当時のPCユーザーから熱く支持されていたTAKERU
30年前のPCソフトは、パソコン専門店でパッケージソフトを購入するというのが一般的。店頭在庫には限りがあるため人気ソフトは品切れしやすく、発売日に入手できないことも珍しくなかった。また、珍しいソフトや古いソフトはメーカーから取り寄せとなるため、欲しいと思っても手に入るのは1週間後……という時代だ。
そんな30年前の1986年。まだ昭和の時分にいち早く“ダウンロード販売”を実現したのがブラザーのソフトベンダー『TAKERU(武尊)』だ。メニューから欲しいソフトを選んでお金を入れると、その場でマニュアルを印刷開始。また、出てきたメディア(フロッピーディスクなど)をセットするとソフトをダウンロードして書き込んでくれるため、すぐに持ち帰ることができた。新・旧はもちろん、メジャー・マイナー問わずどんなソフトも品切れなく購入できるという、画期的な自動販売システムだったのだ。サービス展開時には127台から始まったTAKERUも、最盛期には全国に約300台が設置されていたので、当時のユーザーであれば見たことがある、使ったことがあるという人も多いだろう。
メーカー製のソフトはもちろんだが、イベントでしか入手できないような同人ソフトも扱っていたため、イベントに参加できない人にとってかなりありがたい存在だった。こういった点も、ユーザーから熱く支持されていた理由のひとつといえるだろう。
TAKERUには3つのモデルがある。初代の『SV-2000』は「武尊」の名前で登場し、青と白を基調としたデザインを採用していた。台数を大きく増やし、全国へと展開したのが2代目となる『SV-2100』だ。色は赤とグレーへと変更され、より目立つ筐体となった。「TAKERU」と聞いて思い出すのはこの姿、という人も多いだろう。
3代目の『SV-2300』では2代目と比べ処理速度や通信速度を高速化。さらにTAKERU CLUB用のカードリーダーを装備したほか、取り扱いソフトを拡大し、より多くのソフトが販売できるようになった。色は黄色とグレーへと変更されてはいるほか、ドライブの位置が少し変わっているものの、デザインそのものは従来通りだ。なお、この3代目では「ある秘密の機能」が追加されており、これが後の事業へと大きく貢献することになる。
実は初代の前にプロトタイプがあった。実際に登場したTAKERUとはデザインがまったく違い、どこか証明写真機を連想させる半個室のようなデザインが面白い。このプロトタイプ時は、コントローラーとしてPC-98を使用していたという。
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