メールマーケティングは、計画的な段階を踏んで顧客の反応を生み出し、最終的にはターゲット層をコンバージョン(商品の注文、問い合わせなど)させることが目的です。他のマーケティング手法と同様に、(商品やサービスに対する)認知度を高め、潜在顧客の関心を引き出し優位性を築くことを意図して、メールで情報を発信します。
最初からいきなり優れたメールマーケティングを展開することは難しいですが、不可能ではありません。このガイドでは、コンバ―ション率を劇的に高め、成果を生み出すメールマーケティングの基本について解説します。「送信」ボタンを押す前にするべき作業の流れが分かります。
それでは、潜在顧客を魅了し、受け入れてもらえるメールマーケティングの方法について考えていきます。成功に導くために必要なステップを理解してください。
- メールマーケティングの目標を決める
- 関係者全員がメールマーケティングの必須事項リストを作成する
- メーリングリストのセグメンテーションをする
- メール文案の概略をまとめ、最適な画像を探す
- ニュースレター用テンプレートを選んで、コンテンツを挿入する
- メールトラッキングを設定する
- テスト送信して修正する
- 最終版のメールを送信する
- フィードバックデータを収集する
- 必要に応じてマーケティング戦略を修正する
1. メールマーケティングの目標を決める
メールマーケティングを始める前に、マーケティング担当者は目標を設定し、どのような顧客行動を掘り起こしたいのかをしっかりと理解する必要があります。メールマーケティングの全体的な戦略を練る上で、おおよその業界のベンチマークを示す統計を調べておくこともかなり有益です。MailChimpの統計には、会社の規模ごとのデータが示されています。
会社規模 | 開封率 | クリック率 | ソフトバウンド率 | ハードバウンド率 | 迷惑メール率 | 解除率 |
1〜10 | 21.95% | 2.97% | 0.66% | 0.52% | 0.03% | 0.30% |
11〜25 | 20.99% | 2.58% | 0.65% | 0.51% | 0.03% | 0.25% |
26〜50 | 21.82% | 2.94% | 0.42% | 0.31% | 0.02% | 0.17% |
50〜 | 23.10% | 2.85% | 0.62% | 0.56% | 0.02% | 0.20% |
キャンペーン目標は、すべて5W1Hルールで要約できます。
- なぜ(WHY)メールを送るのか決める
- 誰(WHO)をターゲット層として据え、送るのか把握する
- 具体的に何(WHAT)を伝えたいのか決めて、脱線しないようにする
- 潜在顧客の思考パターン(HOW)を見つけ、彼らの心に響く言葉を使う
- メールを受け取った後にアクセスして欲しい場所(WHERE)に誘導する
- メールを受け取った人が行動に移したくなる絶好のタイミング(WHEN)にメールが届くようにする
要約に沿った質問として考えられるのは、次のようなことでしょう。
- メールは1回だけ送信する予定ですか?
- メールに本格的な広告を載せたいですか?
- スペシャルな新しい特色や提供するサービスについて告知したいだけですか?
その他にも理由に関わらず、目標やメールの概要、デザインのアイデアを必須事項にまとめておきます。
2. メールマーケティングの必須事項リストを作成する
ガイド決定版は、今後のメールマーケティングの基本になるだけでなく、メールマーケティング作成過程に携わるすべての関係者にとって大いに役立つはずです。以下は、このガイドに沿って作成する際にマーケティング担当者が考慮すべき、最も一般的な必須事項リストです。
- 概要
- 何のためのメールか(新しい商品、サービス)
- 目標
- キャンペーンに期待する成果(たとえば、潜在顧客にWebサイトで登録してもらう、サービスを契約してもらう、商品の注文など)
- 文調
- 情報の伝え方(カジュアル、フレンドリー、陽気、前向きなど)
- 誰に対して書くのか
- 送付先になる典型的な潜在顧客を想定
- セグメント
- 関心を示して、ニュースレター購読を申し込んだターゲット層/サイト訪問者を徹底的に選定
- 件名
- 関心をひく簡潔で覚えやすいキャッチフレーズ
- テンプレート
- メールのレイアウト、または選択した既製のテンプレート
- トラッキング
- メールの追跡方法、特定の追跡要件
