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従来の英語学習法と何が違う?

英語シャワーは遠回り、効率的に第二言語習得メカニズムで学ぶ英語ジム

2017年11月09日 11時00分更新

文● 飯島秀明 編集●飯島恵里子/ASCII 撮影●髙橋 智

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第二言語習得研究とは、どのような学問なのか?

 人が第二言語(母語以外の言語)を習得する過程を、科学的に解明する学問——それが第二言語習得研究(SLA/Second Language Acquisition)だ。基礎的な研究が芽吹いたのは、イギリスやアメリカなどの英語圏である。

 第二言語習得研究(SLA)は、心理学、教育学、応用言語学、脳科学など数多くの研究分野を横断的に繋ぐ学際的な学問であり、日本では、上智大学、早稲田大学、立命館大学などが言語教育の研究科を置いている。

 日本の研究者のなかでも、『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』(マイナビ新書)の著書もある立命館大学 言語教育情報研究科の田浦秀幸教授は、じつは田畑氏の大学院時代の恩師でもある。

 田浦教授の著書でも言及されているが、「人は母語を習得したのと同じプロセスで、第二言語を身に付けることはできない」というのが、第二言語習得研究の基本的な考え方だ。日本人は日本語を習得したのと同じようには、英語を身に付けることができない。どうしても母語である日本語の影響を受けてしまうからだと田畑氏は言う。

 「日本人がLとRを聞き分けられないのは、日本語がその区別を必要としないからです。文法も同じです。日本人は英語で用いる冠詞aとtheの使い分けに苦労しがちですが、これも日本語がその違いを区別していないからです。日本語を習得していく過程で、このように日本語を処理するのに不要な能力がどんどん削ぎ落とされていきます」

 日本語に必要な能力だけが残った状態で、第二言語である英語を身に付けようとすれば、日本語の影響を嫌でも被らざるを得ない。日本語を習得したのと同じプロセスで、英語を身に付けることができない以上、そこには日本語の基盤があることを前提にした英語習得の指導法が求められることになる。

 「人は10歳を超えた辺りから認知能力が上がり、抽象的な思考ができるようになっていきます。文法を覚えたり、文脈が理解できるようになるわけです。この能力を活用しない手はありません。大人が英語を習得する場合、そのような明示的な知識をまずは学んだ方が、英語の音源を大量に聞き流すよりも、よほど効果が期待できます」(田畑氏)

 英語学習の何が苦手なのか、どこで躓いているのかは、英語学習者によって一人一人異なるものだ。しかも、そのうちのほとんどは自分がどこで躓いているのか分からない。英語学習上の課題は極めて個別にして具体的なのだ。

 「文法や語彙の知識はあるのにリスニングが苦手、という人の場合、英語の音から単語を識別する、というステップですでにワーキングメモリーの大部分を使い果たしていることが多くあります。そうなると、なんとか単語を聞き取れたとしても、英文を「理解する」ステップに必要な容量が足りずに、ワーキングメモリーがオーバーフローを起こすことになります」(田畑氏)

 ワーキングメモリーとは、脳の一部領域である前頭前野でおもに処理される短期記憶のことだ。たとえば、暗算するには各数字を一時的に頭に置かなければ計算できない。このように作業を行う際、脳に一時的に保持される記憶がワーキングメモリーだ。保持される時間は数秒から1分程度、作業が終われば綺麗さっぱり消えてしまう。

 母語である日本語の場合、「音を聞き取って個々の単語を認識する」という処理は、ほぼ無意識で行うことができる。しかし英語のリスニングに慣れていない場合は、この段階ですでにワーキングメモリーの大部分を割かなければならない。さらに聞き取った後も、文法知識や背景知識を運用して英文を理解する、というプロセスを踏まなければならないのだ。英語学習者がどの段階でワーキングメモリーの容量を使い切っているのか、見極めなければ適切な指導はできないだろう。

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