文化背景の異なる東南アジアは写真の利用が鍵
続いて登壇したサイボウズの鈴木孝充氏は、「数字で見る東南アジア」というタイトルで自身が担当する東南アジアの現状と活動について語った。
2004年入社でガルーンのマーケティングや大手企業の営業マネージャー、パートナーマーケティングなどを担当してきた鈴木氏は、2014年にサイボウズ中国のマーケティング担当に着任。2016年には東南アジアの事業責任者に着任し、アジア諸国を転々としている。「日本から出発して、ベトナムに1週間、インドネシアに1週間といった生活。2016年に乗った国際線の本数は61本で、日本には家がないので、Airbnbで宿泊してる」(鈴木氏)といった転々ぶりだ。
発表時点の東南アジアのkintoneユーザーは130社。動画で披露されたのは、発売後約1年で1500万冊のノートを売り上げたコクヨベトナムの事例だ。東南アジアでは写真が重視されており、「中国もそうですが、文化背景が違う東南アジアでは文字を書いても相手に伝わらない。『ノートをきれいに置いて』と説明するより、このように置いてほしいと写真を送った方が理解が早い」と鈴木氏は語る。
そんな鈴木氏の活動は、ユーザー事例の取材や動画収録のほか、イベントや勉強会への参加、チラシやノベルティの作成、SNSによる情報発信まで多岐に渡る。「東南アジアはノベルティの効果が大きい。おしゃれなTシャツとかを作ると、スタッフもスタバで着てくれる」とは鈴木氏の弁だ。
「400件の問い合わせで成約は0」の理由は?
続いて鈴木氏が出した「9069」の数字は、東南アジアに進出する日本企業の数。9069あるとも言えるが、数から言えばかなり少ない。そして、ユーザーの130社のうち、現地企業の導入は5社だけ。逆に言えば、市場として高いポテンシャルがあると言える。
現地企業の事例として披露されたのはベトナムの車のリース会社で、300台の車と顧客管理をkintoneで実現した。「もともとロシアのソフトを使っていたけどうまくいかず、知人経由でkintoneを知って使ってもらった。顧客となる欧米企業が抜き打ちで検査しても、kintoneで事故履歴や運転者の履歴を見せられるので、あっという間に受注できるらしい。kintoneに出会って、とても幸せだと語ってくれた」と鈴木氏はアピールした。
最近の東南アジアの動向としてはマネージャクラスの給与の高騰があるという。東南アジアでは教育を受けたマネージャクラスの人材がおしなべて少なく、給与が上がっているという。そんな少ないマネージャが効率的に部下の活動を管理するのに、kintoneが向いているというのが鈴木氏の論。「kintoneはこれから全然行けると思います」(鈴木氏)。
一方で、ビジネスとしての壁もある。鈴木氏が挙げた400という数字は、年始にベトナムで行なったローカル広告に対する問い合わせの数。しかし、実際の成約は0だったという。「kintoneを入れたのはいいけど、使い方がわからないという声がほとんど」(鈴木氏)といった理由のほか、言語の問題も大きい。とはいえ、アップデートにより、アプリストアは英語と中国語が記載されるようになっており、今後はアプリストアに表示されるサンプルアプリの言語を自動的に切り替えるようにし、お試し版からの導線を改善していきたいという。