本記事は、グーグルが検索言語、検索目的、検索結果からユーザーの要求を満たすためにどのようなアップデートを最近実施したのかを解説します(前編はこちら)。
ハミングバード
ハミングバードとは?
2013年9月のハミングバードアップデートは、いままでのGoogleアルゴリズム変更の中でももっとも重大なものです。「ハミングバード」という名前は、「正確で速い」「探しているものを可能な限り速く届ける」という意味で名付けられました。言い換えれば、ハミングバードは検索によって実際になにを手に入れようとしているのかという情報を取得し、できるだけ少ないステップで達成できる検索結果を提供するということです。
ハミングバードがほかのアルゴリズムよりもはるかに重大な変更だとされている理由は、パーツやアドオンといった要素を微調整したというレベルではなく、検索エンジン全体を刷新という点にあります。車のエンジンと比べてみると一番分かりやすいかもしれません。
パンダやペンギン、あとで説明するアルゴリズムは、車でいえば点火プラグや燃料インジェクターといった、エンジン内の特定のパーツを新しくしたようなものです。一方、ハミングバードはエンジンそのものを新しくするのに似ています。しかも、会話型で入力されたテキストの意味を構文解析し、そもそもなぜWeb検索しているのかを判断できるエンジンなのです。
SEOにどう役立つのか
ハミングバードによって、「ユーザーの質問に答える」というSEOアプローチにとってはかなり根本的な、悪く言えばあいまいな変化がもたらされました。タイトルや<H1>タグなど、従来のオンページ最適化やキーワード研究はいまでも大切で、Webページのコンテンツもターゲットキーワードを活用したものでなくてはなりません。
ハミングバード・アルゴリズムは、キーワードを狙った最適化から、ユーザーとトピックへの関連性という点に焦点を大幅に移したのです。キーワードのことは少し忘れ、「自分のオーディエンスは検索エンジン使用時になにを求めているのか、どのような情報が必要で、どのような問題を抱えているのか」と自問してみてください。そのあと、ユーザーの質問への回答や問題解決に特化したWebページを作っていきます。
実用的な面から考えると、ハミングバードによって変更されたSEO関連で最大のものは、キーワード検索とコンテンツ最適化についてです。
- キーワード研究:オーディエンスが問題解決のためにした質問に基づいてキーワード戦略を立てる。カスタマーサポートチームが受信した、あるいはメールや連絡フォーム経由で送られてきた質問を追跡し、ユーザーを分析するところから始める。そのあとキーワード研究をして、質問で実際に使われているクエリを探す。ロングテールキーワードの分析が今回のキーワード戦略の要になる可能性が高い
- コンテンツ最適化:言うほど簡単ではないものの、ユーザーの質問に答え、解決策を提供できるようにコンテンツを構築することが大切だ。Googleアナリティクスを見る際にはトラフィックやWebサイトのランキングだけを追跡するのではなく、直帰率やWebページ滞在時間もチェックする必要がある。可能であればCrazy Eggのようなヒートマップを活用してユーザーのエンゲージ率もチェックする。これらはGoogleがそのWebページがトピックに関連しているか、ユーザーに質の高いサービスを提供しているかどうかを判別するうえで重要な指標となる
ピジョン
ピジョンとは
2014年6月にリリースされたアルゴリズム「ピジョン」は、Googleのローカル検索結果の向上を目的としています。これにはいくつかの方法が使われています。
- Web検索の検索結果とGoogleマップ検索の連結度が格段に向上し、多くのプラットホームでより地元密着的な検索結果を見られるようになった
- ローカル検索ランキングシグナルが従来の検索結果とより密接に連携している
- レビューサイトやローカルディレクトリが検索結果に大量に表示されるようになった。この恩恵をもっとも顕著に受けたWebサイトはYelpだが、Urbanspoon、OpenTable、TripAdvisor、ZagaなどのWebサイトにも好影響が見受けられる
- 位置・距離パラメーターの統合が向上したため、自宅付近の情報が充実し、より正確な検索結果を得られるようになった
- 「ハイパーローカル」が新しいローカル概念になった。ピジョンが市、州(県など)、地域ではなくユーザーの近隣情報に特化したキーワードや引用、Google+プロフィールにより重点を置くようになった
SEOにどう役立つのか
ローカル検索結果の大規模な変化の1つは、検索範囲の縮小と周辺情報への集中強化です。検索範囲の縮小により近隣情報数が増え、たとえば、マサチューセッツ州ケンブリッジに最適化されていたものの、検索ランキングでの順位を落としがちになる可能性が出てきています。というのも、いまではGoogleが、誰かがハーバード、セントラル、あるいはケンダル・スクエアでなにかを検索しているかどうかの判別ができるからです。
また、ピジョンが境界をより正確に反映することを目的に、あるスポットの境界を変更したということで検索ランキングを落とすこともあります。ハーバード・スクエアではよくランキングに入っていたWebサイトが、いまではセントラル・スクエア地区向けとされることでトラフィックが失われます。では、こうした新しい場所情報にどう対応すれば良いのでしょうか。
