「GIF動画が凶器となる」という問題を考える前に、20年前の出来事を思い出してみます。1997年12月の夕方に日本中の何千人もの子供が同時に発作に襲われました。うち685人が病院に搬送され、2週間以上入院した子供もいました。
あとで分かったことですが、発作を起こした子供たちは全員、テレビアニメ『ポケットモンスター』の同じシーンを夢中で見ていました。それは第38話「でんのうせんしポリゴン」で、向かってくるミサイルを破壊するためにピカチュウが「10まんボルト」というワザを使ったときのことでした。アニメ制作者は高速の赤と青のストロボ効果を使って「10まんボルト」を表現しようとしました。しかし、この効果が知らぬ間に多数の視聴者に光過敏性発作を引き起こしたのです。
もちろん、完全に不慮の事故でありポケモンの制作者にとっては大きなショックでした。実際に、このアニメスタジオは事件について調査するために4カ月の業務を停止し、その後はハイコントラストなストロボ効果を使ったアニメーションを使わないという対策を取りました。
しかし、すべてのアニメ制作者がそのような配慮をしてくれるわけではありません。
害を与えることを目的としてアニメを制作
先週金曜日、メリーランド州のJohn Rayne RivelloがGIF動画を使った殺人未遂で起訴され、裁判にかけられました。
去年の12月、RivelloはNewsweekのジャーナリストであるKurt Eichenwaldの書いた記事に激怒し、行動を起こしました。RivelloはEichenwaldが光過敏性てんかんであることを知っており、「オマエの記事は発作に値する」という言葉を添えて、激しく点滅するGIFアニメを作成して送りつけました。その後、Eichenwaldが倒れているのを妻が見つけ、911(緊急通報電話)に電話したのです。
FBIはRivelloが殺害または「身体的危害」を与える目的でサイバーストーキング犯罪を実行したとして告発しました。Eichenwaldの弁護士は、綿密に制作されたGIFアニメを直接ツイートして送りつける行為は、爆薬や毒を送るのと同じだと主張しました。
Rivelloは最高で10年の懲役に服すことになりました。
デザイナーは偶然に発作を起こさせてしまう可能性があるか?
幸いなことに、被害を被りやすいユーザーが偶然に発作を起こしてしまう可能性は非常に低く、そのようなことはめったにありません。Webaim.orgによると、コンテンツが問題になるのは毎秒5〜30回連続して点滅する必要があります。点滅するUI要素を作成することはあるかもしれませんが、連続して点滅するアニメーションになることはあまりないでしょう。
また、点滅する画像は大きなものである必要があります。アニメーションするスピナーやローディング画像が、問題を起こすほど大きなサイズになることはほとんどありません。実際のところ、映画やテレビ、エンターテイメント施設の照明、テレビゲーム、ピンボールマシンのほうが、Webよりも問題になるのが普通でしょう。
おそらく、デザイナーの不注意といわれることでもっともリスクが高いものを1つ挙げるなら、特別な性質を持つ静的グラフィックです。コントラストの高い視覚的な錯覚を起こすもの、たとえば上のような、アニメーションではないものの動いているように見える画像は、大きなパネルや背景に使用されると深刻な問題を引き起こす可能性があります。
めったに起こりえないことですが、意図せずに起こり得るシナリオではあります。パターン化された背景を作成するときには細心の注意が必要です。
(原文:Killer GIFs: How Can an Animated GIF Become a Weapon?)
[翻訳:中村文也/編集:Livit]