現代は、新しいビジネスを始める時代としては、ある意味ではもっとも適していて、ある意味ではもっとも適していません。
現代が、新しいビジネスを始めることにもっとも適している理由は、インターネットのおかげで世界中の人にサービスを届けられるからです。現代が、新しいビジネスを始めることにもっとも適していない理由は、人にリーチする沢山の機会や方法があっても、注目が得られないことが増えてきているからです。実際、さまざまな調査で、人の注意力が持続する時間が歴史上、もっとも短くなっており、いまもなお減少し続けていることが明らかになっています。
2015年、テクノロジーの影響を見つけるためにマイクロソフトが実施した調査で人の注意力持続時間が明らかになっています。2000人を対象に調査をし、さらに112人の脳波を監視しました。その結果は衝撃的なものでした。人が平均的に注意力を持続できる時間は8秒だったのです。2000年の12秒から減少しています。さらにおもしろいことに、金魚よりも短い時間でした(金魚は9秒です)。
人の注意力が持続する時間の減少は、想像を越えていきます。遅いWebサイトがビジネスに与える影響についてのおもしろい統計があります。
- 51%のユーザーがWebサイトが遅いために購入をやめる
- ロードが2秒遅いだけでカゴ落ち率が87%になる(平均は70%)
- アメリカのEコマース市場において、ロードが遅いWebサイトは毎年30億ドルの損失が出ている
- Webサイトのロードが1秒遅れるとコンバージョンに7%の損失がでる
- ロードに3秒以上かかると40%の人がWebサイトから離れる
このように、世界中の人にさまざまな方法でリーチできるにもかかわらず、ページロード速度は非常に重要です。人の注意力持続時間が減少する中で、ビジネスを成長させるために必要な方法を紹介します。
1. モバイルに最適化する
とはいえ、明るい兆しもあります。人の注意力持続時間が減少している一方で、注目点はいろいろな場所に移っていることは事実です。マイクロソフトの調査で注目すべき点の1つが、人が1日の大半の時間を携帯電話に費やしていることです。18〜24歳の人には、以下の傾向があることが分かりました。
- 77%の人が、なにもすることがないときに携帯電話に手を伸ばす
- 52%の人が、30分置きに携帯電話をチェックする
- 73%に人が、寝る前に携帯電話をチェックする
- 79%の人が、テレビを見ながら携帯電話を使う
携帯電話はインターネットやECでは、多くのビジネスオーナーが考えているよりも遥かに役に立ちます。携帯電話が広く普及していて、簡単に使えるおかげです。実際、調査で示されたように2015年の1年間で、携帯電話が小売りに対して1兆ドルを超える影響を与えました。またインターネット業者の調査によると、EC全体のうちモバイルの占める割合が30%になったとのことです。
もしモバイルの戦略がないなら、いまが採用するタイミングです。ポイントを紹介します。
- モバイルに最適なサイトを作る:直接流入や検索エンジン経由のトラフィックが増える(グーグルの検索エンジンはモバイルに適していないWebサイトにペナルティをかけています)だけではなく、売り上げも増える
- モバイルの決済システムの導入:モバイルユーザーがWebサイトで簡単に決済ができなければ、最低ラインをクリアしていない
- Eメールをモバイル端末に最適化:ユーザーアクションをWebサイト外でコントロールすることも重要だ。ある調査によると、75%のEメールが読まれずに削除されている
2. モバイルアプリを有効活用する
モバイル体験に焦点を当てて突き詰めると、モバイルアプリ体験の最適化に行き着きます。
私たちは現在、とても頻繁にアプリを使っています。お気に入りのブランドをチェックするのもWebサイトではなくモバイル端末にダウンロードしたアプリを使います。
コムスコアの調査によると、インターネットのトラフィックのうち56%がモバイルアプリによるものでした。この数字は急速に上昇しています。もしユーザーが高頻度でWebサイトにアクセスしているなら、ユーザーがアプリをインストールしたいだけでなく、ビジネスとしてもアプリを作る意味があります。
3. 露出頻度を増やす
ユーザーの注目が得られないとき、注目を集めるためにいろいろなことをユーザーに対して提示したくなります。ある記事によると、人は毎日5000もの広告に接しているとのことです。5000の広告の中からどうすれば気づいてもらえるでしょうか。
それは繰り返すことです。繰り返しは、気づいてもらったり好きになってもらったりするために、心理学的に非常に重要な方法で、注意力持続時間が減少している現代では特に有効です。実際、ある調査によると、TV番組で意図的に置かれたある製品にまったく気づかなかったとしても、その製品の広告を露出することによって、人はその製品に対して愛着を覚える傾向にあるという結果が出ています。
実践的な方法として、7回ルールがあります。気づかれるためには、最低7回はマーケティングオファーを提示する必要があるというシンプルな法則です。その回数は多ければ多いほど良いです。特に注意力持続時間が少なくなっているため、7回より多く提示することが必要になっています。
解決策は、マーケティングのチャネルを複数持つことです。オンライン、オフラインの両方でできるだけ多くのチャネルを使って、見込み顧客に対してメッセージを送ります。もっと大切なことは、繰り返しコンタクトが取れる見込み顧客のリストを作ることです。結果として売上が跳ね上がります。
4. ターゲティングする
宝石が欲しい人におむつの広告を出すことは、恐ろしく時間の無駄です。もし、オンラインでさまざまなターゲットに商品を提供する場合は、オファーが正しいターゲットに届けられるように注意深くセグメントしなければなりません。Marketing Sherpaによると、ターゲティングによってコンバージョンが208%上昇したというデータがあります。
ユーザーをひとまとめに扱わないでください。代わりに、ユーザーの行動を注意深く観察して、彼らの関心に沿ってセグメントしてください。そうすれば、ユーザーの興味に沿ったオファーを送れます。受け入れられるだけでなく、興味のないオファーから抜け出して注目を集められます。
(原文:How to Build a Thriving Business in a World of Declining Attention Spans)
[翻訳:萩原伸悟/編集:Livit]