80%もの住宅で太陽光パネル設置が適しているのであれば、一般家庭向けの電力会社が必要なのか見直されてもおかしくない。今後太陽光パネルの効率が高まれば、国内でも電気の地産地消が進むかもしれない。
自宅の屋根に太陽光発電パネルを設置しようか考えて、投資価値があるのかわからなくなったことがあるだろうか。もしそういう経験があるなら、グーグルのツールがいい判断材料になるかもしれない。
グーグルは「プロジェクト・サンルーフ」の新展開として、全米50州の屋根や屋上の3Dモデルを構築し、家屋の周りの木を調べ、地域の気候を考慮して、住宅や建築物の所有者が太陽光パネルに投資した場合に得られる発電量を算出した。
中でも特に重要な発見は、調査チームがモデル化したすべての建物のうち、80%近くは、太陽光パネルの設置が「技術的に実現可能」ということだ。つまり米国の建物の80%は、毎年電力を作るのに十分な量の太陽光を捉える見込みがあるのだ。これはかなりよさそうな話だ。グーグルのブログ記事によれば、いくつかの都市について、屋上太陽光パネルの設置拡大がもたらす可能性にも注目している。1位はヒューストン(テキサス州)で、太陽から毎年1万8940ギガワット時もの発電量が得られると見込める(グーグルによれば、1ギガワット時は90世帯分の1年間に電力供給量に相当)。
米国在住なら、プロジェクト・サンルーフのサイトで自宅を検索して、屋根に設置すべき太陽光パネルの大きさを検討したり、設置した太陽光パネルでどれだけの発電量を得られるか、さらにパネルのリース代や購入費を試算したりできる。
とても便利なツールで、発表タイミングもちょうどいい。太陽光発電は米国で急成長し、パネル設置件数は2016年にほぼ倍増した。ただし、ほとんどは公共設備の屋上であり、住宅への設置数は、昨年19%の増加にとどまった。カリフォルニア州などの大きな市場で、新設需要がなくなりつつあるのが主な理由だ。
ロサンゼルス・タイムズ紙は、15日の記事でネルギー業界関連の複数の当局者の話として、全米で見れば太陽光発電の成長が続く楽観的な見通しを伝えた。しかし、太陽エネルギー産業協会(SEIA:Solar Energy Industries Association)は、上位5州の市場(米国における2016年の住宅向け太陽光パネル新設件数の70%を占める)すべてで、設置ペースの低下が見込まれると示している。SEIAの最新の報告によれば、落ち込み分は、テキサス州やユタ州、サウスカロライナ州といった新興市場の州の増加分ではおそらく埋め合わせられない。
とはいえ「ネットメータリング制度」(発電量から消費量を引いた余りを翌月に繰り越して電力料金を算出する仕組み)など、消費者に屋上発電システムの魅力を高めた政策が消滅の危機に瀕しており、プロジェクト・サンルーフのおかげで、太陽光パネル市場の落ち込み傾向を大きく変えることはなさそうだ。だが、SEIAの報告書は、設置件数が減速している理由のひとつに、太陽光パネル設置業者が「最初にパネルを導入した層以外の顧客に訴求」できなかったことを挙げている。プロジェクト・サンルーフの開発元グーグルの巨大な影響力を考えると、新ツールは少なくとも、これで太陽光パネルの設置に関心を示さなかった層の関心を高める意味では効果を期待できる。
(関連記事:Google, Los Angeles Times, “Solar Installations Soared in the U.S. in 2016,” “米で再生可能エネが本格普及 手段が目的化してないか?”)