麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第6回
【麻倉特薦】ほかに、ハープ&ギターユニット「tico moon」など
スウェーデンBIS、栄光レベルに音がいい小川典子のサティ
2016年10月29日 12時30分更新
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第三番 - バルトーク:ピアノ協奏曲第二番
Lang Lang
2014年に、「ザ・ハイエスト・レベル」とのタイトルでBD、BDオーディオで発売されていたドキュメンタリー映像作品音源のハイレゾ配信版だ。
素晴らしい演奏と録音。ベルリン・フィルハーモニーホールの透明なソノリティを活かし、オーケストラ、ピアノともに実にクリヤー。会場の空気が清涼だ。ランランの超絶テクニックも、眼前の直接音というより、このホールのBブロック(2階正面)で、直接音とホールトーンのちょうど良いブレンドで聴いてるような、コンサート的な臨場感だ。スタジオで録音したならば、ピアノもオーケストラもディテールまで明瞭に収録するところだが、これはこれでこのホールならでのソノリティが心地良い。もっと細部まで明瞭に聴きたい気はするが。
FLAC:96kHz/24bit
Sony Music Japan International Inc.、e-onkyo music
NULLSETとは数学用語で「空集合」のこと。音楽的には、特定のジャンルに偏らずに、広い範囲をカバーしようとの思いからのネーミングだろう。前衛ジャズギタリストの鬼怒無月、クラシックの鈴木大介が2007年に結成したデュエットだ。通算5枚目にして、はじめての全曲オリジナル作品集。
1曲目、「Voice of Calling Sun ~ 太陽を呼ぶ声」。ひじょうにナチュラルで、尖鋭。アコースティックの温かさと、弦の振動の生々しさが同居する。音場はセンターを中心にやや右に鈴木、やや左に鬼怒が定位する。4曲目「Lovers ~ 恋人たち」。ハーモニーと旋律が明確に役割分担され、それが曲の進行とともに攻守ところを変えるのが面白い。ギターの直接音が重視された明確、明瞭な録音だ。
WAV:96kHz/24bit
FLAC:96kHz/24bit
DSF:5.6MHz/1bit
DSF:11.2MHz/1bit
Silent, Inc.、e-onkyo music
Vinicius canta Antonio Carlos Jobim
Vinicius Cantuaria
ブラジル出身のシンガー・ソングライター、ヴィニシウス・カントゥアリアの“ボサ・ノヴァの父”アントニオ・カルロス・ジョビンへのオマージュアルバム。9曲目の「イパネマの娘、Garota de Ipanema」。冒頭のギターが生々しい。編成はヴォーカルに加えギター、パーカッションというシンプルなものだが、ボーカルは音像がひじょうにワイドで、センターにいるのだが、体積感が音場を広く覆う。でも、決して不自然ではなく、優しげな叙唱はこの曲の持つ雰囲気を上手く表している。力まず、ジェントルな感情で、しっとりと歌うヴォーカルが魅力的。
10曲目「フィリーシダFelicidade」。リズムの細かな刻みに乗って、ゆったりとした、気持ちのよい叙唱が続く。ナチュラルで、人工味を排した録音は耳に優しい。
WAV:96kHz/24bit
FLAC:96kHz/24bit
WAV:192kHz/24bit
FLAC:192kHz/24bit
DSF:2.8MHz/1bit
DSF:5.6MHz/1bit
SONG X JAZZ、e-onkyo music
tico moon(ティコムーン)はハープとギターのデュエット。2001年7月、ハープ奏者の吉野友加とギター奏者の影山敏彦によって結成された。3年ぶり、通算8枚目のアルバムだ。ふたつの楽器は音調がまったくが違うが、どちらも撥弦楽器であり、その意味で同調性が高い。音色が異なるので、どちらの楽器も立つ。
1曲目Clematis。右側のギターのアルペジォに乗って、左のハープが旋律を奏でる。気持ちの落ち着くアンサンブルだ。弦の弾きから発せられる音が音場に拡散していく様が美しい。2曲目Waltz for Rosemary。しっとりとしたワルツ。オーケストラでのハープはグリッサンドが中心だが、旋律楽器としても見直すべきだ。3曲目は遊佐未森の歌で「ラズベリー 」。遊佐のアニメ声のようなラブリーボイスとギター、ハーブとの融合は素敵だ。
WAV:96kHz/32bit
333DISCS、e-onkyo music
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