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FeliCaが生き残るとは限らない 日本のモバイル決済が変わる日 第11回
Apple Pay登場の裏にあった本当の戦い【倶楽部】
2016年10月25日 18時00分更新
どうも。ちゅーやんです。
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本日紹介する記事は、ちょうど本日から日本でもサービスが開始となったApple Payに関する連載。毎週水曜日にASCII倶楽部で更新中の「FeliCaが生き残るとは限らない 日本のモバイル決済が変わる日」。著者である鈴木淳也氏は、NFCとモバイル決済を専門分野としており、ASCII倶楽部で更新中の連載では世界各国のNFC事情とその歴史を綴っています。
先週19日に公開した「Apple Pay登場の裏にあった本当の戦い」ではタイトルのとおり、Apple PayをテーマにアメリカでのNFC事情を追っています。本日はこの記事から、無料公開部分を紹介します。
前回、Apple Pay登場までの米国でのモバイル決済事情を追いかけてきたが、今日Apple Payとそれに続くサービスが花開きつつあるのも、失敗の過去とインフラ整備にかけた時間とコストがあってこそのものだと考えている。残念ながら自然消滅となったGoogle Walletだが、Apple Payと大きな共通点がある。それは「ユーザー目線のサービス」という点だ。あくまでユーザーの利便性を考え、より良い生活環境を実現しようという考えが根底にある。だがサービス事業者の中には、一般ユーザー向けのサービスでさえ、あくまで提供者側の理論がそのサービスに反映する(反映せざるを得ない)ケースがある。
今回は、Apple Pay登場前後の米国を探訪しつつ、その裏で起きていた事業者間の“綱引き”について触れてみたい。
Apple Payマークを探せ
「アクセプタンスマーク」という言葉をご存じだろうか。決済業界におけるアクセプタンスマークとは、「どの決済手段が使えるか」を示すために小売店やWebサイトなどで表示されるサービスのロゴマークのことだ。例えばクレジットカードが利用可能な飲食店などに行くと、入り口やレジ横に「American Express」「JCB」「MasterCard」「VISA」といった国際カードブランドのロゴが掲示されているのがわかる。電子マネーであれば、「Edy」「iD」「QUICPay」「交通系カード(Suicaなど)」のロゴが掲示されている。これがアクセプタンスマークで、自分が持っている決済手段が当該の店で使えるかどうかが一目でわかる目印となっている。
このアクセプタンスマークに、最近「Apple Pay」の掲示が増えている。掲示の仕方はケースバイケースだが、店の入り口にロゴを掲示したり、あるいはクレジットカードを読み取る機械の液晶部分にロゴを表示させるケースがあったりとさまざまだ。過去には、いまはなき「Google Wallet」のロゴを表示しているケースがあったり、最近では「Android Pay」のマークが含まれていることもある。興味深いのは、このロゴを掲示することで「すべてのApple Pay決済に対応している」と示している点だ。例えば米国では、American Express、Discover、MasterCard、VISAの4つの国際カードブランドが対応しているが、Apple Payのアクセプタンスマークはこれらがすべて利用可能だということを意味している。実際には、カードを発行する銀行(イシュア)が対応の有無を握っているので、これらカードブランドのほか、当該イシュアのデビットカード(ATMカード)も決済に利用できる。
ただし、これらは国によって事情が違っており、例えば同じ「Apple Pay」のマークが掲示されていても、中国では決済手段として「銀聯カード(China UnionPay)」しか選択できないため、あくまでも国ごとの事情を反映したものとなる。これを日本のケースに当てはめれば、「日本の店舗でApple Payのマークが出ていても海外でApple Payとして使えていた決済手段が使えるわけではない」といえる。日本ではiDまたはQUICPayのネットワークを決済に使うため、当然海外で一般的なMasterCardやVISAで使われている非接触決済(Type-A/B)は利用できない。
Apple Payのマークが見られなくても、写真にあるような非接触決済の読み取りが可能なリーダーがレジ横についていれば、たいていの場合はそのまま決済できる。米国では「MasterCard PayPass」「VISA payWave」といった表示がされていることはほとんどなく、判断基準は前出のApple Payのアクセプタンスマークと、実際にレジ横に行って決済端末を見るしかない。写真のようにわかりやすいケースでは問題ないが、たまに非接触通信(NFC)のためのアンテナが液晶部分に取り付けてあることがあり、その場合はカード読み取りのタイミングでNFC対応クレジットカードやモバイル端末を画面に近付けてやる必要がある。対応しているかは、実際に支払いタイミングで画面に非接触通信のマークが表示されるので、それで判断すればいい。またIngenico製の決済装置の場合、装置の型番が「i~」と小文字の「i」で始まるものがあり、これは非接触決済に対応していることを意味している。ただ米国の7-Elevenのように、Ingenico製のi端末を導入しながらNFC決済機能が無効化されているケースも少なくなく、直接の判断基準にはならない。
こうした端末は、まさにApple Payが登場した2014年後半の1年前後から急激に米国で増え始め、筆者がよく訪問するような大都市では必ずといっていいほど目にするようになった。特にチェーン店では系列ですべて一律に決済端末が刷新されるため、事前に把握していれば狙って入ることも容易だ。実際、筆者はApple Payがリリースされてから2年間、店頭で財布を取り出す機会はほとんどなく、特に現金はチップや割り勘、自販機やコインランドリー以外の用途では使っていない。高額決済の場合を除けば(メインの銀行口座がApple Payに登録されていない日本にあるため)、米国滞在中の買い物はほぼApple Payで済ませている。Google Walletが初めて登場して非接触決済を使い始めた2012年当時、Macy's、7-Eleven、McDonald'sなど先行導入していた店舗で細々とサービスを試していたころに比べれば、雲泥の差だ。
Apple Pay登場の裏で起こっていたこと
さて、話をApple Payが登場するちょうど1年前の2013年10月中旬に戻そう。この時期、GSMA主催の「NFC & Mobile Money Summit 2013」が米ニューヨーク市で開催されていた。主に決済方面でのNFCに暗雲が漂い始めていた時期であり、長らく開催されてきたGSMAの年次イベント「Mobile Money Summit(MMS)」シリーズもこのニューヨークのものが最後となった。ロンドン五輪での事例をはじめ、国によってはNFCによる決済や交通インフラが徐々に整い始めていたものの、なかなかブレイクスルーを見つけられない……というのがこの時期のムードだ。
特にモバイルNFCの分野は絶望的で、このNFC/MSSでもGoogle Walletのライバルとなる「Isis(後にSoftcardに改名)」がデモストレーションを行なっていたが、モバイルウォレット(Mobile Wallet)サービスはほとんどがベータテストを抜けていない状態で、まともに立ち上がっていたサービスは世界でも数えるほどしかなかった。1年後にApple Payが登場して情勢が大きく変化するのだが、このときすでにモバイルウォレットとは別の部分での戦いが始まっていた……。
続きは「Apple Pay登場の裏にあった本当の戦い」でお楽しみくださいませ。
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