米軍がトランプ政権下でも再生可能エネルギーへの転換を進める意向なのは、そのほうが強くなるからだ。このロジックは「地球のため」と抽象的に環境保護を訴えるより効果的である反面、温暖化対策は直接の目標ではなくなる短所もある。
最先端の軍事テクノロジーといえば、各種の乗り物や武器、通信機器を思い浮かべるだろう。もしかしたらロボット兵器まで想像するかもしれない。しかし米国防総省にしてみれば、再生可能エネルギーも軍事テクノロジーの一種のようだ。
米軍はイノベーションと無縁ではなく、最近はシリコンバレーのアイデアを積極的に取り入れることさえしている。全エネルギーの25%をクリーン・エネルギーで生産または調達すると誓って以来、10年間で米軍は再生可能エネルギーの使用を着実に増やしてきた。
ロイター通信は、軍高官が「新政権でも、今後10年間に多くの燃料を消費する運用から再生可能エネルギーへの転換を進める意向だ」と報道した。国防費を540億ドル増やすトランプ大統領の最近の発表を考えると、再生可能エネルギーへの転換は難なく進むかもしれない。
だが、この方針は、国家安全保障の向上に資することに予算を配分するという大統領の方針に反していそうにも思える。
しかし米軍幹部はロイター通信に、地球を救いたいのではなく、軍の運用態勢を効率化し、安全に、強固にするために再生可能エネルギーに移行するつもりだ、と述べた。たとえば、再生可能エネルギーで稼働する陸軍の設備は、送電網を攻撃されても稼働できる。ハイブリッド戦車は、従来型戦車より燃料補給が少なくて済むし、被弾しても太陽光パネルは燃料タンクのように爆発しない。
もちろん、このニュースは軍の予算を拡大するトランプ大統領の方針に沿った内容であり、連邦政府の他の機関が予算減に直面していることと切り離せない。ARPA-E(大胆なエネルギーの新テクノロジーを研究する資金を提供するためのエネルギー省のプログラム)も環境保護庁も、劇的な組織改編または閉鎖の可能性に備えている。
米国防総省(DoD)の投資によって、ARPA-Eが促した類のクリーン・エネルギーの新テクノロジーが生まれる可能性は低い。しかし米軍のイノベーションは、いずれ民間で利用可能になる場合があり、投資規模は再生可能エネルギーのコストをさらに低下させるほど影響力がある。
したがって、地球を救うための連邦政府の機関から削減された予算の少なくともほんの少しは、大統領の意図にかかわらず、再生可能エネルギーに回されることになる。
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