目標は「ウェビナーにサインアップしてもらう」「特定のアイテムを購入してもらう」のように、できるだけ具体的に設定します。
メールマーケティングと解析を合わせれば、実際にクリックスルーする人数を追跡するのに役立つことは言うまでもありません。ニュースレターサービスでは通常、独自の解析ソフトが使われていますが、Google Analytics for tracking email campaignsを利用する方法もあります。
最後に、メールの骨子を詳細に組み立てます。
- 画像の位置と具体的な見え方
- コンテンツの量と伝える内容
- 外部リンクの位置と伝えるべきメッセージ
必須事項すべてを注意深く書き出し、すべてのメールマーケティング関係者を動員して、何をすべきなのか同じビジョンを持つことが極めて大切です。配信しようとしているメールの最終目標を見失わないようにしてください。メールの細部と各要素(件名、イメージ、内容)はキャンペーンの強みになるはずです。
3. メーリングリストのセグメンテーション
メーリングリストのセグメンテーションには、一定の特徴によってリストを分割してコンバ―ション率を引き上げる狙いがあります。MarketingSherpaによると、セグメントしない場合と比べ、セグメントしたメールはクリックスルーが50%増加しています。セグメンテーションの基準例は次のようになります。
- 人口統計(年齢、性別、所在地)
- 職業
- 関心/趣味
- 購入歴
- 購買意欲
- 地理位置情報(ジオロケーション)
メールマーケティングの目標を達成するためにメーリングリストをセグメントしたあと、マーケティング担当者は受信者がメール開封後にコンバージョンに向かって行動するためには、具体的に何をどのようにしたらよいのかを受信者の立場に立って考えなければなりません。また受信者に、誰からなぜメールが届き、どのような利益があるのかを理解してもらわなければなりません。Wishpondのような管理ソフトを使えば、人口統計とターゲット層の関心に対するセグメントデータを挿入できます。
もう1つ重要なことは、メールをパーソナライズすることです。受取人の名前を入れることは最低限の絶対条件です。パーソナライズの次の段階は、下の名前を入れる、(会社名ではなく)個人名を入れてメールを送る、自動応答メールをよりパーソナライズさせる、クライアント名を収集するためにメールからのランディングページを使うことです。
メールの文面をより個人的な文調で統一すると、メールを一層パーソナライズできます。最も簡単な方法は、特定の人に言及しない非人称の文章ではなく、「あなた」、「私」、「私達」のような二人称を使うことです。次の例で違いを感じてください。
「あなたは無料の商品体験版をわざわざ待つ必要はありませんよ。私たちはあなただけのために用意しています。遠慮せず、今すぐダウンロードしてください!」
というのと、
「無料の商品体験版のダウンロードが現在可能です」
では、どう違いますか?
4. メール文案の概略をまとめ、最適な画像を探す
必須事項リストを準備してメーリングリストをセグメントしたら、すぐにメールのキャッチコピーを書き始めましょう。4Pテクニックを使って、潜在顧客の要望に応えた内容にしましょう。テクニックは、約束(promise)、想定(paint)、証明(proof)、説得(push)の4つです。
- 約束(promise)
- 短く、商品やサービスの利点についてターゲット層の要望に直接訴えるものでなければなりません。
- 想定(paint)
- 約束した利点がある商品やサービスが届いた後に顧客自身が享受できる利益を説明します。
- 証明(proof)
- 提供された商品やサービスを使って、第三者が期待通りの利益を得ていることを示して、約束が本当であるという確信を持たせます。
- 説得(push)
- 理想的な世界が描かれている想定段階に結びつく、CTA(具体的な行動の呼びかけ)です。
4Pテクニックは非常に効果的ですが、キャッチコピーを書く際には注意すべき点がいくつかあります。
- 主題から脱線せずに、簡単、簡潔にする
- 有益な関連情報を提供して興味をもたせる
- 黒丸や太字、イタリック体などを使って一目で理解できるコンテンツにする
- 見やすく分かりやすいところに「CTA(Call To Action)」ボタンを配置する
- パーソナライズする
- 一定の文調で統一する
- 注意深く校正と修正する
