「セキュリティに対する重要性は理解したけれど、用語が難しくて」という声を聞くことがよくあります。そんな方に、「今だから学ぶ!」と題して、連載でセキュリティの頻出用語を解説します。第39回は、「ペイロード」についてです。
ペイロード(payload)は、IT用語ではデータ伝送されるパケットのヘッダー部を除いたデータの本体を指します。セキュリティ用語で利用する場合、同様の意味で用いることもありますが、マルウェアにおける悪意のある動作をする部分のコードを指すこともあります。今回は、主に後者に絞って説明します。
ペイロードは、多くの場合エクスプロイトにおいてデータを破壊する操作を実行するコードとして配布されます。エクスプロイトとは、システムの脆弱性を攻撃するプログラムのことです。主にInternet Explorer、Firefox、ChromeなどのWebブラウザーの脆弱性を狙ったり、ブラウザーからアクセス可能なプログラムであるAdobe Flash Player、Adobe Reader、Javaなどのセキュリティホールも悪用したりします。このエクスプロイトをすぐに利用できるソフトウェア パッケージにしたものを、エクスプロイト キットといいます。
ペイロードに含まれる悪意のあるコードには、アクセスしたウェブサイトから悪意あるプログラムをダウンロードしてインストールさせたり、システムのパフォーマンスを低下させる動作を行ったりするもの、個人情報を収集するものなど、さまざまなものがあります。
2014年後半から猛威を振るったAnglerエクスプロイト キットは、熟練した技術がなくても使用でき、闇市場で簡単に入手可能です。Anglerは、ファイルレスの感染、仮想マシン、セキュリティ製品の検出を回避する機能などに加えて、配布するペイロードも、オンライン バンキングを狙うトロイの木馬、ランサムウェア、バックドアなど、さまざまな種類のマルウェアにわたっています。
また配布するペイロードに、一度にすべての悪意のあるコードを含ませる場合もあれば、不正なコードを段階的に分けて展開する場合もあります。こうすることで、インストールするときに、承認確認がたくさん出るといったことを回避したり、一見しても中身がわかりにくくすることが可能になります。
OS、Java、Webブラウザーやウィルス対策ソフトウェアなど、使用するソフトウェアを常に最新にし、脆弱性に対処しておくことが大切です。