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音環境にこだわり防音室やマイクスピーカーを設置、2020年に全国500カ所設置を目指す

スペイシー、ヤマハらと「声の出せる」貸サテライトオフィス実証実験

2018年05月21日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 オンライン貸会議室予約サービスのスペイシー(Spacee)が、「日本版モダンワークプレイス」のビジネスモデルを検証する共同実証実験を開始した。ヤマハや日本マイクロソフトの協力を得て、外出先でも遠隔の相手と「声を出して」コミュニケーションができるサテライトオフィスの提供サービスに取り組む。2018年5月18日には東京・新橋のワークスペースで、記者向けの体験会が開催された。

ヤマハの組立型防音室を採用した「日本版モダンワークプレイス(ボックス型)」(写真は1.5畳サイズ)。利用料金は1時間500円から

スペイシー 執行役員 武田正史氏

 スペイシーは、街中にある不動産の遊休スペースを活用した貸会議室やレンタルスペースをオンライン検索/予約/決済サービスを提供するスタートアップだ。

 会議室は1時間500円から、個人作業/学習向けのワークスペース(貸デスク)は30分50円からという低料金を実現。オンラインプラットフォーム「Spacee」を通じて検索から予約まで数分で済み、直前でも予約のできる簡便さも受けており、創立5年目の現在、掲載会議室数は全国約4000室、会員数は12万人を超える。月に1万4000~1万6000件の予約があり、ユーザーのおよそ40%がリピーターになるという。また、スペースの貸主側はスペイシーのサイトに無料掲載ができ(成約手数料モデル)、「だれでも会議室」サービスを通じて什器やスマートロックの提供、清掃作業などの運営代行も受けられる。

会議室/ワークスペースを1分で検索/予約できる「Spacee」

 スペイシー 執行役員の武田正史氏は、同社のサービスコンセプトはビジネスマンに対する「適切なワークスペースの提供」だと説明した。社外で重要度の高い打ち合わせを行う場合、これまでは高価で予約の必要な貸会議室か、安価だが席の確保や会話の機密性などに難のあるカフェ/ファミリーレストランか、といった選択肢しかなかった。ここに格安の打ち合わせスペースを提供することで、新たな市場を創出するというのがスペイシーの狙いだ。

 「『働き方改革』と言われる中で、(リモートワークを行うための)通信環境やモバイルデバイス、ソフトウェアといったものの環境は整ってきたが、結局『働くのに適した場所』がない、というのが現在の課題だと考えている」(武田氏)

「ワークスペースの最大提供会社になる」のがスペイシーのビジョン。ユニークなところでは平日昼間の「フーターズ」をワークスペースとして利用できるサービスも

 今回の日本版モダンワークプレイス実証実験は、こうしたスペイシーの取り組みの延長線上にあるものとなる。具体的には、ビジネスマンが個人でも気軽に使えるサテライトオフィスを駅ナカやオフィスビルのロビーといった公共スペース、あるいはシェアオフィスやコワーキングスペースなどに設置/提供するというもの。貸会議室と同じように、Spacee会員がオンラインで予約/利用できる仕組みとする。

 従来の個人向けワークスペース(貸デスク)提供と異なるのは、「声を出して」コミュニケーションができる環境を用意することで、「Skype for Business」などを使った遠隔とのビデオ通話や少人数のミーティングを可能にする点だ。そのために、ヤマハが提供する組立型防音室や調音パネル、マイクスピーカー「YVC-1000MS」、スピーチプライバシーシステム「VSP-1」などを設置する。

Skype for Business認定を受けたマイクスピーカー「YVC-1000MS」を設置し、クリアな音声でのコミュニケーションを可能にする

 防音室(不燃ユニット)は1.5畳~3畳サイズ。楽器演奏用と同等の防音性能で会話内容の機密を守るのと同時に、業務に集中しやすい環境を作る。また、防音室ではなく通常の会議室を利用するオープン型スペースの場合も、自然な環境音を発することで第三者が会話内容を聞き取りにくくするスピーチプライバシーシステムを設置する。いずれの場合も、PCに接続して明瞭な音声でビデオ通話ができるマイクスピーカーが利用できる。

ヤマハによると防音性能は「ピアノ用防音室と同じ」。音環境にこだわり、室内の反響音を調整する調音板も設置

 今回の実証実験では、スペイシーが運営する東京・新橋駅前ビルのレンタルワークスペースと京都リサーチパークのロビーに設置した防音室、大阪駅前ビルの会議室を、上述した設備を備えるモダンワークプレイスとして貸し出し、利用ニーズやユーザーの声などを検証していく。

 実証実験の結果をふまえ、スペイシーではこの新しいワークスペースを全国主要都市へ展開していく計画で、「2020年に全国500カ所設置」という目標を掲げている。すでに貸会議室においてスマートロックや利用者の顔認証、清掃代行などによる無人運用(省力化)を実現しており、そうしたノウハウがそのまま生かせると武田氏は説明した。

実証実験はすでにスタートしている。武田氏によると「静かな環境で集中して作業がしたい」と、1回あたり2時間程度利用するユーザーが多いという

 またヤマハ 音響事業本部 事業統括部 SN事業推進部 国内営業グループ 主事の花村洋一郎氏は、日本におけるリモートワークはまだメールのチェックや書類作成といった業務にとどまっており「声を出して会話、議論する業務までには至っていない」と指摘。今回のモダンワークプレイスでその障壁を解消し、リモートワークでできる業務の幅を広げていくことへの期待を示した。

 同実証実験はすでに5月7日からスタートしており、Spacee会員ならば誰でも利用可能。花村氏は、リモートワークの議論が盛り上がる7月の「テレワーク月間」を前に、一度ユーザーの声などをレビューしたいと語った。

 「今回の取り組みを通じて、良い面も悪い面も知りたいと思っている。まずはやってみようということで、スモールスタートした」(花村氏)

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