岡崎を訪れ、さらに山岡荘八著「徳川家康」を読破し、「裏家康公」「久能山東照宮」「表家康公」の3曲を作曲した。「裏家康公」と聞くと、それは何だと思うが、実際にはビートに溢れ、音色感が豊かなビックバンド作品だ。ピアノのオステナート的音階に乗って、金管が縦横無尽に活躍。家康との音楽的関連は分からないものの、現代のビックバンドサウンドとしはとても味わい深いもの。家康ものに加え、「この素晴らしき世界」などの有名スタンダードも収録されている。そのひとつ「バイバイブラックバード」は軽快で、疾走感溢れる。しかし、曲のコンセプトが違いすぎるので、家康作品で統一したほうが良かったのでは。

FLAC:44.1kHz/24bit、WAV:44.1kHz/24bit
Space of Life、e-onkyo music

『There's a Place for Us』
Nadine Sierra、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、ロバート・スパーノ

推薦

 ドイツ・グラモフォンと専属契約を結んだアメリカの若きソプラノのデビュー作。バーンスタインの生誕100周年に合わせ、バーンスタイン作品を中心に、ストラヴィンスキーからブラジル音楽まで、アメリカと何らかの関わりがある幅広い分野を網羅した。伸びが良く、透明度の高い、テンション感の高いソプラノだ。将来の成長を期待させる逸材であることが、本ハイレゾで雄弁に語られる。センター音像のボリュームは、背景のオーケストラときれいにバランスしている。11曲目、フォスターお馴染みの「金髪のジェニー」は、アメリカ人であることのアイデンティティが感じられる深い共感性が聴けた。

FLAC:96kHz/24bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music

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