頻繁なアップデートと新機能追加に慣れたモバイルユーザーは気まぐれです。デザイナーや開発者たちは絶えず刷新し続けることを迫られています。
しかしモバイルユーザーは必ずしも「最新の」ものを求めているわけではありません。ここ数年の間に喧伝されて注目を集めたデザイントレンド「会話的インターフェイス」「モーションデザイン」「VR(Virtual reality)/AR(Augmented reality)」は今後も何年かさまざまな形で実装されるでしょう。
モバイルUX(ユーザーエクスペリエンス)の3つのトレンドがなぜ人気を得たのか、どんな問題を解決するのか、なぜ今後もモバイルUXの進化をリードするのか解説します。
モバイルUXが重要な理由
米国の成人の68% 、ミレニアル世代(2000年代に成人する世代)の88%がスマートフォンを保有しています。また、発展途上国のスマートフォン利用は加速度的に増加しつづけています。そして、モバイルしか持っていないネットユーザーの数は、パソコンしか持っていないユーザーの数を超えました。
モバイルが必須になってからかなり経ちますが、今後も変わらないでしょう。パソコンが無くなることはありませんが、主役の座はスマートフォンやタブレットをはじめモバイルデバイスに譲ることになります。つまり、モバイルユーザーの満足度向上に時間と労力をかけることで十分見返りが得られるのです。
まだ腑に落ちませんか?
Experience Dynamicsによる分析によれば、52%のユーザーは「モバイルでサイトの使い勝手が悪ければ将来その企業を利用しなくなるかもしれない」と回答しています。モバイルユーザーの10人中9人は「パフォーマンスが悪いアプリは使うのをやめる」と答え、86%は「パフォーマンスの問題で1つ以上のアプリをアンインストールしたことがある」と回答しています。
ユーザーはコンテンツを閲覧するとき主にモバイルデバイスを使用しているのです。アプリのユーザーエクスペリエンス(UX)が平均以下なら、別のアプリへ乗り換えます。モバイルユーザーは気まぐれなのです。
1.モーションと、さりげないアニメーション
Flashで作られたサイトが(幸いにも)一線を退いてからは、アニメーションや遷移が一躍注目を集め、ホットなUXの1つになりました。モーションはユーザーの注意をひき、動的で対話的な体験はユーザーを夢中にします。
動きの度合を自由に設定できます。ポイントはさりげない動きにするべきです。ユーザーは過剰なアニメーションが見たいわけではなく、ちょっとした演出や使いやすくするための視覚的なヒントを示してほしいのです。フローティングボタンが、下にスワイプして先にあるコンテンツの閲覧を促すのがいい例です。
Adobe Flash全盛の時代、アプリに加える動きはその名の通り派手(flashy)な演出のためでした。今はユーザーエクスペリエンス向上のために動きを付けます。Flashの頃のようなスタイルのアニメーションが廃れて、さりげなく遷移するアニメーションが盛んになった理由の1つです。
2.仮想現実/拡張現実(VR/AR)
高性能なCPU、大容量のメモリ、優れたカメラ、高速通信、高画質表示と、デバイスのハードウェアが、やっとモバイルアプリ開発者の要求に追いつきました。仮想現実(Virtual Reality、VR)/拡張現実(Augmented Reality、AR)はこれまでにないくらい進化しています。
VR/ARアプリは、ユーザーの感覚器官をすべて使ったリアルな体験を直に味わうことができます。架空であっても限りなく現実に近い体験ができるのです。
ユーザーをどれだけ没入させるか、物理的に動いたり反応したりすることなく現実のような体験を実現する方法など、VR/ARアプリ開発で考えるべきことはたくさんあります。アプリ開発者はエンドユーザーの体験を常に念頭において、3Dの技術者と密に協力する必要があります。
VR/ARは試す価値のある新しい世界です。
3.対話型インターフェイス
対話型インターフェイスは非常に熱いテーマです。アップルのSiriやマイクロソフトのCortanaなど多くのスマートフォンにはバーチャル・アシスタントが組み込まれているため、モバイルユーザーはスマートフォンのボットに話しかけることに抵抗がありません。これはアプリ設計にも影響しています。ユーザーは音声によるGoogle検索のような音声操作機能、もしくはSlackボットのような対話機能を期待しています。
音声技術を設計・実装に抵抗がある人も心配は要りません。ミレニアル世代(1980年〜2000年ごろに生まれた世代)は話すことよりもテキストメッセージを好みます。チャットボットをメッセージアプリやヘルプ機能に組み込めば、自然な対話で快適な体験を提供できます。
Luka appは、ユーザーがボットをアシスタントとして使いながら友人や家族と話せるアプリで、対話型インターフェイスのよい見本です。
最後に:ユーザーが求めるものを与えよう
ユーザーは欲求に素直です。ユーザーが嫌っていることを知りたければ、ネガティブなアプリレビューを読んでください。モバイルユーザーが求めているのは、「速くてスムーズで、機能を満たし、見た目も美しくて魅力的であること」です。これらの要求を満たせば、何カ月、何年もユーザーを満足させられるモバイルアプリデザインができるはずです。
(原文:3 Mobile UX Trends That Are Changing How We Design)
[翻訳:西尾 健史/編集:Livit]