eコマースやソーシャルメディアに続く大きな流行を紹介します。 WordPressが「Internet of Things(モノのインターネット)」として知られるインターネット対応デバイスと統合できる可能性があります。
この革命的なパラダイムシフトは、普段の生活から旅行中に至るまでを最適化することで、生活のあらゆる側面を変えていくものです。IoTはすでに自宅の機能を自動化し始めていますが、WordPressとの統合にまでは至っていません。
IoTはリアルタイムでデータを収集し、応用して加工していくことで価値を生み出します。WordPressとIoTはセンサーとマシンのような関係(WordPressがセンサー)となって生産性を向上し、プロセスをより効率的に整備し、人件費や複雑な設備が増えることなくデータ分析ができます。これを念頭に、記事ではWordPressとの関係という観点からIoTを説明していきます。デバイスとWordPressを使ったWebサイトの性能が、IoTを利用することによってどのように高まるのかを考えます。
本題に入る前に、全体像から解説します。
Internet of Things(モノのインターネット)の概要
一言で言えば、IoTとは、インターネットに接続されるさまざまなデバイスの総称です。IoTという用語自体は、高度な処理が可能で、接続でき、インタラクティブでかつ自発的なインターネット対応デバイス全体の概念を指します。
IoTはクラウドベースのアプリケーションを互いに(デバイスとデバイス)で接続し、情報をリレーしながら取得する方法です。これらの 「スマート」 デバイスは携帯電話、冷蔵庫、洗濯機からウェアラブル端末、医療機器、ジェットエンジンに至るまで何でも対応可能です。 ―TechWorld
IoT デバイスと聞いて、すぐに思い浮かぶもっとも一般的な例は電球、冷蔵庫、トースター、エスプレッソマシンなどのホームオートメーション機器です。しかし、IoTの効果はスマートシティや農業にも及びます。スマートデバイスは、無線LANやRFID、 NFC、ときにはBluetoothを通じて外の世界との無線接続を確立します。
簡単な歴史
「Internet of Things」という言葉を生み出したのはKevin Ashtonだと言われています。この言葉をよく聞くようになったのはここ10年ほどですが、その概念は1970年代に始まっており、パーベイシブ・コンピューティングあるいはEmbeddedインターネットと呼ばれていました。
IoTは、数々の試行を経て、過去の意気込みを乗り越え、ついに今日の近代的な技術基盤へと至りました。それにもかかわらず始まりはゆっくりとしたもので、世界最初のインターネット対応デバイス は、World Wide Webが発明された翌年の1990年に、John Romkeyにより生み出されたthe Internet toaster(インターネットトースター)でした。
世界初のIoTデバイスは初めてWebページが登場する、その1年前に存在していたのです!
IoT Analyticsによると、この革命的な現象にIoTと名付けられたのは、1999年にAshtonがRFID技術を促進しようと試みたときでした。IoTの一部はここ数年間で、クラウドのおかげで急速に成長しています。IoTがどのように始まったのか、それがどのように発展してきたのかをもっと知りたい人は、Postscapesの記事『A Brief History of the Internet of Things』をチェックしてください。
IoTの市場規模はどのくらい?
「IoTの市場規模は想像するよりもはるかに大きい」という話をよく聞くかもしれません。しかし、本当はどのくらいの規模なのでしょうか?
