音がいいという評判には確かに納得
OPPOはBlu-ray Discプレーヤーを中心に、ヘッドフォンやUSB DAC内蔵のポータブルアンプなども開発しているブランドだが、共通しているのはリーズナブルな機能で多彩なフォーマットに対応し、多機能である点だ。
Sonica DACはESS Technology社のハイエンドDACチップ「ES9038PRO」を内蔵し、広範な音声フォーマットに対応できる点が特徴だ。最大22.6MHzのDSD、最大768kHz/32bitのPCMに対応するDACというのは市場にもまだあまり種類がない。そもそもES9038PRO自体が、2016年1月開催のCESで発表された新しいチップである。現行のDACチップの中でも高額であるため、現状ではアキュフェーズが昨年9月に発表した「DC-950」など、ごく限られたハイエンド機種にしか採用されていない。
ちなみにDC-950の価格は120万円(税抜)。同じ価格のSACD/CDトランスポート「DP-950」との組み合わせを想定しているため、少し雑な言い方かもしれないが、合計240万円のセパレート型SACDプレーヤーと同じチップを載せていると言ってもいい。
ES9038PROは、多くのハイエンドプレーヤーが搭載したES9018Sの上位モデルで、Hyperstream II Technologyという、ディザリング処理を改善し、より人間の聴覚にとって自然に聴こえるよう、時間軸方向の変換精度を高める技術を搭載している。ES9018S同様8ch出力のチップだが、1chあたり4つのDACを内蔵しているため、1チップで合計で32個のDACセクションを内蔵していることになる。
ステレオ出力の機種では、1chあたり16個のDACを並列動作させられるため、非常に高い精度での処理が可能だ。
音質は使用するDACチップだけで決まるわけではないが、内部を見てみると、電源部には、大型のトロイダルトランスとリニアパワーサプライを組み合わせたハイブリッド型電源を搭載している。バランス設計の基板のレイアウトも美しい。コストの制約は受けつつも、その範囲内で最大限の効果を得られるよう配慮して設計されているようだ。
実際その出音は大変すばらしく、特に情報量の豊富さと、それに起因する空間表現能力の高さは圧巻だ。冒頭で書いたように、エントリークラスのシステムからのグレードアップには最適だし、同価格帯の製品ではなく、数十万~100万円クラスの製品と組わせても十分通用する質の高さを持っているように感じる。
コンパクトで高機能な反面、ヘッドフォンアンプなどもなく、これ単体では完結しない機種ではある。しかし、ソース機として導入することで、そのシステムの持つ潜在能力がより顕著になる経験は鮮烈だった。過去のOPPO製品の例にそうなら、ファームウェアバージョンアップに機能向上も期待でき、今後の成長が楽しみな機種でもある。