近い将来、「楽天クリニック」が誕生する?—-楽天(株)は13日の決算発表で、メディカル事業に進出すると発表した。楽天の三木谷浩史会長兼社長は、光免疫療法の商業化を目指す米国のベンチャー企業「アスピリアン・セラピューティクス社」の取締役会長に就任。今後はアスピリアン社のパートナーとなり、メディカル事業に進出する。
光免疫療法は、色素を導入した抗体と近赤外線の照射を組み合わせ、がん細胞のみを選択して破壊することができる技術。副作用が少ない薬品を使用し、近赤外線によりがん細胞だけを狙い撃ちできる未来のがん治療法として、注目を集めている。米国立がん研究所(NCI)・米国衛生研究所(NIH)の小林博士らが開発したがん治療法で、実用化された場合、がん治療に革命を起こす可能性もある。
アスピリアン社はNCIよりライセンスを取得し、光免疫療法の臨床試験、商業化を目指す米国の製薬ベンチャー。楽天によると、三木谷氏は以前からこの技術に注目し、同社に個人的な出資をしてきた。アスピリアン社の会長就任し、今後は事業として取組むことになり、今回の発表に至った。具体的な事業スキームは未定で、今後検討されることになる。現在、がん患者を対象にした臨床試験実を実施中で、事業化は数年先になると見られる。
どのような事業形態になるかは不明だが、EC・金融・通信・旅行・メディアなど、さまざまサービスを提供する「楽天経済圏」に新たに「医療」が加わり、「楽天クリニック」や「楽天病院」といった医療施設を立ち上げ、光免疫療法の先端医療を提供する可能性もある。光免疫療法は、抗がん剤の投与など従来の治療法に代わる先端医療となることから、製薬会社の力が強い日本では事業化のハードルが高いが、楽天は医療業界とのしがらみがなく、さまざまな新事業を立ち上げてきた実績から、事業を具現化する期待も高い。アスピリアン社への出資は、日本では楽天のみ。ECで苦戦する同社だが、今回の発表で「光免疫療法銘柄」の1社となり、今後の注目度が高まりそうだ。
(山本剛資)