読者の心を惹きつけ、適切なイメージが湧くような言葉遣いでこそ良いメールができます。そのイメージがメールの狙いに合致し、サポートするものになっているか確認してください。マーケティングのプロは一般通念とは異なり、写真素材を過度に使用すると読者離れにつながるとして、避けるよう勧めています。画像が適切な大きさで、メールテンプレートに合っているか確認してください。画像が多くなりすぎると、ファイルサイズが増えて、個々の配信可能量(デリバラビリティ)が減ってしまうのでご注意ください。メールサイズは102kb未満に抑えてください。
5. ニュースレター用テンプレートを選ぶ
ニュースレター用テンプレートをイチからコーディングするのは、プロのWebデザイナーにとっては簡単なことですが、限られたHTMLコードの知識しかない個人にとっては少し難しいです。メールデザインに関しては2つの方法があります。プログラマーに依頼するか、オンラインで提供されているテンプレートの中からニュースレター用を選んで使う方法です。
最新のWebデザインのトレンドを取り入れ、レスポンシブデザインにすることは、メールのコーディングの際に考慮すべき大きなポイントです。顧客がどんなメールクライアントやガジェットを使っていても、一貫したメールを読めるようにすることは非常に重要です。完全なレスポンシブメールのニュースレター用テンプレートを使えば、どの携帯デバイスでも最適な状態でメールを見られるよになり、表示がおかしいために数秒で削除されてしまうことも防げます。
MailChimpのようなサービスは、無料でさまざまなレイアウトが提供されていてとても便利なので、変わったニュースレターを作成することもできます。自分でレスポンシブメールのコーディングに挑戦したいけれど、何から始めてよいか分からない場合は、作成方法を基礎から解説しているチュートリアルを使って挑戦してみてください。そこまでは必要ないという人は、プロのWebデザイナーが開発したニュースレター用メールテンプレートを利用してください。
ニュースレター用メールデザインの一番素晴らしい点は、たくさんの選択肢があることです。試すのを恐れず、何か他とは違うものに挑戦してみてください!
6. メールトラッキングを設定する
メールマーケティングがうまくいっているかを確かめるのは、メールトラッキングが一番確実な方法です。メールトラッキングの方法についてまったく分からない人はHubSpotの無料のメールプランニングとトラッキングテンプレートを確認し、トラッキングのマーケティング・メトリクスを読んでください。HubSpotは以下の6つのマーケティング・メトリクスがメールマーケティングのパフォーマンスを測る上で重要であると考えています。すなわち、クリックスルー率、コンバ―ション率、バウンス率、リスト成長率、メールのシェア率/転送率、総合的な投資利益率です。
- クリックスルー率
- メール内のリンクを1つ以上クリックした受信者の比率
- コンバ―ション率
- メール内のリンクをクリックして、期待する行動(フォームに記入、商品の購入、サービスの注文など)をとった受信者の比率
- バウンス率
- 受信者のインボックスに届かなかったメール数の比率
- リスト成長率
- 受信者のリストの増加率
- メールのシェア率/転送率
- 「このメールをシェアする(share this)」をクリックしてソーシャルメディアでシェアしたり、「友達に転送する(forward to a friend)」ボタンで、メール転送した受信者の比率
- 総合的な投資利益率
- メールマーケティングの投資額に対してどれだけ収益をもたらしているか、総収入を総支出で割った比率
MailChimpの「Reports」など、自動のトラッキングや解析ツールにはさまざまなものがあり、対話的なグラフ、モニターの傾向、購読者のアクティビティレポート、収益レポート、メールを開いた場所、バウンス、解除、業界比較、クリックマップなどメールマーケティングのパフォーマンスを調べるたくさんの機能を備えています。メールマーケティングとリンク追跡にGoogleアナリティクスをActiveCampaign、Email on Acidなどのサービスと組み合わせて利用できます。
7. テスト送信する
メールのテスト送信はかなり重要です。潜在顧客が使用しているソフトウェアやデバイスによってメールの見え方がどのように違うかは試してみないと分かりません。せっかく送信するメールが迷惑メールだと思われたくないですよね?
