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VR用グローブ型コントローラーがビジネス向けに登場、その実力やいかに

2018年07月26日 13時00分更新

文● Mogura VR

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 アユートとProjectWhiteは、都内でVR用グローブ型コントローラー Noitom 「Hi5 VR Glove BE」の開発者向け発表会を開催した。

 「Hi5 VR Glove」(以下、Hi5)は、VRで課題の1つとなっている「指の動き」を再現するグローブ型のコントローラーだ。HTC ViveなどのPC向けVRヘッドセットと組み合わせることで、指先1本1本の動きもVRに反映することが可能になる。

 HTC VvieやOculus Rift、Windows MRヘッドセットといったハイエンドなVRヘッドセットに標準付属するコントローラーでは、「物をつかむ」などの動作はコントローラーの裏面にあるトリガーボタンでする。この動作は現実に物をつかむ動きと似ているものの、若干異なっている。指の動きの再現はある意味「次の段階」のVRの実現でもある。

モーションキャプチャーデバイスで有名なNoitomが繰り出すVR用グローブ

 Hi5は、Noitom社が開発・製造している。国内代理店をアユートが担当し、ProjectWhiteが展開するPCショップ・ツクモで販売する。今回発売が発表されたのはビジネス版。7月18日(水)から数量限定で開発者向けに先行販売する。開発用のSDKはUnityとUnreal Engine 4に両対応だ。

 Noitomというメーカーはあまり知られていないが、全身をモーションキャプチャーするデバイス「Perception Neuron」を開発した会社だと言うとピンとくる人がいるかもしれない。数百万円する専用スーツやシステムを使わないとモーションキャプチャーができなかった中、20万円程度で全身のモーションキャプチャーを可能にするデバイスで、そのハードルを一気に下げたデバイスだ。Perception NeuronはバーチャルYouTuberでも多数使われており、昨今のブームに一役買っていることは間違いない。

 Hi5は一言で言ってしまうと、Perception Neuronの手の部分を取り出し、進化させて単独で製品化したようなデバイスだ。グローブの中に埋め込まれたIMU(Inertial Measurement Unit、慣性計測装置)にはジャイロセンサーや加速度センサー、磁気センサーが組み込まれており、指の動きを反映する。

グローブとPCは専用ドングルで無線接続し、手首のあたりに振動フィードバックのための振動子が組み込まれている。

 ここからはアユートの担当、青木氏による発表からHi5の詳細を見ていきたい。青木氏は、スペック表を示した後にHi5の6つの特長について語った。ひとつずつ紹介していこう。

1.バッテリーではなく乾電池

 バッテリーの充電が必要になると、長時間の連続使用が困難となるため、Hi5では乾電池を使っている。連続使用時間は約3時間とのこと。1日中使うときなどは乾電池の交換で済むのは便利そうだ。

2.低遅延

 VRで重要になるのがレイテンシー(遅延)だ。指を動かしても、VRの中での動きにタイムラグを感じるようだとせっかく高精度だとしても体験の質が下がってしまう。Hi5は無線接続ながら、5msミリ秒未満と非常に忠実な反映だ。体感ではレイテンシーを感じないレベルにまで低遅延を追求している。

3.素材

 Hi5は肌に直接触れるため、他のコントローラー以上に気になるのが素材だ。ごわごわしたり、あまりに「装着している」感覚が強いと、せっかく指の動きを自然に反映できるデバイスなのに違和感が生じてしまう。

 Hi5では、柔らかで伸縮性があり、つけ外しが容易で、なおかつ耐久性のある素材を採用している。特に最初は爪が引っかかるなどしてすぐに破れてしまうため、耐久性に関してはメーカーでの試行錯誤が続いたようだ。青木氏いわく「発売までに時間がかかったのは素材に最後までこだわったから」とのこと。非常につけ心地の良い素材が採用されている。

4.振動フィードバック

 Perception Neuronでは搭載されていなかった機能として、Hi5には振動フィードバックが搭載されている。とはいえ、手首の部分に1つ振動子が搭載されているのみ。指先には埋め込まれていないため、物の触感を全て再現するような機構ではなく、ぶつかった時などの接触を表現するためのものと言えそうだ。

