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神戸大学の杉岡准教授、津波監視ロボットを試験航海

2017年01月31日 11時53分更新

文●Michael Reilly

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日本の沖合にある不安定な火山島は、新しい津波警報システムを試すには絶好の場所だ

津波を監視する外洋ロボットは、津波発生時に人の命を救うかもしれない。

日本の研究者が、誕生して間もない火山島の西之島周辺で津波を予報する構想に向けて準備を進めている。2013年に海面から姿を見せた新島は噴火を繰り返し、主に海底で地すべりが発生することで、周辺の島々の住民には脅威になっている。

10月、神戸大学の杉岡裕子准教授は自らが発明した自律型のウェーブ・グライダー(Wave Glider)ロボットを進水させた。ウェーブ・グライダーには水中聴音器、マイク、低速度撮影カメラ、衛星データ通信装置が装備されており、西ノ島沖で短期間試験航海する。リキッド・ロボティクス(Liquid Robotics)製のウェーブ・グライダーは、波力と太陽光発電により燃料不要で海上を最大1年間航行できる。杉岡准教授の改良版は海底に設置したセンサー群(津波発生時の水圧と磁場の変化を監視する)から情報を受診できるように設計されている。データを活用すれば、陸上の津波警報センターは津波検知から3、4分以内に警報を出せる。住民が高台に避難するには十分な時間だ。

ロボットを使うシステムの主なメリットのひとつは、杉岡准教授がサイエンティフィック・アメリカン誌で答えている通り、コスト効率だ。ブイ式の海底津波計でも、衛星データ通信経由で素早く津波情報を取得できる。しかし、ブイ式の海底津波計は、海底と何kmもの長さのケーブルで結んで固定する必要があり、杉岡准教授の推定では、ウェーブ・グライダーに比べてコストが10倍かかる。

コストは確かにブイが役に立つかを決めるひとつの要因だ。2016年3月、マグニチュード7.8の地震がスマトラ島沖で発生したとき、震源海域に設置されていたブイ式海底津波計のネットワークは、津波発生の有無、規模に関する測定値の取得にほとんど役に立たなかった。そのためインドネシア政府は、地震測定値に基づいて大ざっぱな警告を出さざるを得なかった。何十万人もが避難し、津波が来襲するかどうか何時間も警戒し、結局津波は来なかった。

日本ではマグニチュード9.0の東日本大震災の記憶が生々しく残っている。2011年の地震では大津波があったが、予知がまるでうまくいかなかった。杉岡准教授は自分の考案したロボットで5月に西ノ島の24時間体制でのモニタリングを開始する計画だ。実験が上手くいけば、ウェーブ・グライダーのシステムを量産し、津波発生の恐れがあるあらゆる場所で活用できるだろう。

(関連記事:Scientific American, Wall Street Journal, “Ocean-Faring Robot Cashes In on Offshore Oil and Gas”)


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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