内部構造はシンプルなようで実はとても複雑
KSE1200は本体がコンパクトになって、入力ソースがアナログ音声に絞られたぶん構造がシンプルになっているのかと思えば、本当はその真逆なのだという。サリバン氏の説明を聞いてみよう。
サリバン氏:外観がコンパクトで、アナログ入力端子を1系統しか持たせていないのでシンプルに見えるかもしれませんが、実際にはKSE1500と同じ10層構造の基板を、より小さなフットプリントに納めるために内部は非常に複雑な構造になっています。基板のレイアウトは再びイチから起こしています。
例えばオーディオ信号の入力回路と、音声信号に高い電圧をかけてイヤフォンへ出力するための回路は別々に設けていますが、それぞれが隣り合っているため、基板のサイズが小さくなるほど、出力側の回路が他の部分へ与えるノイズの影響を回避することが極めて難しくなります。ここが基板を10層ものレイヤー構造にしなければならなかった最大の理由です。KSE1500に比べるとディスプレイを取り払ったぶん、内部のノイズ制御が幾分かは楽になりました。
ーーKSE1500では3種類あったゲイン設定(=入力パッド)が、KSE1200では2つに絞られていますね。
サリバン氏:KSE1500に搭載されている「-20」を利用しているユーザーがほとんどいなかったからです。そもそも-20dBはプロフェッショナルが放送機器とKSE1500をつないで使うことを想定して設けたものなので、コンシューマー製品で使う機会はもともとないだろうと考えていました。不必要なものはなるべく省いた方が回路をシンプルにできるし、音質的なメリットも得られます。また価格を抑えるためにも必要な選択でした。
ーーふたつのKSEシリーズに音質の違いはありますか。
エングストローム氏:まったく一緒です。イヤフォン部も同じものになります。もし今回イヤフォンも新規に開発していたら、KSE1500の発表から約2年半のインターバルではとてもお披露目できていないと思いますよ(笑)。
KSE1200はフラグシップモデルの音をより手軽に、多くの方に楽しんでもらうために開発したイヤフォンシステムなので、音質もまったく同じものに仕上げています。ただ、ボリューム回路はKSE1500の方が段階的に切り替わるデジタル方式だったのに対して、KSE1200ではリニアに増減するアナログ方式に変更されています。そのためボリューム設定の際にわずかな手応えの差が感じられるかもしれません。でもこれは音のチューニングそのものに手を加えたわけではありません。
ーーKSE1200のアンプを単品販売する計画はありますか。
エングストローム氏:やはりそこが気になりますか?私たちもヘッドホン祭りでKSE1200を発表して、KSE1500のオーナーの皆様からアンプの単品販売を望む声を、正直に言って想定以上に多くいただいたことに驚いています。
サリバン氏:繰り返しになりますが、KSE1200はシュアの静電型イヤフォンシステムの音を多くの方々に楽しんでもらうことを目指した製品です。でももし、新しい製品が既存オーナーの皆様にも魅力的に感じられるものであるならば、アンプの単品販売も含めて今後の検討課題にしたいと思います。
ーーカラーバリエーションは考えていますか。
エングストローム氏:今のところ予定にはありません。もしKSEシリーズが飛ぶように売れたら、限定モデルも含めて考える必要がありそうですね。例えばピンクの水玉模様の「ショーン・リミテッド」とか(笑)。
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