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IoTもas a Service化が必要な時代に

LPWAはNB-IoTとCat-M1の時代へ?ファーウェイに聞くキャリアIoTの現状

2017年05月09日 07時00分更新

文● 末岡洋子

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モノがつながるIoTは通信事業者にとって、新しく大きなビジネスチャンスをもたらすものだ。Sigfoxなど免許不要帯域を利用する規格が先行する中、通信事業者を顧客に持つファーウェイテクノロジーズ(以下、ファーウェイ)は、LTEなどの周波数帯をベースとする通信事業者向けのIoTビジネスをプッシュしている。ファーウェイのキャリア・ビジネスグループでIoTマーケティングディレクターを務めるピ・シャオジァン氏に、IoTの接続技術やビジネスモデル、セキュリティ、ファーウェイの取り組みなどについて聞いた。

講演中のファーウェイ キャリア・ビジネスグループ IoTマーケティングディレクター ピ・シャオジャン氏

LPWA市場を独占する2つの規格とファーウェイ

――LPWA技術にはいくつかあるが、ファーウェイのサポート状況を教えてほしい。

シャオジャン氏:ファーウェイはNB-IoTとCat-M1を含む3GPPのRelease 13とRelease 14の両方で重要な貢献を行なっており、NB-IoTとCat-M1(eMTC)ともにサポートしている。

(IoTのイベントである)GSMA Global Mobile IoT SummitでNB-IoT Forumは、22のNB-IoTパイロットが進行中・または完了していると発表したが、ファーウェイでもNB-IoTの案件が増えており、現時点ではCat-M1よりも多く展開している。NB-IoT Forumには60社以上の通信事業者、ベンダーが参加しており、ファーウェイもその1社だ。われわれは2017年中、通信事業者とともに30種類以上のNB-IoTネットワークをロールアウトする計画だ。

――ファーウェイはNB-IoTを強くプッシュしている。NB-IoTと同じくLTEベースのCat-M1との違いは?

シャオジャン氏:技術的な仕様は異なるが、共に2G/3G/4Gと比較してモジュールのコストが低く、カバー範囲に優れ、バッテリー持続時間が長い、といったLPWA技術の重要な要素を共通して備えている。だが、適したシナリオは異なる。

スマートメーターのようにわずかなdB(デシベル)の増減が重要な場合はNB-IoTが適している。一方、Cat-M1は資産の追跡のように移動体通信と位置情報が重要で、広い帯域を必要とする用途に適している。その点、NB-IoTの帯域は最大200kHzであるのに対し、Cat-M1は最大1MHzだ。ファーウェイはNB-IoTとCat-M1の両方で顧客とプロジェクトを展開している。

NB-IoTとCat-M1は共に周波数帯がライセンスされる規格であり、この2つの規格がLPWA市場を独占するとファーウェイは信じている。2017年はネットワークのロールアウトが加速し、エコシステムやユースケースも増えることだろう。これが将来5G技術により実現するIoTビジネスへとつながっていくと見ている。

IoT as a Serviceが与える価値

――IoTは通信事業者にとって、垂直産業向けにビジネスを展開する新しいビジネスチャンスとなる。セルラーベースのIoTアプリケーションという点で、先行している国や業界はあるか?

シャオジャン氏:欧州、アジア太平洋、中東・アフリカ、南米で、NB-IoTに対する需要が高いと感じている。事業者の多くが水道、ガス、電気などの公益事業でスタートしており、駐車場や街灯、監視カメラ、ごみ、ヘルスケアなどのスマートシティプログラムの下でもアプリケーションの開発が進んでいる。中には、パイロットプロジェクトの段階ですでにビジネスモデルを確立できたところもある。

IoTビジネスは、ユースケースが主導している。既存のBtoCビジネスよりもバリューチェーンは長期で、エコシステムも大きい。ファーウェイのようなベンダーだけではなく、通信事業者も垂直業界を深く理解する必要がある。ニーズは何か、事業者はどこにバリューを加えることができるのか、といったことだ。相互運用性や統合の問題ではなく、関係する複数の企業が”ウィン(win)”できるビジネスモデルを構築できるかが問題だ。

IoTではしっかりしたビジネスモデルとコラボレーションの仕組みを構築する必要があり、ファーウェイは”GLocal(グローバル+ローカル)”のイニシアティブ、NB-IoT OpenLab、開発者向けプログラムを通じて、事業者との協業を進めている。

――”IoT as a Service”という言葉も見られた。何を意味している?

