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40年前に指摘された「電子マネーの危険な側面」を読み返す

2017年02月22日 23時27分更新

文●MIT Technology Review Japan

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創刊118年目のMIT Technology Reviewは、テクノロジーに関する最新の動向を見続けてきた。40年前に書かれた電子マネーに関する記事は、未来を見てきたかのような書きっぷりだ。

「電子資金取引(EFT:Electronic Funds Transfer)の時代に向かっていることに疑いの余地はない。小口決済システムが開発され、コンピューター経由で銀行間の決済が実現し、携帯電話による決済サービスの利用が大幅に増え、銀行や小売店舗に電子端末が設置されるようになり、クレジットカードを確認したり、現金を引き出したりできるようになる。

現金に比べて、消費者が電子マネーを失いやすい可能性について、ベル・ノーザン・リサーチのゴードン・B・トンプソン研究員は懸念している。双方向性のあるケーブルテレビと電子マネーが組み合わさることで衝動を駆り立てるようなテレビ・ショッピングに消費者が引き込まれる効果があるかもしれない、とトンプソン研究員は考えているのだ。

「テレビで押し売りを見ることが購入に直結する可能性があります。クレジットカードを所定の差込口に挿入してボタンを押すだけで、最新のキッチン用品が視聴者の自宅に発送され、銀行口座から自動的に代金が引き落とされるのです」

トンプソン研究員によれば、双方向ケーブルテレビとEFTの統合システムを使った電子ギャンブルも登場する可能性もある。クレジットカードを差込口に挿入するだけで、簡単に支払えるインスタントくじもありえるという。国中のすべてのギャンブル依存者が、こうしたシステムのカモになりえる。

EFTによって、給料小切手の発行や料金の支払を好きな日にできるようになる(略)最大のメリットは、支払を正確に管理できることだ。たとえば毎年4月15日の11時59分ちょうどに税金を支払うのだ。銀行投資顧問協会のロバート・H・ロングとウェイン・B・レウィンによれば、残念ながら、その頃には政府が税金の日払に移行している可能性が高いという。

ロングとレウィンによれば、電子マネーの他の効果は不明だ。コンピューターは人間中心のシステムよりも非個人的であり「システムの抜け道を利用する」タイプの犯罪が増える可能性がある。コンピューターから金を騙し取ろうとする問題が非常に多くなるだろう。「今、ラスベガスで胴元に挑んでいる人間が(略)ネット決済システムの方がずっと突破しやすい相手だと気付くかもしれません。結局、誰が損するでしょうか?」とふたりは聞いてきた。

最後にひょっとして最も不吉な事態を書いておこう。EFTシステムへのデータの集積により、莫大な量の経済に関するデータが利用可能になり、政策立案者がこうしたデータに頼るようになり、政府による経済の管理が強まるかもしれない。また、政府がEFTの記録を利用して、民間企業の取引実態や財務状況に関する情報を収集すれば、プライバシーが危険に晒される可能性もある」

(「Technology Review」(1977年2月号)掲載の「電子マネーに関する疑念」より抜粋)


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