メールのテスト送信は、メールソフトが異なったテンプレートとして認識する可能性があるのでとても重要です。たとえば、Gmailはスタイルのレンダリングに問題があり、Outlookでは処理するのにワードエンジンを使うので、メールのレイアウトが崩れる可能性があります。
A/Bテストは、メールマーケティングを成功させるメトリクスを大きく進歩させるために導入されるものです。簡単に説明するために、メールマーケティングでA/Bテストを実施する場合、マーケティング担当者がすべきことを列挙します。
- メーリングリストから小標本を選ぶか、(メールマーケティングの目的に基づいて)全リストのセグメントを分割
- 2通の異なるパターンのメール(「A」と「B」)を送信
- A/Bテストでは「A」が対照群、Bがバリアント群(実験群)
- 開封率、ページビュー、クリックスルー率、および(または)コンバ―ション率の追跡
- 最も良いテストメールのバリエーションの選択(リストの大多数への送信用に「A」または「B」を選ぶ)
- 少しだけ修正、改良
Campaign MonitorやMailChimpなどの人気の高いメールマーケティングサービスはA/Bテストツールを備えています。Active CampaignとLitmusも同様です。いずれにせよ、実験データ検索過程をより簡単にできるテストツールを利用します。
しかし、1つ覚えておいて欲しいのは、結果が食い違う可能性がある時間ベースの影響を減らすために、テストは同時に実施する必要があります。正確な結果を得るには、できる限り大きなサンプルでのテストが必要です。実験データは成功の鍵となるので、より細かく注意を払ってください。より良い結果を得るためには、1回につき1つのパターンのテストを勧めますが、A/Bテストの代わりに多変量テストもできます。
できる限り頻繁にメールマーケティングのテストを実施します。
8. メールの最終版を送信する
ここまで完了したら、いよいよメールやニュースレターの最終版を送信します。でもちょっと待ってください! もう1つだけ確認することがあります。それは最適な時にターゲット層へメールが届くようにすることです。メールを送信するのに完璧なタイミングというのが本当にあるのでしょうか? ええ、もちろんあります。
WordStreamによると、メールを送るベストタイミングは、
- 昼間
- 月曜か金曜以外
- イベント指向メールはイベントの3〜5日前に送信
- MailChimpによると、ニュースレターの配信日で最も多いのが火曜日と木曜日
- メール送信に最適な時間帯は、午後1時から3時(午前9〜11時も同様にお勧め)
9. フィードバックデータを収集する
最後に、潜在顧客のフィードバックを集め、メールマーケティングの成果を測ります。すでにトラッキングや、メールマーケティングを成功させるために重要なことについて解説したので、ここではCampaign Monitorが提供するデータとレポートを紹介します。
- 開封率
- メールを開いて読んでもらったメールの合計数の比率です。理想の開封率は20〜40%の範囲で散らばっています。もし開封率が40%以上ならメールマーケティングはかなり効果があります。おめでとうございます! もし、20%未満ならマーケティング戦略を練り直す必要があります。
- クリックスルー率
- メールを開いた受信者の合計数の比率を表しています。最適なクリックスルー率は20〜30%の間です。
- メール訪問数
- メール内で案内されたリンクやCTAからWebサイトへの訪問数です。
- コンバ―ション率
- コンバ―ションの数と、メールマーケティングで生じた収益を示します。他のルートと比較したメールマーケティングの投資の収益を把握するのに役立ちます。
- 解除率
- メールの受信者の合計数との比率で表します。正常な解除率は2%までです。解除率がそれより低ければ業界水準でかなりいい線をいっていると言えます。
- バウンス率
- セグメントされたメールリストのうち、何らかの理由でメールが届かなかったメールアドレスの比率です。バウンス率が3%未満なら正常範囲内です。
メールマーケティング解析から収集されるデータを使って、マーケティング担当者はすぐに弱点を見つけ出し、マーケティング戦略を修正できます。
10. マーケティング戦略を修正する
マーケティング戦略を修正して、メールマーケティングをより効果的に実施するために考慮したい重要なことが数点あります。
- CTAは見やすいですか? 本当に動いていますか? 件名はどうですか? マーケティングのキャッチコピー、特にCTAと件名に問題がないか、メールマーケティングをよく見てみます。
- ターゲット層はどのメールクライアントをより頻繁に利用していますか? この特別な情報は、次回のメールマーケティングのデザインや試し方、どのテンプレートを使うかなど決めるのにとても重要です。
- 読者はメールを見るとき、実際に携帯デバイスを使っていますか? もしそうなら、レスポンシブメールのテンプレートを使って、携帯デバイス上のデザインの見え方を確認し、見栄え良くすることが絶対に必要です。
- メールリストのセグメンテーション戦略はどうやって改善できますか? リストを顧客タイプや関心などカテゴリー別に分割すると、マーケティングの成果が改善しやすくなります。
- メールを受け取った時の反応が最も薄い人は誰ですが? こうしたユーザーをセグメントして削除することで、再度、ターゲットを変えてメールの反応をあげることにつながります。
この記事は、マーケット担当者が成功するメールマーケティングを進めるときに知っておくべきことについて、ほぼすべて網羅しています。「習うより慣れよ」と覚えておいてください。一度メールマーケティングを実施してみれば、それ以降のメールマーケティングにはそれほど時間も労力も必要ないことが分かるはずです。特定事項を修正して、何が効果的で、何がそうでないのかが分かるようになります。メールマーケティングがよりうまくいくように回数を重ねてください!
(原文:The Ultimate Guide for Creating Email Campaigns in 2016)