「NAVER」というポータルサイトをご存知ですか?
多数の方は「NAVERまとめのこと? NAVERのポータルサイトってあるの?」ってなったと思います。既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、NAVERは韓国を代表するYahoo!、Googleのような検索エンジンです。
最近は「NAVERまとめ」で知られているNAVERですが、実は2000年代の前半には日本にも「NAVER」というポータルサイトがありました。日本では2005年には検索エンジンとしてのサービスを一旦終了、2010年に検索事業の再開をしたものの、残念ながら2013年に検索サービスは再度終了し、現在は「NAVERまとめ(運営はNAVERの子会社のLINE株式会社)」のみサービスを提供しています。
日本で検索エンジンとしてのサービスを終了しているNAVERですが、韓国でのNAVERは圧倒的な検索エンジンシェアを持つ巨大なポータルサイトです。実は、韓国国内で10人中の8人がNAVERを使って検索を行っていると言われています。
NAVERは利用者数が多い分広告市場に与えている影響も強力です。2016年の韓国の広告費用に関するある調査では、NAVERの広告費用が韓国の地上波テレビ局3社(KBS、MBC、SBS)と新聞広告の告費用を上回ったという結果も出るくらいです。これは、割合で換算すると、韓国の全体広告費用の20%がNAVERのシェアだという恐ろしい結果になります。周りの人のほとんどがYahoo!、GoogleではないNAVERを使っている光景、ご想像できますか?
似たようで似ていない違う文化を持つ韓国と日本。今回は隣の国、韓国のWeb事情についてこの「NAVER」を中心にお話ししてみようと思います。
※参考:朝鮮日報、2017年1月13日、「国内広告20%のシェア、NAVER」
韓国の検索エンジンシェア:1位NAVER、2位Google、Yahoo!はサービス撤退
日本の検索エンジンシェア1位、2位を争うGoogleとYahoo!、韓国での事情はどうでしょうか。一言でいうと、Googleはまだ成長中、Yahoo!はとっくにサービス撤退です。韓国のニールセン・コリアンクリック2016年の調査データを見ると、韓国ではNAVERの利用率が全体の約74%でもっとも高く、Googleの利用率は約10%でNAVERより低いです。
参考:Debunking the Korean Search Engine Market Share in 2017 | The Egg – Since 1998
※コリアンクリックのデータは一般向けには公開されていないため、韓国内の検索エンジンシェアに関して言及しているthe egg社の記事を参考ください
ただ、筆者の肌感覚にはなりますが、NAVERは少し停滞、GoogleはYouTubeやGoogle Playの利用者が増えている事によって、成長してきているように見えます。
一方、Yahoo!は2012年をもって韓国でのサービスを終了、Yahoo! KOREAの法人自体を撤退しました。そうです。韓国にYahoo!はありません。当時Yahoo! KOREAで働いていた人たちはYahoo! KOREAが韓国から撤退するということをマスコミの報道を通じて知ったそうです。
その時に筆者はまだ学生でしたが、友達と「Yahoo! メールってもう使えないの?!」って騒いでいた覚えがあります。実際に当時使っていたYahoo! KOREAメールはYahoo! USに吸収され、アカウントの移転申請をしないとデータがなくなるという悲劇(?)がありました。移転申請に間に合わなかった筆者のメールも当然知らぬ間に無くなっていました(私の思い出が…)。
韓国NAVERの特徴
アメリカ、ヨーロッパを中心とするほとんどの国で圧倒的な検索エンジンのシェアを持つGoogleですが、いくつかの国ではローカルの検索エンジンに苦戦しています。韓国ではNAVERがトップですが、他国だと中国ではBaidu、ロシアではYandexがトップといった例があります。
韓国のWebはNAVERを中心に独自の進化を遂げています。NAVERは韓国、韓国人だけに特化されているため韓国の国内では強い影響力を持ちますが、韓国人だけに特化しているため韓国語の文化圏以外の圏域では通用されないという課題を抱えています。
※参照:2012、Yahoo!! が韓国からの完全撤退を発表! シェア率で韓国サイトに完敗 / 韓国IT業界「Yahoo!のおごりが原因」
韓国のNAVERは日本のYahoo! JAPANのようなイメージの検索ポータルです。メイン画面にはニュースを始めた多くのコンテンツが出てくるのでWebへの知識や特別な能力がなくても様々な情報ページを閲覧することができます。NAVERは独自のコンテンツを多く持っていて、検索結果の28%のみ外部のリンクに誘導し、残りの72%はNAVER内の独自のコンテンツページにユーザーを誘導します。
※NAVER独自コンテンツ:NAVER知識IN(Yahoo!知恵袋のようなサービス)、NAVERニュース、NAVERブログ、カフェと言われるNAVER内のコミュニティなど
