楽天(株)は11日、地域経済と社会の発展を目的に、広島県神石高原町と農業に関する連携協定を結び、楽天の農業サービス「Rakuten Ragri(ラグリ)」を通じた新規就農者の育成や農業継承の支援サービスを開始すると発表した。「Ragri」が地方自治体と連携するのは、今回が初となり、今後は連携する自治体を全国に広げる。
楽天安藤氏「新規就農者を5年で数万人に」
楽天は4月に子会社の(株)テレファームと、農業サービス「Ragri」を開始。「Ragri」の農作物は、消費者からの注文を受けて生産者が育てる「Ragri CSA」(地域支援型農業の契約栽培サービス)という仕組みで栽培。ユーザーは好みの農家と契約栽培でき、種を植えてから収穫までを「オンライン農園」で楽しめる。また、生産された農作物は産地直送で新鮮なまま届けられる。現在はまだ実験的な取り組みになっているが、30~40代の子どもを持つ主婦層の利用が拡大しているという。今回の取り組みを契機に、利用者の拡大に向けた取り組みも実施する。
今回の連携で、両者は新規就農者を支援する取り組みとして、農地や農業機具を貸し出す「インキュベーションファーム」を設置。農業を開始するハードルを下げ、転職して農家を始めるような感覚で、新規就農者の拡大を目指す。楽天の安藤公二常務は「(今回の取り組みなどで)農業従事者を5年で数万規模にしたい」と目標を語った。楽天の農家の承継問題を支援し、引退した人の農地を賃借するなどの「農家ブリッジ」プロジェクトなどを実施する。今後は神石高原町と同様の取り組みを全国に広げる。
楽天は4日、今回の協定に先駆け、「Ragri」に参加する各生産者の紹介ページやブログを通じた情報発信、消費者と農家間の双方向のコミュニケーションを可能にする新たなプラットフォーム「Ragri コネクト」の提供を開始。また、楽天グループサービスとも連携し、料理レシピ検索サイト「楽天レシピ」に掲載される調理例を「Ragri CSA」で紹介するほか、「楽天市場」に「Ragri」店舗を新設した。「Ragri楽天市場店」では、農作物の詰め合わせセットの販売や、定期購入サービスの提供も予定している。
農業をイノベーションへ
神石高原町は広島県東部の中山間地域で、過疎化や高齢化の進行で担い手農家の育成や、耕作放棄地が430ヘクタール(東京ドーム100個分)に及び、農地の活用が大きな課題となっていた。また、日本の農業は、販路が限られていること、天候などに左右されて収穫が安定せずに収入が不安定であることなど、不安定なビジネスでありながら専門性が高いノウハウが必要で割に合わず、農家は減少を続けている。
「Ragri」はこれらの課題を解決するサービスで、消費者が農家と直接契約することで、農家の月額安定収入を実現。農地や農業設備、ノウハウを提供することで、新規就農者を育成・支援する。「日本の農業を救え!」を合い言葉に、農業をイノベーションする「Ragri」の挑戦が本格的にスタートした。