パスコードひとつで突然ドライな近衛兵に!?
プライベートなデータを守るという意味において、情報端末は圧倒的に有利な道具です。持ち主は誰に知られることなくパスワードを自由に設定できますし、何を使ってどう配置するかも好きにできます。対する他人は、幾重ものパスワードを突破して、機器特有の操作とともに持ち主の使い方も学習しながら全容を掴むしかありません。裏山のどこかに埋められた宝をノーヒントで探り当てろと言われるようなものです。持ち主に悪気がなくても、そんな容赦のないパワーバランスができあがってしまいます。
その容赦のなさを極めているのがスマホ、とくにiPhoneです。端末の入り口にかかっているパスコードが強固なうえ、中身をすべて暗号化しているので、物理的にストレージを引き抜いてデータを吸い出すといった最終手段すら使えません。
2016年2〜3月に世間を騒がせたFBIのアップル裁判がいい例です。FBIはテロリストが所持していたiPhone 5cのロックが開けられず、連邦裁判でアップルに解除の協力を要請したものの拒否されてしまいました。最終的に別のIT企業が解決法を見つけてFBIを助けたことで事態は収拾しましたが、その解決法は現行のセキュリティチップを載せていない旧世代だからこそ可能だったといわれています。
国家レベルでも手を焼く理由には、元の強固さに加えて、パスコードを10回以上連続でミスすると操作不能になったり初期化したりする仕様もあります。当てずっぽうで解錠をチャレンジするのはほぼ不可能なわけです。連続10回以上ミスの先には、iTunesやiCloudのバックアップデータから復旧する手しか遺されていませんし、その手を使うにはApple IDとそのパスワードを知っていなければなりません。iTunesの暗号化バックアップを使っている場合は、さらにそのパスワードも必須となります。ひとつでも分からなければ即ゲームオーバーです。
本当、容赦の欠片もないのです。ユーザーフレンドリーで知られるiPhoneは、パスコードが分からなくなった途端にクスリとも笑わない無骨で寡黙で屈強な近衛兵に変身するわけです。家族からしてみれば、ものすごくやっかいな存在だといえます。
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