(編注)この記事は米国時間2016年6月9日に掲載されたものです。WWDCの発表直前の情報をもとに執筆されているため、発表内容と一部異なる場合があります。
アプリの売上もデバイスの売上もダウントレンドに突入し、モバイル開発者になることが厳しい時代になりました。個人的な意見ですが、これは新しい産業が成熟しただけで、最終的にはうまくワークするように感じています。しかし、著しい収益の減少を見ていると、主要なプレーヤーたちが悩んでいることも確かです。
グーグルは「Instant Apps」という新しいアプリの戦略を最近、Google I/Oで発表しました。これは、ユーザーがアプリストアを経由することなく、アプリを一時的に実行する方法です。興味深い考えですが、開発者(とグーグル)がどうやって開発の努力を収益化できているのかははっきりしていません。
アップルの開発者向けイベントであるWWDCの開催直前、アップルのPhil SchillerはThe Vergeのインタビューを受け、どうすればユーザーがアプリにお金を支払ってくれるか、また開発者(とアップル)が持続的に収入を得るためにはどうすればいいか、アップルの新しい考えを語りました。
定期購読の開放
トライアルや主要アップデートに対する課金機能など、App Storeに対する批判や制限を脇に置いて、Phil Schillerはアプリの定期購読に関する考えを詳しく語りました。
アプリの定期購読は真新しいことではなく、すでにいくつかのアプリカテゴリーで利用できます。具体的には、ニュースやクラウドサービス、出会い系、オーディオ/ビデオが含まれます。しかしこのリストから明らかに抜け落ちているものがありますね。それが、(App Annieによると)App Storeの収益の75%を占めている「ゲーム」です。
モバイルゲームが好きな人は多いですが、いまのところ収益化する選択肢は限られています。ゲームでたくさん収益を上げる開発者もいる一方で、ゲームプレーヤーは複数回の課金システムに眉をひそめます。ゲームにおいて定期利用料を設けることは、ほかのプラットフォームでゲームを開発した経験がある人も納得しやすいでしょう。
定期購読モデルが使えるほかのアプリカテゴリーもありますが、関係者はたいていアップルのこのモデルに対して消極的です。よく知られたサービスとしては、NetflixやSpotify、Amazon Instant Videoがあります。アップルは収益の30%の差し引きを求めており、定期購読サービスをうまくワークさせるには、コストを吸収したり、料金にコストを上乗せたり、ユーザーの利便性が悪くなるような場所への登録を促したりしないといけません。
アップルは、6月13日にすべてのカテゴリーでの定期購読プランを開始するのと同時に、1年以上サービスを使い続けた定期購読者がいた場合に、開発者により高い収益を分配することを提示しました。従来70/30だったアプリ開発者の収益の割合が、一年経過後は85/15になり、アプリのコストを吸収できるようにする予定です。
いまのところ、この発表への反応はまちまちです。収益の改善と安定化を予想している人もいれば、リピート顧客層を遠ざけるオプションだと見ている人もいます。
比較的簡単なモバイルアプリ以外にも、定期購読が適用できそうな領域があります。アドビのCreative Cloudモデルは、顧客がはじめに感じた疑念がなくなったことで、会社にとって大きな成功がもたらされ、マイクロソフトのOffice 365もまた同じような結果を享受することになりました。iPad Proのような製品や、デスクトップアプリにも適用される「モバイル」アプリなどいろんな複雑なことができているのですから、定期購読モデルが成功しないわけがありません。
開発者は、循環性のある収益によって主要なアップデートに資金を注入することを心配しなくてよくなるかもしれません。リリース周期に関する問題はモバイルプラットフォームには付き物ですが、いままでそれを支えるマネタイズモデルがありませんでした。
検索連動型広告
アプリユーザーと開発者がほかに懸念しているのは、App Storeでのアプリの見つけにくさです。ユーザーは探しているアプリが見からないと漏らし、開発者は似たようなアプリ群の中から自分たちのアプリを見つけてもらえないかもと不安になっています。Phil Schillerはアルゴリズムを調整すると問題を解決できると主張しますが、ここまで実証するには至っていません。代わりに、多くの人に関心がある広告について話す時間を設けました。
アメリカだけで90億ドルのビジネスである検索連動型広告に参入するもので、ベータ版も13日に発表されます。
検索結果と関連した広告が一緒にリストされ、実際にユーザーからは関連しているように認識されます。開発者が注目すべきは、閲覧者がその広告をクリックしたかどうかのみ。これは「ソフト」ネットワークで、13歳以上だけが見ることができ、ユーザーデータは何も提供されません。さらにユーザーは、このサービスをオプトアウトする(選択しない)ことも可能です。
未来へのアプリ
8年という短期間で、App Storeは革新的なお金を稼ぐ場所から、少し疲弊し、時代遅れな存在に感じられるようになりました。App Storeの制約や(最近改良されましたが)長くかかる承認期間は、はじめは品質と高い収益を担保するための保証でした。しかし現在、これらが開発者とユーザーにとって足かせになっています。
いまが変化のときです。しかし、ちょっと改良しただけで全員を満足させ続けられますか? その場限りの対処ばかりで、時代遅れのモデルの問題の本質は少しも改善せず、破滅してしまう寸前なのでしょうか?
あなたの意見を聞かせてください。アップルの変更点についてだけでなく、新しいApp Storeのモデルに関するあなたの考えを知りたいです。
(原文:What Do Apple’s App Store Changes Mean for Developers?)
[編集:Livit]