プレイステーションVRの販売台数は、販売開始6カ月以内に100万台の社内目標を上回るのは確実で好調だ。オキュラスVRのVRゴーグル「リフト」は大幅値下げで販売不振をばん回しようとしている。
消費者は、財布と相談しながらVR機器を選んでいる。
VRゴーグルは購入前にあらかじめ専用のハードウェアを準備しておく必要があり、さらに大ヒットコンテンツが不足している事情もあり、売り上げは間違いなく不調だ。それでもようやく、機器の販売に苦労するゴーグル・メーカーと、成功するメーカーに差がついてきた。
明らかに売れ行き不調なのはオキュラス VR(2014年に30億ドルでフェイスブックに買収された)だ。2月、オキュラスは消費者の反応がほとんどないため、米国内の店頭体験コーナーの大半を閉鎖すると決定した。さらに販売不振の打開策の一環で、オキュラスはゴーグルのリフトとモーション・コントローラーの価格を200ドル値下げし、小売り価格は現在1セット598ドル(日本向けの販売価格は7万6600円)になった。
一方で、ニューヨーク・タイムズ紙の記事によると、ソニーのVRゴーグル「プレイステーションVR」の販売価格はコントローラー付きで500ドル(日本国内希望小売価格は税抜き4万4980円)で、販売開始から4カ月後の2月19日時点で91万5000台以上を販売し、ソニーの予想を上回る好調ぶりだという。ソニーは当初、販売開始6カ月以内に100万台のゴーグルを販売する社内目標を掲げていたが、順調に上回ることになりそうだ。
このニュースはある意味当然といえるだろう。MIT Technology Reviewのレイチェル・メッツ記者は、まさしくこの状況を昨年6月に予測していた。当時のメッツ記者の見立てでは、プレイステーションVRには、オキュラスVRやHTCのゴーグルを凌駕するふたつの大きなメリットがあるとされた。まず、ゴーグル本体の販売価格がオキュラスVRやHTC製に比べて安いことだ。もうひとつは、VRの体験に必要な本体は350ドル(日本国内希望小売価格は税抜き2万9980円から)のプレイステーション4だけで(すでに多くの人が持っている)、高性能なゲーム用コンピューターが不要なのだ。
というわけで、ソニーとオキュラスVRのニュースからは、MIT Technology Reviewの予想が正しかった、といえる。実質現実(VR)を体験してみたい人を惹きつける組み合わせは、販売価格と、すでに持っているか手軽に購入できる価格のハードウェアと接続できるゴーグルだ。間違いなく、オキュラスVRも自分たちの敗因を認識している。昨年、オキュラスVRはコンピューターに接続する必要がない試作品を開発中だと発表したが、この装置がいつ市販されるかはまだわからない。
当面、オキュラスVRは消費者が商品の値下げに理解を示し、オキュラス・リフトを試してくれることを祈るばかりだろう。実質現実の現実は、望み通りにはならないかもしれない。
(関連記事:New York Times, Reuters, “Why Oculus and HTC Need to Watch Out for Sony in VR,” “VRは期待はずれ? 10年耐えられる企業が最後に勝つ,” “オキュラスVR、売上不足でゴーグルの展示販売を大幅縮小”)