ベンチマークソフトで実力をチェック

性能低くても問題ない 指でつまめる超小型PCがキビキビ動く

文●宮里圭介 編集●八尋/ASCII

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「MousePro-C100PV」

 マウスコンピューターの指でつまめるほど小型なパソコン「MousePro-C100PV」。前回は、外観や使い勝手について紹介した。

 重たいソフトを動かして実用性がない、というのはこの手のパソコンにはナンセンス。そこで、しばらくブラウザーをメインとしたちょっとした情報端末代わりに使ってみたのだが、これが意外と快適。

 スペックは低いハズなのだが、よくある激安タブレットやスティックPCと比べるとレスポンスがよく、キビキビと動く印象があるのだ。メモリーが4GBあるというのが大きいのだろうが、これ以外にもヒミツがありそうだ。そこで、いくつかのベンチマークソフトを使って実力を調べてみた。

 MousePro-C100PVのCPUは「Celeron N3350」。バースト時は2.4GHzまで動作クロックが上昇するとはいえ、2コア2スレッドCPUということもあり、4コア4スレッドCPUとなるCherry TrailのAtomと比べると、スペック上はかなり見劣りしてしまう。

 しかし、Celeron N3350は設計の異なるApollo Lakeとなるだけに、単純なコア数や動作クロックだけで性能を比べるのは意味がない。そこでCGのレンダリングでCPU性能を測るベンチマークソフトの「CINEBENCH R15」を使い、CPUの実力を測ってみた。まずはCeleron N3350の結果を見てみよう。

CPUで84cb。一般的なPCのスコアを見慣れた読者だと、桁違いに低いスコアに驚くかもしれないが、これがCeleron N3350の実力だ

 Celeron N3350のCPUスコアは、84cb。このスコアがどのくらいの性能かというと、ハイスペックデスクトップで採用される「Core i7-7700K」の性能が970cb前後といえばわかってもらえるだろうか。動画や画像編集といった重たいソフトを動かすのに、Celeron N3350では力不足だというのも納得がいくだろう。

 とはいえ、ブラウザーやオフィスソフトを使うのに、Core i7-7700Kのような高速な(そして高価な)CPUは必要ない。こういった用途では、むしろ低価格なCeleron N3350でも十分なことがほとんどだ。

 では、ブラウザーやオフィスソフトをメインで使うような軽い用途に向いているCPUの中では、どのくらいの性能となるのだろうか。ちょうど手元のデータとして、激安タブレットやモバイルノートで利用されることが多い「Atom x5-Z8350」、性能重視の2in1モバイルノートで使われる「Core i7-7Y75」、一般的なノートPCで広く採用されている「Core i7-7500U」のベンチ結果があったので、これらと比べてみよう。

Celeron N3350の実力は、Atom x5-Z8350よりも下。とはいえ、コア数で倍あるAtomに肉薄しているのは立派だといえる

 Celeron N3350の性能は、実はAtomよりも低いという結果だ。とはいえコア当たりの性能が高いようで、コア数に倍の差があるとは思えないほどスコアは近く、かなりがんばっているのがわかるだろう。

 なお、激安タブレットでは熱対策が微妙なものもあり、連続してベンチマークソフトを動かしているとスコアが落ちていく場合があるが、MousePro-C100PVは連続して動かしてもスコアはほとんど変わらず、安定して動作してくれた。このあたり、しっかりしたクーラーが搭載されている証左だろう。なお、ファンの音はそれなりにうるさくなるが、スティックPCと比べれば明らかに静かだ。

 内蔵ストレージとなるeMMCの速度も測っておこう。計測に使ったベンチマークソフトは、定番の「CrystalDiskMark」だ。

ランダムの性能はイマイチ感があるが、シーケンシャル性能はeMMCの中では高速

 SATA接続のSSDならシーケンシャルで500MB/s前後というのが普通なので、それと比べてしまえば遅いのだが、eMMCとしてはかなり高速な部類だ。参考までに、以前レビューしたマウスコンピュータのスティックPC「MS-CH01FV2」の結果と比べてみよう。