要するに、NAVERはユーザーの動きをNAVER内のコンテンツに留めておき、一定のトラフィックを維持しているので常に有効なトラフィックを確保できるという特徴があります。NAVERが広告媒体として注目されるようになったきっかけもこの多いトラフィックにあります。スマートフォンが普及されてからそのトラフィックはさらに増加しているそうです。
※参照:Media Today, 2012 「NAVERの独占について語る」
韓国の検索連動型広告ClickChoice、そしてSEO:検索広告枠は10個以上、SEOはあまり有効ではない
デスクトップ画面を基準で考えると、日本のYahoo!、Googleの検索結果ページには通常3~4つの検索広告か表示されます。
一方、韓国のNAVER、DAUMの検索結果にはファーストページだけでも10の検索広告が表示されます。表示される広告は15までで、広告のランクが高い広告の1位~10位が画面のファーストページに表示されます。
ところでオーガニック検索結果ですが、韓国にはオーガニック検索結果がないとも言われているくらいページ内ですぐ見当たりません。実は、韓国にも「Webドキュメント」と呼ばれるオーガニック検索結果がありますが、常にほかのコンテンツに埋もれていて画面ですぐ見当たらないので、あまり意味のない仕組みになっています。
最近は、Googleの検索エンジンシェアが上昇することにつれてGoogleでのSEOがやっと注目をされ始めているようです。しかし、まだGoogleの検索エンジンシェアは低いのが現状で、韓国国内の検索エンジンが占めているシェアが圧倒的に高いので、SEOはほとんど通用していません…。
こういった理由で韓国のWebマーケティングで主流になっているのは、検索広告です。その中でも検索エンジンシェアが圧倒的に高いNAVERの検索広告であるClickChoiceが主流になっています。
NAVER ClickChoiceの特徴、掲載ポリシーに注意!
- マッチタイプ、「完全一致」しかない
NAVERの検索広告では、登録するキーワードで使えるマッチタイプが「完全一致」のみです。また、登録したキーワードが拡張されないので、見込みの高いユーザーが検索しそうな語句を細かく把握し、登録する必要があります。
2017年4月から完全一致のキーワードで登録し、キーワードを拡張させるか、させないかが選択できる機能が追加されましたが、細かいキーワードの登録が必要なことには、変わりなさそうです。 - サイトで販売している商品、サービスと直接関係のないキーワードは登録NG
例えば、メンズファッションサイトの場合、「ワンピース レディース」のようなキーワードの登録はNGとなります。 - 広告文内の登録キーワードの活用、回数に制限あり
タイトルには最大1回まで、説明文には最大2回まで記載可能です。 - 店舗広告で地名を含むキーワードと店舗の所在地が一致しない場合、広告文にキーワードに含まれた地域から店舗の所在地が分かるような表現を記載しないといけない
広告主体がアナグラムで、登録キーワードが「中目黒 リスティング広告」だとした場合、広告文には「中目黒から徒歩7分…」といったように店舗の所在地が分かるような表現が必要になります。 - 広告文内の「業界NO.1」、「100%保証」のような記載をためには、事実に関するサイト内の記載が必要
事実に関する記載がない場合はNAVERへの関連書類の提出が必要で、提出がない場合は広告審査が不承認になります。 - 検索広告で使われる広告文の文字数、タイトルは15文字まで、説明文は45文字(スペース含めて)まで
韓国の検索広告で登録できる広告文は、「タイトル」、「説明文」の2行の構成です。文字数に制限があるのは、日本の検索広告と同じです。
韓国の検索広告で使える文字数は日本の検索広告より少ないので、検索するユーザーに訴求したいサービス内容、サービスのメリットをより簡潔に伝えることが必要です。
ページに表示される広告の数も日本より多いので、競合他社と差別化できるサービスのメリットを記載し、ユーザーがクリックしたくなる広告文を作ることが重要です。一般的には、価格訴求が使われることが多いです。
価格訴求の代表的な記載例
- 価格情報:“国内最安価格”、“業界最安“
- 割引情報:“今なら50%オフ”、“半額セール中”、“特別価格”
- 限定キャンペーン情報:“●月▲日まで限定販売”、“限定プレゼントキャンペーン”、“今なら無料でもらえる“
最近は訴求内容が「価格訴求」に偏る傾向があり、似たような訴求内容が多い分、もっと上位掲載しなきゃ!という入札競争が激しくなっています。広告を出稿する側としてはコスト負担がますます増えていく一方という状況が続いている状況です。こういった現状から韓国の中小企業の経営陣は最近苦しみを訴えることが多くなっているそうです。
※参照:「NAVER、検索広告の独占に中小企業の経営陣は泣く」、ヘラルド経済ニュース、2017年9月21日
韓国でのビジネス展開、ブログの活用を考えてみよう!
