アマゾンジャパンが満を持してBtoBネット通販に乗り出した――。アマゾンジャパン合同会社は20日、法人・個人事業社向けの購買専用サイト「Amazon Business」をオープンした。豊富な品揃えや充実させた法人向けの機能を武器に、BtoB通販の市場で新たな法人顧客獲得を目指す。
BtoB通販で商品数がトップに
「Amazon Business」の取り扱い商品数は2億種類以上で、BtoB通販サイトの「モノタロウ」(1000万点以上)、「ASKUL」(373万点以上)、「たのめーる」(15万5000点)、「カウネット」(9万2300点)を抜き、現時点でトップに躍り出た。
他のBtoB通販は、ネットだけでなくカタログを発行しており、FAXや電話など、ネットに接続する環境がなくても注文を受け付けることができるが、「Amazon Business」はネット販売のみ。商品の品揃え、価格の優位性、請求書払い・承認ルール設定などの法人向けの各種機能、迅速な配送サービスなどのメリットを提供し、企業の購買ニーズに応えた新たなサービスとして展開する。
米国では初年度売上高が10億ドルに
「Amazon Business」は、米国で2015年4月にスタートし、16年12月にドイツ、17年4月に英国でも開始し、日本は4カ国目となる。売上高は初年度で10億ドルに達し、利用法人は100万社を超えた。日本でも、多くの法人や社員がAmazon.co.jpを利用して物品を購入していたが、法人専用の機能やサービスがなく、法人ユーザーから法人向けサービスを要望する声が上がっていたという。
こうした声を受け、アマゾンジャパンでも専用サイトを開設することになり、3月からテスト運用を開始。企業の購買担当者からの意見を取り入れ、法人向けの通販サービスとして利便性を高めた。アマゾンジャパン合同会社の星健一ディレクターは会見で、「オフィス、建築現場、飲食店、病院やクリニック、ホテルや宿泊施設、メーカーなどの工場・製造現場、教育機関、研究所、地方自治体を含めた行政機関、農業など、あらゆる事業を営むお客様にアマゾンビジネスを使っていただきたい」と話した。
日本企業向けの法人サービスが充実
「Amazon Business」は、法人・個人事業主(青色申告の事業主)が無料でアカウント登録できる。1つの商品に対して複数の販売事業社の価格が表示されるため、価格比較が簡単で、一部の商品では法人価格や数量割引が適用される。商品ページには、消費者向けサイトと同様に、商品の詳細情報やカスタマーレビューが掲載される。また、「Amazon Business」専任スタッフが電話・メール・チャットで対応するカスタマーサポートを年中無休・9時~18時まで実施する。
主な機能は、月末締め請求書払いや複数の事業社からの購入をまとめることができる「請求書払い」、複数ユーザーの設定や承認権限・下限金額などの設定ができる「承認ルール設定」、社内承認用に見積書がダウンロードできる「見積書作成」、購入日時・品目などから購買レポートが作成できる「購買分析・レポート」、購買クラウドサービスなどとシステム連携ができる「購買システム連携」などがある。
「Amazon Business」で調達・購買にかける時間を節約
米Amazon.comのスティーブ・フレイザー副社長は、「Amazon Business」のユーザーの一例として、シーメンス、ヘンケルなどのグローバルなメーカーや、地元シアトルにあるワシントン大学などの教育機関のほか、さまざまなスタートアップ企業を挙げた。「Amazon Business」が利用される理由としては、「社員が調達・購買にかける時間を節約し、空いた時間を本業に充てることができるから」と語った。また、ドイツやイギリスにサービスを展開した経験から「ローカル企業の声に耳を傾け、各国のニーズを組み合わせることで効果が高いサービスを提供できる」と、各国ごとにカスタマイズしている点を強調した。
日本市場の特徴について星氏は「時間をかけたのは請求書払い。他の国と異なり、日本は1日から31日にかけて発生した請求書をすべて月末でまとめ、次の月末に支払うという仕組みで、大きな違いがあった。また、日本の税制に従い、税抜き価格と税込み価格を表示するようにした」と話した。
BtoB通販では、オフィス向けが主流であったが、最近では、医療・介護、研究所、工場、建設現場など、販売する対象が広がっていた。「Amazon Business」は2億種類の品揃えを武器に、飲食店、ホテルなどの宿泊施設、教育機関、農業など、対象をさらに広げている。Amazonの本格参入で、BtoB通販市場の勢力図が変わる可能性もある。
(山本 剛資)