- 大都市の場合、最適化を都市そのものではなく近所に絞る必要がある。実際に検索に使用する近所の名前を使う。そのためにはどのような名前が使われるかの研究が必要になる。これといった情報のない小都市の場合、地域や州(県など)ではなく市を対象に最適化する
- 名前、住所、電話番号といったNAP情報は必ず正確な情報を掲載する。不正確で古いNAP情報はローカル検索ランキングにネガティブなシグナルを送る原因の1つだが、正確なNAP情報はローカル検索ランキングにとってもっとも重要な要素の1つとなる
- 近隣地域に、正式名称と俗称と名前が2つある場合、または2つの地域の間にある場合、どちらの名前にターゲットを絞るべきかといえば、答えは「両方」になる
ピジョンの影響で、ローカル検索のためのオフページSEO対策方法まで変わってきています。引用はローカル検索にとっていまだにとても大切な要素ですが、自分のビジネスが掲載されているディレクトリも同様に重要です。
では、重要となるディレクトリをどのように知れば良いのかといえば、所在地付近の最適なWebページを探し、最初のWebページにつけるディレクトリのメモが必要です。たとえば、下のローカルパックでは、「カリフォルニア・マウンテンビューのハンバーガー1番人気店」のSERPは次のように表示されています。
検索結果の上位8位のうち7つはYelpのもので、8番目にはTripAdvisorが来ています。カリフォルニア州のマウンテン・ビューでバーガーショップを経営しているなら、YelpやTripAdvisorにビジネス情報を登録するべきということです。Yelpは現状、ローカルディレクトリとしてもっとも重要な存在ですが、Yelpだけ見ていれば良いわけではありません。場合や場所に合わせ、次のようなWebサイトが大事になることもあります。
- Open Table
- TripAdvisor
- Urban Spoon
- Angie's List
- 地元の商工会議所、地域団体、商業組合
最後に、引用場所が揃ったら、ローカル情報のオンページ・オフページの最適化、ローカルキーワードを狙ったコンテンツSEOも欠かさずに実行します。コンテンツを地元のオーディエンス向けにし、タイトルタグやメタディスクリプションなどの要素を、ローカルエリア情報を使いながら最適化します。とはいえピジョンはハミングバードに代わるものではありませんので、ユーザーの質問に答える・ユーザーの問題を解決するようなコンテンツ作りに集中することも忘れないでください。ハミングバードでの作業を、ちょっと地元向けにすれば良いだけです。
ランクブレイン
ランクブレインとは
ランクブレインとは、検索クエリ・トピックとの関連性解析を助けるGoogleの機械学習システム、あるいはAI(人工知能)システムの名称です。機械学習とは、コンピューターがタスクのこなし方、または、その過程の改善方法について自己学習することを意味します。技術的に言えば、ランクブレインはランキング・アルゴリズムではありません。ランキング・アルゴリズムはハミングバードの一部であり、検索ランキングにとって非常に重要な要素です。一方、ランクブレインは、クエリ解析アルゴリズムと考えてください。
Googleウェブマスターのトレンドアナリスト、Gary Illyesの「BD1」例にしたがって、「How to beat a video game without cheats(裏技を使わずにビデオゲームに勝つ方法)」を説明します。
従来Googleは「without(~せずに、~なしに)」をストップワードとして解釈しており、ストップワードは無視されていました。結果、ユーザーにはビデオゲームの裏技に関する検索結果がたくさん表示され、ユーザーが望む結果と真逆になっていました。
しかし、ランクブレインの登場により、Googleはユーザーが実際になにを探しているのか理解し、もっと関連性のある検索結果を表示できるようになりました。たとえば、「裏技を使わずに」ビデオゲームに勝つ方法を表示できるようになりました。
SEOにどう役立つのか
ランクブレインのSEOへの影響は非常に小さく、タイトルタグやWebページ読み込みスピード、またはローカル引用といったほかのランキングシグナルと同じように最適化することはできません。その代わり、個別キーワードのずっと奥まで考察し、意味的に関連する単語や表現を使い、トピックの関連性に集中するのがランクブレイン最適化のベストな方法です。
たとえば、「SEOのWebコンテンツ監査」についてランクインしたいSEO会社を経営しているとします。すると、従来と同じようにキーワード研究をしてトピックをどのように検索しているか見極める、というステップから始めなくてはなりません。そのあと、通常はWebコンテンツ監査を定義するさまざまな記事を書き、Webコンテンツ監査の方法やWebコンテンツ監査後にすべきことを説明します。
最近の傾向として、こうした3つの短めの記事を、SEOトピックをすべて網羅して1つにまとめたもっと複雑な記事にします。ランクブレインは質問に回答したり問題を解決したりできるようなWebサイトを探しているので、自分のコンテンツがSEOのWebコンテンツ監査についてもっと知りたい人にとって適切であると解釈してもらえるようになります。