外国人観光客でにぎやかな日本、日本人より外国人がひときわ多く並んでいるお店を見かけたことはありますでしょうか? 国によって旅行先の情報を検索する方法は様々な方法があると思いますが、韓国のユーザーは「ブログ」で情報を探す人が多いです。韓国の人が多く並ぶお店には1つ共通点があり、それは韓国のどこかのブログに書かれている可能性が高いということです。
韓国では、「バイラルマーケティング」と呼ばれる口コミマーケティングが流行しており、最近は旅行情報をはじめ、グルメ、コスメなどの様々な情報がブログから拡散されています。NAVERの様々なサービスの中でも「NAVERブログ」の利用率が最も高いと言われるくらいです。実際に検索する内容によっては、検索結果の上部に表示されるカテゴリーが異なります。
情報が求められる検索には「ブログ」のカテゴリーが検索結果ページの上部に表示され、ビジネスに関連性の高い検索には検索広告が結果画面の上部に表示されます。
日本のユーザーも同じですが、ユーザーはWeb上でアクションを起こす前に様々な情報を集めます。
韓国は口コミマーケティングが流行っていて、ブログを使った情報の検索が活発に行われます。特に、あまり知られていない海外からの商材の場合、事前に使った人の体験談を求めてブログ上で情報を探す人が多くなる傾向があります。なので、もし韓国のWebでビジネスの展開しようと考えている方がいらっしゃれば、NAVERブログを活用して情報を発信していくことがオススメです。
韓国のビジネス展開にNAVERブログを活用している日本企業の例
上記の例は、いずれも訪日外国人向けゲストハウスやシェアハウスに関するになりますが、韓国国内でのビジネスだけではなく、日本国内へのインバウンド需要へのアプローチももちろんできます。
NAVER検索広告:パワーコンテンツの活用でブログに集客
NAVERには、検索広告に続いて表示される「パワーコンテンツ」と呼ばれる広告枠があります。日本で言うと、NAVERのBlogを活用して出稿するコンテンツマーケティングのようなイメージです。
通常の「検索広告」がビジネスの成果(購入、申し込み、資料請求など)にすぐ繋がる可能性が高いユーザーを狙うとしたら、「パワーコンテンツ」広告は、購入の手前で情報を収集しているユーザーを狙うのが特徴です。成果にすぐはつながらなくても、商品やサービスに対する信頼感や好感を高めることができるということで、2017年に入ってから韓国で注目を集めている広告です。
「パワーコンテンツ」の出稿は、NAVERが決めている一定の投稿ルールを守り、ブログに内容を投稿することで出稿が可能です。
もちろん広告なので、NAVER側のコンテンツ審査が必要で、審査に通れば配信が可能です。ただ、配信に1つ制限があり、それはNAVER側で指定しているキーワードにしか、広告の出稿ができないということです。
通常の検索広告に比べて限られた検索の需要にしか広告の出稿ができませんが、情報を求めているユーザーには広くアプローチすることができるので、成果まで検討機関が長かったり、口コミ情報に影響されやすかったりする商材の場合には、ブログを活用して出稿を検討してみるのも良いかも知れません。
パワーコンテンツで利用できるキーワードの例
- 情報型検索の例:「二泊三日の台湾旅行」「ノートパソコンの修理」「ホームページ制作」など
- 商品型検索の例:「掃除機」「水着 メンズ」など
指定されているキーワードへの出稿が多い場合、出稿が制限されるので事前に出稿可能なキーワードを把握することが重要です。
希望するキーワードで出稿が可能なのかは、NAVERページで確認可能です。
※参照:NAVER、コンテンツ検索広告(パワーコンテンツ型)
宣伝したい内容により異なるパワーコンテンツの投稿規定
- 情報・サービスの宣伝(情報型)
広告主の情報、情報・サービスの内容、宣伝内容のリンクURLを記載する - 商品の宣伝(商品型)
広告主の情報、宣伝したい商品の口コミや体験内容を記載する
NAVER検索広告のサービス概要
最低入札単価である70ウォンは日本円にして約7円(2018年2月23日レート基準)です。
最後に
以上、NAVERを中心とした韓国のWeb事情でした。
韓国のWebは独自の進化を遂げているので、Yahoo!、Googleに慣れている方には未知の世界になるかも知れません。
ただ、韓国での圧倒的な利用者数を持っているNAVERなので、NAVER広告の仕組みを理解すれば、韓国Web人口の7割以上を攻略することができます。もし韓国への出稿をご検討されている方がいらっしゃればNAVERを中心とする韓国の検索環境に目を向けてみてください。
※この記事は「知っているようで知らない韓国のサーチエンジンマーケティング事情」の転載です。
タイトルおよびリード文はWPJ編集部によるものです。