32bit版となるうえ、バージョンも異なるのであくまで参考まで。とはいえ、シーケンシャル性能にかなりの差があるのがわかるだろう

 CPUが遅いのにもかかわらず、ブラウザーなど軽いソフトを使う限りは遅さを感じず、キビキビと動く印象があったのは、4GBのメモリーとこのeMMCの速さがあったからだろう。スペックひとつひとつは見劣りしてしまうものの、全体としてのパフォーマンスでみれば、バランスよく整っているといえそうだ。

動画サイトでの視聴で十分な性能を確保

 ベンチの結果も重要だが、もう少し実用的な部分での性能として動画サイトの視聴を試してみよう。いくら動作がキビキビとしていても、CPU性能が低いだけに快適に視聴できるとは限らないため、「Amazonプライムビデオ」(HD)と「YouTube」(4K)とで、どのくらいCPU負荷が高くなるかをチェックしてみた。

 まずはAmazonプライムビデオから。動画品質は「ベスト」にし、画面下の「HD」の文字が白く点灯した後、しばらくしてからCPU負荷を確認した。

CPU負荷は40%前後。Celeron N3350の性能でも再生は余裕で、別のソフトを多少操作しても画面が止まる心配はない

 CPU負荷は十分低く、高くても50%程度。ほとんどが40%前後で収まっている。これなら動画再生しながら別のウェブページを見て回るといった作業も問題なくできるだろう。もうひとつ、YouTubeを使った4K動画の再生も試してみよう。

CPU負荷が大きく上下し、下は20%から上は100%まで激しく変動。ただし、フレームのドロップはなかった

 さすがにCPU負荷が高くなり、ちょっとなにか別の操作……例えばマウスを動かすだけでもすぐに100%になってしまう。24fpsの4K動画だったこともあり、フレームが欠けることなく再生できていたようだが、さすがに苦しい。再生するにしてもフルHDまでにしておいたほうがいいだろう。

 もうひとつ、ブラウザー上で動作する某艦隊育成シミュレーションゲームもプレーしてみたが、こちらは70%前後だった。たまに100%まで上がることもあったがとくに問題なく遊べた。

リアルタイム情報の表示やテレビ会議用に

 テスト内容がビジネスからは少し離れてしまったが、ブラウザーであれこれと操作する分には十分な性能があるというのはわかってもらえただろう。ビジネス用途なら、ウェブのアクセス状況や売り上げなどのリアルタイムモニターとして、またはデジタルサイネージ、プレゼンに使うプロジェクター用といったように、ちょっとした表示に特化した汎用パソコンとして使うのがよさそうだ。ディスプレーとの接続はHDMIだが、4K出力にも対応しているので、かなり多くの情報を一覧表示できるのもメリットだ。

 このほかウェブカメラを接続し、Skypeなどを使った簡易テレビ会議システムとして使うというのもありだろう。ディスプレーの背面に装着できるVESAマウントも付属しているので、どの用途でもコンパクトにまとめられるのも便利。汎用的に使えるちょっとしたパソコンがほしいというのであれば、導入を検討してみる価値はあるだろう。

試用機の主なスペック
機種名 MousePro-C100PV
CPU Celeron N3350(1.1GHz)
グラフィックス インテル HD グラフィックス 500
メモリー 4GB
ストレージ 64GB eMMC
内蔵ドライブ
ディスプレー オプション(BTOで選択可能)
通信規格 有線LAN(1000BASE-T)無線LAN(IEEE 802.11a/b/g/n/ac)、Bluetooth 4.0
インターフェース USB 3.0端子、USB 2.0端子、microUSB端子、有線LAN端子、HDMI端子、SDカードスロット
サイズ/重量 およそ幅70×奥行70×高さ34.1mm/約164g
OS Windows 10 Pro(64bit)
価格 4万2984円から