『Debussy: Suite bergamasque, L. 75, 3. Clair de lune』
アリス=紗良・オット

これまでショパン、ベートーヴェン、グリークがメインだったアリス=紗良・オットの、ドビュッシーを中心にしたフランス曲集『ナイトフォール』からの一曲だけ先行配信。2年ぶりの新作は、アリス初のフランスもの小品集。本「月の光」を始め、「夢想」「ジムノペディ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」〉といった、フランスピアノ名曲のメジャーな楽曲が収録されている。「ナイトフォール」とは、日没直後の時間。妖精が目覚める昼と夜の間の不思議の時。「マジックアワー」という言い方もある。
今年はドビュッシー没後100周年だから、たくさんのドビュッシーものがリリースされているが、ドビュッシーの優しく、ファンタジックな側面を捉えた演奏が多い中で、アリスは、前進的で、逞しく、明確な音造形で、ワン・アンド・オンリーの独特のアリス・ドビュシー世界を構築している。単にスウィートなだけでなく、しっかりとした構造が曲にはあることを目覚めさせてくれる名演だ。
渋谷のタカギクラヴィア松濤サロンで開かれた新譜コンベンションの席上、「月の光」について、「曲はロマンティックだが、元になったヴェルレーヌの同名の詩を読むと、人間の二面性や心の葛藤の意もあった」と語っていた。録音も良い。写真は筆者撮影。2018年3月、ベルリンで録音。
FLAC:96kHz/24bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music

配信限定で一曲のみリリース。前回のロニー・スコッツライブでは、いかにも会場で聴いているようなPA的な濃密な音調だったが、スタジオ収録の本作は、ひじょうに丁寧な職人芸を堪能できる。パーソネルはブライアン・ブレイド(ds)、クリス・トーマス(b)、ピート・レム(org)、デイヴ・ガイ(tp)、レオン・ミッチェルズ(ts)と編成はシンプルだが、ヴォーカルも含めて、音像情報は明確。ヴォーカルと各楽器のボディ感は豊潤だ。音像的ににヴォーカルがかなり大きく、感情感、ニュアンス感はたいへんリッチだ。ハイレゾらしく、上質なディテール感と輪郭感が素晴らしい。
FLAC:96kHz/24bit
Capitol Records、e-onkyo music

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