モバイルゲドン
モバイルゲドンとは
グーグルは去年、モバイルランキングのアルゴリズムの更新をしましたが、検索マーケターたちから「モバイルゲドン」と呼ばれるようになりました。なぜなら、このアップデートにより、モバイル検索結果のランキングシグナルとしてのモバイル・フレンドリーの比率が大幅にアップしたからです。それでは「モバイル・フレンドリー」とはどういう意味でしょうか。突き詰めると2つなります。
- Webページ読み込みスピード:インターネットユーザーはせっかちだが、モバイルユーザーのせっかちさはそれに輪をかけたレベルになる。モバイルユーザーの40%が読み込みに3秒以上かかるWebサイトを見捨てる。そのような状況で「モバイル・フレンドリー」と感じてもらうには、「above the fold(スクロールせずに見られる画面領域、ATF)」を 1秒またはそれ以下で読み込めるスピードがGoogleでは必要となる。Webサイトのモバイル版を作成する際、DNSルックアップ、TCPハンドシェイク、HTTPリクエスト、レスポンスに0.5秒以上かかるので、実際に使えるのは0.4ミリ秒くらいしかない。Webサイト構築中にWebページ読み込み時間を短縮するステップの活用を勧める
- ユーザーエクスペリエンス:Webページを読めばユーザーが探している情報を見つけられる、または目的を達成できるようなサイトの構築がどうあっても必要不可欠だ。ナビゲーションが分かりにくいモバイルWebページはユーザーに好まれず、40%ものユーザーがモバイル・フレンドリーでないWebサイトから逃げてしまうことが分かっている。GoogleはユーザーにUXの質が低いサイトを提供することを好まないため、UXはモバイルSEOにとってとても大切なのだ
SEOにどう影響するのか
アメリカではモバイル端末からの検索数がPCに追いついたこともあり、モバイルSEOはすべてのデジタルマーケティング戦略にとって必要不可欠になっています。モバイル検索順位の悪さを無視できる余裕はもうなく、PC版のSERPが良くてもモバイルに引き継がれるとは推測できないということです。Webサイトのモバイル版最適化の際に使える成功例が以下です。
- 画像容量を小さくしたいなら、HTMLを使わないこと。HTMLはただ寸法を変えるだけで、容量は変わらない。ビジュアル要素の容量を小さくするには写真エディターを使う必要がある
- 可能であればブラウザーのリダイレクトが起こらないようにする。無理な場合もあるが、リダイレクトが1回起こるたびにHTTPリクエストが発生することを忘れてはいけない
- Flash、Silverlight、Javaを使わないこと。モバイル版ブラウザーではサポートされてないので当然読み込まれず、Webページ上のセクションが空白になってしまう。モバイルWebページで特殊効果を使いたければ、代わりにHTML5を活用する
- 間違ったボタンやリンクをうっかりクリックしないように、タップターゲットは十分に大きくし、間にスペースを入れる。ボタンは縦横最低で48ピクセル、ボタン端の周囲は最低32ピクセルの空間が必要だ。ユーザーはリンクの押し間違いをなによりも嫌うので、真剣に対処する必要がある
上のような作業がまだ済んでいないのなら、自分のモバイルWebページのモバイル・フレンドリー度はどれくらいか判断してみてください。WooRank Advanced Reviewがあればラッキーです。Webサイトのモバイル・フレンドリー度診断がすでに完了しているからです。モバイルセクションではWebページ読み込みスピード、タッチスクリーンへのレスポンス、レンダリングなど、モバイルユーザーのUXに影響する要素をすべて見つけられます。
新しくWebサイトのモバイルバージョンを作成中の場合は、「Accelerated Mobile Pages (AMP)」についても真剣に考えてください。AMPとはカスタマイズされたHTMLプロパティ、JavaScript、キャッシュを使い、Webページをほぼ瞬時に読み込む手助けをしてくれるオープンソース型のプロトコルです。現状GoogleはAMPをモバイルランキングのシグナルとしては使用していませんが、特にWebページ読み込みスピードとUX改善を目的にしているため、AMP非対応の競合に差をつけられます。
最後に
Googleのアルゴリズムはスパムユーザーの検出・処罰用に作られたものではないため、パンダやペンギンよりは怖くない存在に思えるかもしれません。こうしたアップデートのあとにランキングやトラフィックが低迷したとしても、新しいランキングシグナルや更新後のランキングシグナルに基づいてSEO戦略を調整すれば、検索順位やトラフィックを取り戻せます。
※本記事はWooRankのSEOシリーズの1つです。SitePointでの記事公開に協力してくれたパートナーへのサポートに感謝します。
※本記事の原文は2016年10月9日、モバイルファーストインデックスの発表前に掲載されたものです。
(原文:Google Algorithms Explained, Pt. 2: Provide Better Answers)
[翻訳:加藤由佳/編集:Livit]