5.指を5本ともトラッキング

 Hi5では、各指にIMUが組み込まれており5本の指をトラッキング可能だ。指の細やかな動きも再現できる。なお、すでにHi5を実験導入していた合同会社ライブカートゥーンの佐々木崇之氏によると、親指に関しては調整が必要な場合が多いとのこと。また、指と指同士の間を開く動作は苦手だそうだ。

6.Viveトラッカーとの連動

 手首の部分には、HTCのViveトラッカーを固定するためのネジ穴が付属している。このトラッカーをつけることで、HTC Viveと組み合わせて手をVRで自在に動かすことができるようになる。

 なお、Viveトラッカーは世界的に品薄の状態が続いている。メーカーではViveコントローラーをアタッチできるパーツも開発を進めており、アユートによると国内販売予定とのこと。トラッカーが手に入らない場合も手元のコントローラーで代用できるようになりそうだ。

 気になる価格は左右両手セットで14万9800円(税込)。サイズはXSとSMサイズの2種類が販売。Lサイズは「欧米向けサイズでかなり大きく、生産も少ない」ため、日本国内では取り扱いがない。ビジネス版という名称の通り、個人利用というよりは法人利用を想定としている。

実機を体験、自然に動く指

 発表会では実際に実機を体験することができた。まずキャリブレーションは2種類。あっという間に終わり、すぐ使用可能になる。

 感想としては、「ある程度、問題なく手と指が動く」といったところ。メーカーがうたうように遅延は感じられず、指を使った操作ができる。動きはとても自然なので、指でつまんでモノをつかむ動作にも問題は感じられなかった。一方、すでに言及されていた「指の間を開く動作」はイマイチ認識しなかったり、指を組むモーションに関してはズレるので全てが完璧というわけではない。

 トラッカーと組み合わせることで、たとえば身体の後ろに手を回しても物をとることができるなど、「視界の外」で操作できる点も特長だ。

VTuberに使えるかというと……?

 なお、VR用グローブというと、モーションキャプチャーに利用し、最近流行りのVTuberなどにも使えるのではないかと考える人もいるのではないだろうか。

 確かに前述した通り、Perception Neuronはよく使われている。アユートに尋ねてみたところ、「まずはコントローラーとしての用途を想定している」との答えが返ってきた。確かにHi5とHTC Viveだけで腕の動きを取得できるわけではない。Perception NeuronとIMUの配置は同じ、ということは取得できるセンサーデータに違いはなく、Perception Neuronを購入したほうが腕など全身または上半身のモーションをとれる。もしHi5を活かすとしたら、IKINEMA社のOrionなどのモーションキャプチャーシステムと組み合わせることで使えるようになるだろう。

 コントローラーの使用という側面では、発表会で登壇したDVERSE Inc. のCEO・沼倉正吾氏は、「グローブ型コントローラーは色々試したが、Hi5は精度が高いことから採用している」とHi5を評価。同社が提供する建築業界向けのツール「Synmetry Alpha」では、「B2Bのお客様向けに、指のジェスチャをショートカットのように使っていただいている」とのこと。

DVERSE Inc. CEO・沼倉正吾氏

 また、懸念として「磁場」がある。Noitomの製品に特徴的なのが、高精度なセンシングをするための磁気センサーだ。このセンサーは使用する場所の磁場の影響を受けて数値が乱れてしまう恐れがある。日本では鉄筋コンクリートの建物も多く、磁場が発生していることも多い。Noitomは「Neuronと比べ、磁気に強くなった」とのコメントもあると話した。

 また、センサーが磁気の影響を受けた際に、装着した状態で「磁気除去」ができる。アユートとしては購入前にできる限りサポートはしたいとのこと。使用場所の磁場に関しては、スマートフォンアプリなどでチェックをしておいたほうが良さそうだ。

 Hi5は現在ツクモの法人営業所にて問い合わせを受付中だ。VRでの操作に悩んでいる人はチェックしてみてもいいかもしれない。

札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の営業所で取り扱い中とのことだ

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