ネットワーク中立性がなければ、資金に余裕のあるインスタグラムがISPと有利な契約を結ぶかもしれず、そうなればスナップチャットは事業を拡大できない。スタートアップ企業を育むビジネス環境をトランプ政権はどこまで考慮するつもりなのだろうか。
スナップチャット創業者が先週上場を申請したとき、現在進行中のネットワーク中立性に関する政治論争にも直接言及し、もしトランプ政権が米国連邦通信委員会(FCC)の定めた「オープン・インターネット」規則を撤廃すれば、スナップチャットのビジネスに深刻な影響を与える可能性があると述べた。
FCCのアジット・パイ新委員長は2015年にオープン・インターネット命令で制定されたネットワーク中立性規則は「余命いくばくもない」と発言している。オープン・インターネット命令では、インターネット・サービス事業者(ISP)が、合法的コンテンツのトラフィックを制限したり速度を遅くしたり、コンテンツ事業者がISPに追加料金を払い、自社のデータを優先させる契約(ゼロ・レーティング)を交わしたりすることを禁止している。また、ユーザーに対して不公平または有害とみなされる事業慣習を個別に取り締まる権限をFCCに与えている。パイ委員長が率いるFCCは、賛否あるゼロ・レーティング(ユーザーがデータ通信量の上限に引っかかることなく特定のコンテンツをストリーミング配信で視聴できる携帯電話のサービス)に関する調査をすでに一時停止している。
スナップのように小規模の無線ストリーミング映像事業者は、オープン・インターネット規則が撤廃された場合、大打撃を受ける。証券取引委員会にスナップが提出した申請書類には、オープン・インターネット規則の内容が修正されたり、撤廃された場合には「ユーザーがスナップチャットにアクセスできないようにモバイル事業者が制限をかけられるかも」しれず、競合他社のアプリよりもスナップチャットが面白くなくなるかもしれない、と記している。
政府がオープン・インターネット規則を撤廃し、新規則を設けない場合、携帯電話事業者は、スナップの競合と有利な契約を結ぶ可能性がある。たとえば、通信事業者がスナップチャットには払えない額でインスタグラムのビデオをゼロ・レーティング化したり、インスタグラムと独占契約を結んだりする可能性すらある。
ジョージ・ワシントン大学公共政策研究所のハル・シンガー上級フェローは、ネットワーク中立性に対する保護が全てなくなるとは考えにくい、という。共和・民主両党の政治家は、ISPによる不公平または差別的な事業慣習から、新規のコンテンツ事業者や消費者を守るために何らかの措置は取られるべき点ではでおおむね合意がある。パイ委員長と連邦議会の共和党執行部は、優先すべきはネットワーク中立性の撤廃ではなく、客観的に見てあまりにも厳しい規制をISPに行使できるFCCの権限を廃止することだと主張している。