シャオジャン氏:IoT as a Serviceとは、通信事業者がモノからモノ、人からモノなど新しい市場を目指すにあたって、接続以上の価値を持つIoTサービスを提供しよう、というものだ。

IoT as a Serviceは、クラウドサービスの一部、またはクラウドサービスを通じて提供される。通信事業者、OTTプレイヤー、IoTサービス事業者は、プライベートクラウド、テレコムクラウドまたはパブリッククラウドなどのクラウド設備を利用して、IoTサービスを提供しようとしている。クラウドの利用により、迅速に拡張性のある形で提供でき、柔軟性やセキュリティなどの特徴が得られ、運営コストも低く抑えることができる。IoTサービスの提供にあたって、外部のクラウドも利用できるだろう。

IoT as a Serviceは、チップセット、モジュール、デバイスなどのメーカーやネットワーク機器ベンダー、アプリケーション開発者、システムインテグレーターなどで構成されるエコシステム、バリューチェーンの参加者、エンドユーザーの関係を明確にし、共通の目的であるエンドユーザーのために作業できる。

ビジネスモデルはCAPEX(設備投資)に限定されないだろう。従量課金、売り上げシェアなど、長期にわたって成長が続くビジネスモデルがIoTでは適しているだろうし、APIを活用して顧客に課金することも考えられる。

顧客である通信事業者の成功こそがわれわれにとって重要

――ファーウェイではNB-IoT Open Labを開設している。ここではどのような取り組みを進めているのか?

シャオジャン氏:2016年4月にVodafoneと最初のNB-IoT Open Labを開設、それ以来、世界で合計8箇所のNB-IoT Open Labを開いている。それぞれ通信事業者と共に展開しており、約20のパートナーと6つの垂直業界が参加している。

ここでわれわれは通信事業者と共に、NB-IoTエコシステムの開発と商用実装のための取り組みを進めている。新しいユースケースを考案して試すインキュベーションセンターであり、さまざまなプレイヤーがビジネスモデルを考える場でもある。

NB-IoT Open Labでは、チップセット/モジュール/デバイスメーカー、アプリケーション開発者、システムインテグレーター、通信事業者、垂直業界の顧客は、デバイスとアプリケーションのテストと検証、ネットワークのテストが可能だ。通信事業者にパートナーの認定、商用実装に必要なトレーニングを支援する役割もある。

――NB-IoTはファーウェイにどのようなビジネスチャンスをもたらすのか?

Xiaojiang氏:ファーウェイはモバイルネットワークインフラの他に、チップセット、IoTプラットフォーム、サービスを提供しており、それぞれがメリットを享受できる。

NB-IoTそのものはファーウェイにビジネスチャンスをもたらさない。しかし、顧客である通信事業者の成功こそ、われわれにとっては重要だ。そこで、NB-IoT Open Labのように通信事業者が持続性のあるビジネスを確立できるよう、これまでの接続を超えた協業を行なう。これまではデータトラフィック量をベースとしていたが、NB-IoT技術のターゲットは異なる。ファーウェイは、接続技術の提供、サービスの提供、データのオペレーターの3つのIoTモードで通信事業者を支援する。

ファーウェイはIoTのエンドツーエンドのセキュリティを確保する

――IoTでセキュリティの懸念が大きくなっている。ここでのファーウェイの取り組みは?

シャオジャン氏:ファーウェイはスペインのサイバーセキュリティ機関INCIBE (Spanish National Cyber Security Institute)と「Building a Trusted and Managed IoT World」という白書を作成した。これはIoTのセキュリティをテーマとしたものだ。

ファーウェイはマルチレイヤーのIoTセキュリティシステムを構築している。IoTネットワークでもっとも脆弱な部分であるエンドポイントレイヤーではセキュリティを強化したメカニズムを複数実装しており、TPMチップセットなどネットワークとクラウドレイヤーでは「Huawei LiteOS」のセキュリティ機能、IoTネットワークファイアウォールを備える。IoTネットワークファイアウォールは、ICTのプロトコルに加えて業界特有のプロトコルも対象としている。

こうした各レイヤーでのセキュリティ対策に加えて、サイバーセキュリティインテリジェンスも展開する。ビックデータ分析と機械学習を用いて全レイヤーとノードの既知と未知の脅威を検出し、協調的な対策をとる。

ファーウェイはINCIBE、それにEuroPriSe(EUのプライバシー機関)、IOActive(米国ベースのサイバーセキュリティ企業)といったさまざまなセキュリティ機関と協業しており、IoT業界の規制を満たすようにしている。

――ファーウェイのIoT向けOS「LiteOS」はどのようなものか? ファーウェイがIoTに関連した事業を展開するにあたって、どのような役割を担っているのか?

シャオジャン氏:Huawei LiteOSはオープンソースの軽量OSであり、インテリジェントなデバイス向けの開発プラットフォームでもある。

カーネルは10KB程度と超軽量で、消費電力も低いため、リソースに制限のあるIoTデバイスに適している。レスポンス時間も1ミリ秒と短い。ARM、DSP、x86などさまざまなチップセットアーキテクチャをサポートし、通信技術もZigbee、Wi-Fi、LTE、Ethernet、Bluetoothなど主要なものに対応している。自己検出や自己接続、自己ネットワーキングといった機能は開発面でのメリットにつながっており、大規模で高速なデバイス実装を可能にしている。また、カーネルや伝送、アプリケーション、エンドツーエンドでのセキュリティも約束する。

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