リチウムの価格が急騰している。スマホなどの携帯機器向けから、電気自動車や蓄電にまで用途が拡大し、供給が需要に追いついていないのだ。そこで注目されているのが、リチウムを豊富に含む地下水がある、ネバダ州の渓谷だ。
金、銀、銅はこの際どうでもいい。今起きているのは「リチウム・ラッシュ」だ。
リチウムは、ほとんどの携帯機器の電力源であるリチウム・イオン電池に不可欠の材料であり、リチウムの需要は今後も高まるばかりだ。毎週のようにリチウム以外を使った高性能次世代電池のニュースを目にするが、実際には新型電池がすぐに大量生産され、市販できるわけではなく、今後しばらくはリチウム電池が使われ続ける。
現代社会では電話やコンピューターだけでなく、電気自動車や送電網に接続するような大規模の蓄電にまでリチウム・イオン電池の用途は拡大しており、リチウム電池の製造にはリチウムをもっと採掘する必要がある。もっと広い視点でいえば、クリーン・エネルギーの未来ですら、リチウム頼みだ。
リチウム・イオン電池の材料には、黒鉛やコバルト等の金属もある。MIT Technology Reviewは以前、先進国で「クリーン」なイメージのある電池の材料を確保するために、発展途上国では健康被害を伴う形で資源が採掘されていることを記事にした。鉱山労働者は命を危険にさらして働いており、記事を読めば、どんなハイテク好きでも、ラッディズム(機械に反対すること)が頭をよぎるだろう。
一方、リチウムそのものも問題に直面している。リチウムの大半は従来、オーストラリアやチリ、アルゼンチン、中国で採掘されていた。しかし現在、世界の需要を支える産出国は、リチウムを十分に供給できずにおり、リチウム価格はここ数年で2倍以上高騰している。また、リチウム取引の長期保証契約の場合、価格は従来の4、5倍にもなる。
ブルームバーグによると、採掘業者は別の場所に目を付けている。19世紀半ばに銀鉱脈が発見されて人口が急増し、ユタ準州から分離、1864年には米国36番目の州に昇格し「シルバー・ステート」の別名があるネバダ州だ。ただし、現在の採掘業者が注目しているのは、リチウムを豊富に含むクレイトン・バレーの地下水だ。価格が急騰し、採掘コストがかけられるようになったため、クレイトン・バレー一帯の帯水層を掘削し、巨大なプールにため、プール内の水を蒸発させてリチウム塩を取り出そうというのだ。
ブルームバーグによれば、最近6社以上のスタートアップ企業がクレイトン・バレーでのリチウム掘削に乗り出しており、リチウム高騰の波に乗って一儲けしようと躍起になっている。だが、岩石から採掘するのとは異なり、蒸発でリチウムを採集するのは巨大プールで大規模な化学実験をするようなもので、難しい。特に、蒸発で水分を取り除く工程は扱いが難しく、やり方を間違えれば、誰も買いたがらない低品質の結晶が作り出される。
だが、困難を克服できれば、ネバダ州は電池が多用される社会に移行するのに欠かせない原材料の新たな産出地になる。19世紀半ばにカリフォルニア州でゴールド・ラッシュが起き、鉄道の中継拠点としてラスベガス(ネバダ州最大の都市)が栄えた頃より、ずっと大きな価値をもたらすだろう。
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