- IDCは、IoTに関連する市場規模は2020年までに3兆ドルに達すると予測
- Gartnerは、一般的な家庭では2022年までにおよそ500種類のインターネット対応デバイスが保有されると予測
- Business Insiderは、2020年には合計240億台のIoTデバイスがインターネットに接続されると見込まれ、スマートフォン、タブレット、デスクトップコンピューターといった伝統的なコンピューティングデバイスの100億台をはるかに超える規模になると予測
IoTでWordPressの強みを活かす
IoTは室内電球からエスプレッソメーカーといった家電、そして畜産用室内暖房に至るまで、あらゆる産業における幅広い接続デバイスの大きな進歩を担っています。WordPressにおける意味合いはその「見た目」の実装を最終的に可能にすることです。これらの技術のうちWP REST APIは、WordPressのIoT統合を限りなく使いやすくする技術の1つです。以前SitePointでWordPress REST APIを紹介したので、興味のある人は参考にしてください。
世の中に出回っている数十億台の端末がチャットするので、 未来のWebは明確なプロトコルを持っていることこそが大事になってくることは明らかであり、open APIがそのコミュニケーションを容易にできるでしょう。―これこそがREST APIが成し遂げようと意図するものです。 ―Tom Ewer、WPMU DEV
プラグインエコシステムとして確立されたWordPressとコラボしているWP REST APIは、実際のデバイスがインターネット経由でWordPressと接続できるように基本的設計がなされ、同様に、WordPressユーザーが実際のデバイスへ接続できるように設計されています。
WordPressにおけるIoTの驚くべき実装について
WordPressと一般向けのオートメーションサービスを組み合わせることで、ユーザーエクスペリエンスの向上と、ユーザーのエンゲージメントや双方向性への働きかけができます。次に紹介するシナリオはRC Lations’ WordCamp Maineから引用したものです。
- プロブロガーは、ブログ記事やブログページに対して新しいコメントを受信したときに、読者へすぐに返信できるように、ベルが鳴るよう設定できます
- ビジネスオーナーは、IoTをスタッフのモチベーション維持に活かせます。サポートチケットを受け取ったとき、または返答があるたびに通知するように設定できます。また、どのチームスタッフがより多くのチケットに対応したかも通知できます
- 一定期間にどのくらいの売り上げがあったのかを追跡し、会社が設定した売上目標を達成したとき、フラグで知らせてくれます
- Webサイトがダウンした場合、モバイル通知をするよう設定できるので、すぐに問題を修正できます
WordPressと人気のサービス
Webマスターが自分のWordPressのWebサイトと実際のデバイスを接続できるサービスはいくつかあります。Webマスターはあらゆる種類のIoTデバイスを使って、自分のWebサイトを統合するのにそうしたサービスを使えます。このセクションでは、4つのサービスを取り上げ、特徴を紹介します。
littleBits
littleBitsは、あらゆる種類の新しいデバイスを発明するのに使え、発明したデバイスをプラットホームが保有するAPIを経由してインターネットに接続できる、エレクトリックビルディングブロックで構成されています。
littleBitsはみなさんに大きな発明、そして小さな発明を思いつく力を授けます。使いやすいエレクトリックビルディングブロック(electronic building blocks)のプラットホームを提供します。―littleBits
エレクトリックビルディングブロックはすごく簡単に使えるように色分けされ、磁石で別のパーツをくっつけやすくしています。いくつかの別々の発明をするとき再利用できるように、エレクトリックビルディングブロックをセットにして保存もできます。
littleBitsは、リモコンカーやスピンローラーといったものから落書きウィザードまで、あらゆるスマートホームデバイスを発明するユーザーを支援しています。現在のところ、littleBitsライブラリーは60個のモジュールで構成され、それぞれをつなげていくことで、事実上何百万通りも組み合わせができ、発明は決して尽きることがありません。
littleBitsの一番のメリットは、ユーザーがとても簡単にモジュール式のIoTデバイスを簡単に作成できるところです。littleBitsの組み込みのダッシュボードを使うか、littleBitsのAPIのカスタム統合を使えば、デバイスの自動化や制御ができます。
IFTTT
IFTTT(If This Then That)は、「レシピ」と呼ばれるアプリケーションと実際の製品をシンプルなIf-Then方式で接続することで発明者を支援し、多くの創造物の道を開いています。現在は「DOレシピ」、「IFレシピ」の2種類があります。
ユーザーはボタン、カメラ、メモ帳を作成してDOレシピをカスタマイズし、簡単にタップするだけで開始できます。DOレシピはユーザーによって明示的に開始されるものであるのに対し、IFレシピはバックグラウンドで自動的に実行されます。たとえば、ユーザーはレシピを次のようにも構成できます。
Instagramに写真を投稿したときは、Dropboxに写真を収納する。
現在、IFTTTはWordPress、MailChimp、Workflow、Slack、littleBits、Particle、そして13のソーシャルネットワークプラットフォームを含む321チャンネルと互換性があります。IFTTTを使ってレシピを確立できる完全なチャンネルリストはこちらです。
IFTTTで好みのチャンネルを1か所に集約し、ユーザーは目標を達成するためにチャンネルを統合するレシピを作成できます。すべてのレシピには、2つのWebアプリケーションが含まれています。1つはトリガーとなるもので、もう1つは設定されたアクションを実行するものです。IFTTTは信じられないほど簡単に始められます。直感的なインターフェイスにより、ユーザーはプログラミングについてのリテラシーがなくてもレシピを作成できます。RC Lationsは、WordPress用のlittleBitsプラグインを開発し、Webマスターがプラットホームを始めやすくしています。
Webマスターは、WordPressを使って(無料であるかセルフホストであるかを問わず)自社サイトをIFTTTに接続でき、トリガーまたはアクションとして使えます。現在、IFTTTとWordPressの統合用として2つのトリガーと2つのアクションが利用できます。
- トリガー:最初のトリガーAny new postは、Webマスターが自分のブログに新しい記事を投稿するたびに更新されます。2つ目のトリガーNew post with tag or categoryもほぼ同じ内容ですが、Webマスターが特定のカテゴリーやタグを選択したときのみ更新されます
- アクション:Create a postとCreate a photo postは、Webマスターがトリガーを設定すると自社サイトで実行される2つのアクションです。前者は写真投稿のみですが、後者は写真投稿に加え画像にリンク用URLが付けます
ブログにサービスを接続すると、IFTTTとWordPressの統合をスタートできます。次の2つの記事『Using IFTTT With WordPress』、『How to Automate WordPress and Social Media with IFTTT』もチェックしてください。
Particle
Particleは、ユーザーがプロトタイプを量産化し、IoT製品を構築できる人気のサービスです。Particleでは、ユーザーがアイディアの試作を簡単にできるクラウド接続可能なハードウェア開発キットを提供しています。
すべての製品はプロトタイプから出発するものです。当社のハードウェア開発キット ― Photon (無線LAN用)とElectron(2G/3G携帯電話用)― を使うことで、IoTプロトタイプを数分で構築できます。–Particle
Particleの傑出した機能は、ユーザーが構築したIoTデバイスをリアルタイムに、セキュリティ保護下で、かつスケーラブルなクラウドプラットホームによって改善することです。また、プレミアム品質のデバイス管理ダッシュボードも特徴的で、デバイス管理ダッシュボードを使えば、製品の集約、ファームウェアアップデートの展開、データの収集、ほかのサービスとの統合のコントロールや管理ができます。
ParticleのWebサイトによると、 IoT製品を始める最も簡単な方法は、オープンソース開発キットを使うこと。Particleには、ファームウェアライブラリーにあらかじめアップロードされ、クラウドに接続されたユーザー固有のIoTデバイスの製作を実現できる、サイト独自の技術があります。
ParticleのWordPress用SparkCoreプラグインを使うと、WebマスターがAccess Token、Core ID、そしてAPI URLを設定すれば、直接SparkCoreにリクエストを送信できます。
これまでに紹介したのは、WordPressユーザーがIoTデバイス用のWebサイトにより多くの価値を提供するためにIoTと統合ができるように生み出された、最も人気のあるサービスの例です。
IoTとWP REST API
WordPress REST API は、システム統合、カスタムソリューション、もちろんIoTアプリケーションの構築も、WordPressを使って統合するためのWebアプリケーション兼プラットホームです。いまWordPress REST APIの一部は、WordPressコアに統合され、Open Source APIとそのプロトコルを使ったデバイス間の通信をより簡単にしています。
Web開発者がデータを送受信するための直接的なコミュニケーションツールの確立を可能にしたため、WordPressを使ったインターネット対応デバイスの統合を新しい時代へと進める理想の形がWordPress REST APIなのです。
現実世界のIoTとWordPress
wpForGlass
wpForGlassはGoogle Glass専用に開発された、Weber Shandwick社のデジタル革新チームの発案によるWordPress用の初のIoT実装プラグインです。このプラグインで、WebマスターはGoogle Glassから自社のWordPressサイトに直接投稿できます。
wpForGlassの仕組みについては、こららの動画をチェックしてください。
wpForGlassプラグインはGoogleのMirror APIを採用し、Google Glassで撮影した写真や動画を自分のブログに直接投稿できます。プラグインをセットアップするには、関連するGoogle Mirror APIの設定に関する技術的な知識が必要です。
Nike+
Nike+は、ランニング中のデータを記録し、ウィジェットやショートコードを付けた完全な形でユーザーのWebサイトに表示できる、健康管理に焦点を当てたWordPressのプラグインです。Nike+プラグインは、個人サイトにもチームのサイトにも使えるように設計されました。ユーザーは4つの異なる種類の統計情報を投稿できます。
- 個人の合計
- 個人記録
- ランニング履歴
- チームの合計
Nike+プラグインは過去数年間1度もアップデートされていませんが、それでもWordPressのサイト用に開発された、まさに初期のIoT実装デバイスの1つです。
最後に
近い将来、私たちのデバイスのほとんどは、インターネットに接続されます。
紹介した人気のサービスのおかげで、WordPressを使っているWebマスターはすぐにIoTを使えます。ぜひ試して、自分に最適なサービスを見つけてください。
(原文:Integrating WordPress with the Internet of Things)
[翻訳:皐月弥生]
[編集:Livit]